promise
「先輩って、俺のこと嫌いでしょ?」
疑問系でありながらみ、断言系で。
確かに嫌いである。というより、苦手なのだ。自分とは違う、この後輩が。
だからと言って、はっきり言えるはずもなくて。
「別に……」
としか言いようがない。
「そっすか。でも、俺は好きっすから」
と一言だけ残して、さっさと去っていってしまった。
その場に残された海堂は、固まったまま当分動けなかった。
どう反応すべきが悩んだ。あの日以来、特に変わった様子を見せないリョーマ。
からかわれたのかと思うようになったのだが、時折よせられる射るような視線を感じる度に、
その考えを否定するしかなくて。
「は〜…」
「何溜め息なんかついてんだよマムシ。似合わねーな」
「ふん!ほっとけ。お前に関係ねーだろ。それにマムシじゃねー!!」
名物化してる海堂と桃城のケンカ。
後輩達や、同学年の奴らも止めない。
実際は巻き込まれるのが嫌だから(笑)
何か揉め事を起こすと、部長からの命令で走らされるから。
そんな二人のケンカに首を突っ込んだのは、リョーマだった。
「桃先輩って、いっつも海堂先輩にちょっかいかけますね。もしかして好きなんじゃないの?」
そんな恐ろしいことをさらっと言ってのけることが出来るのはさすが王子様(笑)
「ん…んな訳ねーじゃん!!なんでこんなマムシに…」
「マムシって言うな!!」
キッと睨みつける。
「どうでもいいけどさ、あんまり海堂先輩にちょっかいかけたら俺怒るっすよ?」
脅しをかけて去っていくリョーマ。
ピシッっと石になってる桃城。
密かにリョーマに恋心をよせていた桃ちゃん(笑)
ご愁傷様です。
そんな様子を見てた海堂。
やはりリョーマのことがよく分からなくて。
本気なのか、ふざけているのか。
恋愛経験のない海堂には、それを見分ける術がなくて…。
悩むのは性にあわない海堂だが、誰かに相談できるものでもなくて。
結局は、自分一人で考えなければいけない。
そんな状態では、部活に集中できなくて散々だった。
夜になり、イライラを吹き飛ばすためにいつもより多く走っていた。
どれだけ走っていたか覚えてない。
とりあえず、ひたすら走っていた。
距離が多い分、疲労も普段より多くて。
のどが乾いていたが、買いに行くのもダルくて。
ベンチにうな垂れていた。
「のど…乾いた……」
「じゃ、これどうぞ」
と差し出されたのは、海堂が好きなメーカーのオレンジジュース。
「…なんでお前がここにいるんだ?」
目の前に立っていたのはリョーマだった。
「偶々近くを通ったんすよ。つけた訳じゃないのでご安心を」
冗談なのかどうかよくわからないが、ここは深く考えないでおこう。
「飲まないんすか?」
リョーマから貰うのは何となく嫌だったが、背に腹はかえられない。
「…………貰う」
「どうぞ」
リョーマから貰ったオレンジジュースを一気に飲む。
よっぽどのどが乾いていたんだろう。
「そんな無茶な練習してたら体壊しますよ」
「ほっとけ。誰の所為だと思ってんだ」
言って後悔した。
「へ〜。それって俺の所為だて言いたいんですか?」
こう返されるは目に見えていたのに。
「なんでもない!!」
「ねぇ、先輩」
「なんだ?」
恐る恐る聞き返す。
「先輩は、俺のことホントに嫌い?」
『当たり前だ!』と言い返そうとした海堂だったが、あのリョーマが哀しそうな目で見てくるから。
なんか、言えなくて…。
「…帰る。お前も早く帰れ」
海堂の服の裾を軽くひっぱる。
「俺の横にいるのも…嫌?」
「そんなんじゃない」
「でも、好きじゃないんでしょ」
寂しそうに言うから。
「好きじゃないが、嫌いじゃない」
思わず言ってしまった。
確かに、嫌いじゃないんだが。
「今はまだ、お前の気持ちに答えられない」
「今は、ですか?」
「…あぁ」
「一つ約束してくれるっすか?」
「内容による」
「夜のトレーニングに付き合ってもいいっすか?邪魔なら、毎日でなくてもいいから…」
リョーマの願いに、どう答えればいいのかわからなかったが。
「勝手にしろ」
気付いたらそう答えていた。
「じゃ、また明日」
そう言い残して去っていった。
嬉しそうに笑うリョーマを見て、構わないかと思っていた。
そういう海堂も、笑っていたのだが……。
海堂に背をむけていたから、去っていくリョーマの表情は海堂には見えなかった。
「海堂先輩もまだまだだね」
と、意地の悪い笑みを浮かべていたことに海堂は気付くこともなかった。
1300 hit のうおしま秋菜様からのリクエストでリョ海でした。
う〜ん、リョーマ君はかなりの子悪魔さんですね!!
私の中でもそんな人なのかも…。
可愛らしい純情なリョーマもいいんですが。
うちの海堂君が純なので、純がそろうと進まないからね、話が。
まだまだ、出合いってすぐ!!の話。
これから、海堂君の苦難の始まりですね…。
頑張れ!!
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