聖夜








「ねぇ、リョーマ君」

「なんすか?」

今日が12月23日。

愛しい恋人の誕生日前日。そして、クリスマスの前日でもある。

不二とて人の子(笑)

恋人と二人っきりで、甘い時間を過ごしたい。

「明日さ、部でクリスマス会しようって言ってたでしょ?」

「そうっすね。確かそんなこと桃先輩やエージ先輩が言ってました」

興味なさそうに言う。彼はいつだってこんな風だ。

「不二先輩って行くんすか?」

「えっと…、リョーマ君は?」

「そんなの断ったっすよ」

「え!?そうなの」

断ったということは、家族とかと過ごすということなのだろうか…。

あ〜、なんか気が重たくなってきたよ。

「不二先輩は行くとか?」

なんか、機嫌が悪くなってない?

「いや、行かないけど……」

「そっか、よかった」

さっきまでの機嫌の悪さが一気になくなった。

「なんで?」

「だって、俺だけが先輩と一緒に居たいって思ってるのかと思って…」

プイッと横を向く。

でも、その頬は赤く染まっていて。

照れているのが一目でわかる。

「くすっ。何言ってるの。ボクはいつだってリョーマ君と一緒にいたいよ」

これは本当。

だって、ボクもさっきまで不安で仕方なかったから。

リョーマ君から、こういう風なことを言うことって滅多にないから余計に嬉しいんだ。

「ふ〜ん、そうなんだ」

”信じない!みたいな顔をしてるけど、本当は嬉しいくせに。

素直じゃないなー…。ま、そこも可愛いんだけどね☆

「その日って、泊まれるかな」

「先輩の家にっすか?」

「うん、そうだよ」

軽く悩んだ後、”いいっすよ”っと笑顔で答えてくれた。












家では普段家族と過ごすことが多い。

裕太とかは、寮にいるから普段会えないから。

でも、今年は無理いって皆に出かけてもらった。

父さん達も、新婚当時以来だとか言ってけっこう喜んでたし、姉さんもなんだかんだ言って彼氏に会いに行った。

(裕太には悪いことしたかな?)

口では嫌がっていても、やっぱり家族に会いたいだろうし。

それでも、リョーマと一緒に過ごす方をとったのだ。

それなら楽しまなくては!!

と、気を取り直して準備にとりかかった。

それから数時間後、リョーマがきた。

準備も大体整って、いい時間帯だった。

「リョーマ君いらっしゃい」

「お邪魔します」

不二はリョーマをリビングへと案内する。

普段は不二の家にきても、部屋に居ることが圧倒的に多いのでちょっと緊張気味のリョーマ。

「もうすぐ終わるから、そこで座ってテレビでも見てて」

「うん」

不二はキッチンへと戻る。

もう、美味しそうな匂いがここまで届いている。

不二は料理が意外にも得意だった。

リョーマがくるときに出されるお菓子は、よく不二の手作りだったし。

(味覚音痴ってわけじゃないんだよな)

なのに、なんてあんな変な野菜汁とかを美味しいというのかわからない。

やっぱり自分達とは味覚が違うような気がして仕方が無かった。

そんな事を考えているうちに、準備が整ったらしく不二に呼ばれた。

テーブルに並べられた料理を見てリョーマは驚いた。

「これ、全部先輩が作ったんすか…?」

「そうだよ」

すごい料理が作られていた。

(このまま店にだせそうじゃん)

ホントに何をやらせても、出来る人なんだと感心していまう。

「ほら、見てないで食べよう」

「そうっすね」

見た目だけではなく、食べてもすごく美味しい。

けっこうな量があったが、育ち盛りに二人は全部平らげた。

「ご馳走様。すっごく美味しかったっす!!」

「そう?リョーマ君に喜んでもらえて良かった」

「でも、大変だったんじゃないっすか?」

「う〜ん、そんなことないよ。慣れればけっこう簡単なもんだし」

どっから見ても簡単じゃないと思うが…………。

この人にとったらそうなのかもしれない。

その後は色んなことを話したり、先輩の手作りケーキなどを食べて楽しく過ごした。

後は、プレゼントを渡すだけ…。

(先輩、喜んでくれるかな…)

心配するリョーマ。

先輩のことだから”リョーマ君から貰えるならなんでも嬉しいよ”とか言いそうだけど(よくわかってるね)

「…マ君。リョーマ君!」

「え!?なに」

考え事に没頭していたリョーマは、不二が呼んでいるのに全然気付かなかった。

「どうしたの?」

「べ、別に…」

「そう?」

怪訝そうな顔をするが、すぐに戻ってなにやらごそごそする。

「はい、リョーマ君。メリークリスマス☆」

手渡されたのは、小さな箱。

「開けてもいいっすか?」

「うん!!開けてみて」

綺麗にラッピングされているリボンを外していく。

「これって…………」

中から出てきたのは、シルバーの指輪だった。

「君に似合うと思ってね」

「でも、これ高いんじゃ…」

「いいんだよ。これね、婚約指輪なんだって」

「婚約…指輪……?」

「うん、そうだよ。だから、君に受けとって欲しいんだ」

リョーマからその指輪をとって、そっリョーマの指にはめる。

「やっぱり、よく似合ってる」

「あ、ありがと!!俺すっごく嬉しい」

満面の笑顔で、不二にそう答える。

不二は、リョーマの嬉しそうな顔を見て大満足だった。

なにより、婚約指輪という意味のあるものを受けとってくれたことが何より嬉しかった。

「あ、あのね。俺のプレゼントは…」

リョーマは恥ずかしそうに下を向いてしまう。

でも、勇気を出して言わなくちゃ!!

「あのね、周助!!」

リョーマは不二の唇に自分の唇を重ね合わせた。

「え……………?」

「周助に、俺をあげる。全部、あげる」

「ホントに貰っちゃっていいの?」

「迷惑じゃなかったら」

「取り消しなんて言ってもいかないからね?」

ニコッっと笑って、リョーマを抱き締める。

「言わないよ。俺、周助のこと大好きだもん」

「ボクも、リョーマのこと愛してるよ」











聖夜は恋人達の、素晴らしい日・……………。

==========================================================================

ラブいです。いいんです、これで。
せっかくのクリスマスに、不幸は悲しいので!!。
こんな風に、”婚約指輪だよ”とか言われたら私はかなり嬉しいですね♪





back