「おまえさ。毎日毎晩遊んでて疲れない?」 『夜遊びの謎』 事務所に現れたギギナからは、微かな香水の匂い。今日もまた朝帰りらしい。 ここのところ、毎晩のように女と遊んでいるらしき相棒に、思わず質問する。まるで羨んでるように聞こえそうで、直後に後悔したが。 この体力馬鹿でもさすがに疲労が溜まるんじゃないかと思うのは、他人が隣にいると眠りが浅いのを知っているから。たまに事務所じゃ熟睡してる気もするけどな。自分のよく知った縄張りじゃないと眠れないなんて、まるっきり野生動物のようだ。 あんまり休めないと微かでも動きが鈍るだろう。それで仕事に差し支えると困るから、つい突っ込んでしまった。戦いを至上とするこいつが、そんな無様な醜態を晒さないのはわかっている。ただ最近のこいつが、以前にも増して遊び歩いているのは気の所為ではない。何かあったのかは知らないけれど、ちょっとくらいは気にしてやってもいいだろう。仮にも相棒である身としては、ね。 「……気になるのか」 モテない男のヒガミかと、速攻で悪口雑言が返されるのを覚悟していたのに、ギギナはしばしの沈黙の後で芸の無い台詞をこぼす。どうしたんだ、実は図星だったのか。まさか、体力だけは有り余ってるギギナともあろうモノが、疲れちゃったりしてるのか。でも隣で見てると、悪影響が出てるようには思えないんだが。 いい加減長くこいつと組んでるし、動きが鈍れば気が付く。もしかして偶々キレの良い返答が思いつかなかっただけか。やっぱり疲れててまずは脳に疲労が溜まってるのかね。何しろ元から量が少ないから。別におまえが今より頭に不自由したって、現状と変わらないから大丈夫だぞ。今以下ってのはさすがに有り得ないから! 「いや全然。仕事に不都合なければ問題ないけど」 余計なお世話だった申し訳ないと自分でも思ったりしたので、即座に反問を否定してやる。明確な非くらいはさっさと認めてやってもいい。この手のネタでこじれると鬱陶しいし。 近頃、妙に突っかかってきたり絡んできたりする回数が増えたのは、気の所為じゃないと思うんだよな。酔っ払いじゃあるまいし、どうかしてる。どうかはしてるのは確実なんだが、理由は不明、追求が必須なほどでもない。プライベートは好きにしてくれ。俺と関係ない場所でやるなら文句は無い。だって、俺とは関係ないし。 そうやって譲歩を示してやったのに、ギギナはかえってムッとした様子だった。 まったく糞ドラッケンの思考はよくわからない。わかりたいとも、思わないけどね。 |
《終》 |