「ねぇ、手塚って誰かと付き合ったことある?」
「なんだ、やぶからぼうに」
昼食時に突然教室にやってきて屋上にへと連れ去られた。
大石と一緒だった手塚だが、不二と共にやってきた菊丸にやはり連れていかれた。
屋上ではないのだから、中庭辺りだろうと見当をつける。
部活のことで話したいことがあったのにと溜め息をつく。
それでもまだ百歩譲っていいとしよう(部活でも話しても間に合うし)
それでなんで、そんな質問をされなくてはならない!?
「教えてよ、手塚」
「知らん」
「ケチー」
子供のように拗ねる不二。
お前はいったいいくつなんだ!?と言ってやりたいところだが…。
”3つ”と返されるのが落ちなので聞かないでおこう(閏年なので多分3つ)
「ボク今日ね、告られたんだ」
「そうか」
それがどうした?と言いたいところを我慢したのは我ながら偉いと思う。
「でね、断ったら”不二君は本当の恋愛したことある?”って聞かれたんだ」
「そうか」
さっきと同じ答えを返す。
不二にとって満足の得られる答えではないので案の定ふて腐れる。
「普通はさ、もっと何か聞かない?」
聞いて欲しいのなら、初めからそう言えばいいものを。
「…………何て言ったんだ?」
仕方なさそうにに聞く手塚。
「ないって答えたんだ。そしたら”やっぱり”って返ってきた」
酷いと思わない?と手塚に同意を求める。
「わからないこともないな」
「手塚もひどーい!!」
ブーイングを嵐を受ける手塚。
正直に答えたのがまずかったのだろう(笑)
「…でもさ、よくわかんないんだよね。人を好きになるって気持ちがさ」
不二にしては珍しく落ち込んでいる様子。
「菊丸にでも聞いてみてはどうだ?」
菊丸と大石が付き合っているのはテニス部員の中では有名な話。多分、俺に聞くよりは良い返事が返ってくると思う。
「エージはいいの!!ボクは手塚に聞きたいんだからさ。それにエージに聞いたら延々と大石の話し聞かされるもん!」
”バカップル”の異名を持つ(笑)二人。
確かに菊丸に聞いたらいらんことまで聞かされるだろう。
「で、最初に戻るけど付き合ったことある?」
答えなければ離してもらえないと悟った手塚は諦めて不二の質問に答えることにする。
「ない」
「そっか、良かった。僕だけじゃなかったんだ」
「お前は付き合いとか思った相手はいないんか?」
「う〜ん、いないかな?手塚はあるの?」
「…………ないことはいない」
手塚の意外な返答に、不二が驚く。
テニス一筋っぽい手塚が惚れる相手に興味がないわけがない。
乾さえも知らない情報だと思うと、楽しいことこの上ない。
「誰、誰?それってボクも知ってる子?」
楽しそうに聞いてくる不二を手塚は無視する。
これ以上が教えないということだろう。
でも、それで諦める不二でもなくて。
「教えてくれないの?」
「機会があったらな。ほら、予鈴が鳴るぞ」
さっさと立ち去ろうとする手塚の後を慌てて追いかける。
後ろからブツブツと文句を言ってるのが聞こえるが、あえて聞こえない降りをする。
教室の前にきて、別れると時…。
「不二」
不意に名前を呼ばれた。
「俺の好きな奴は、テニスが好きでいつも笑ってて人の迷惑を考えない、突拍子もない奴だよ」
耳元でそっと囁かれる。
言うだけ言ったら手塚は勝手に教室に戻る。
不二は一瞬何を言われたか理解できず、その場で固まる。
それから、顔を真っ赤にして慌てて教室に入っていく不二。
本当の恋は、意外に近くにあるものなのかも……?