独占欲

気持ちを伝えることが簡単な訳がない。

こんなに好きなのに、なんで言葉にして伝えようとすると戸惑うんだろう……。

不安にさせたくないのに。

不安になりたくないのに。








「薫ちゃ〜ん!!!」

後ろから、何も考えずガバッと抱きつくエージ。

その反動で倒れかける海堂。

「先輩やめて下さいよ。毎回毎回……」

「だって薫ちゃん可愛いんだもーん」

「名前で呼ばれるのも嫌っス」

ムスっとした表情で睨む海堂だが、エージには全然きかない。

「もう、エージったら。あんまり海堂君を苛めたら可哀想だよ?ね、薫君v」

「…………不二先輩」

「何かな?」

「いえ、別にいいっス」

この二人には適わないと諦める。

なぜだか何時も遊ばれる海堂。他にもからかう相手はいるはずなのに、いつも俺だ。

もう諦めつつも、疑問に思う。

「不二・菊丸、あまり海堂をいじめるな」

「え〜!!だって(>ヮ<) 手塚が薫ちゃんを独り占めなんてずるいもん」

ずるいとかの問題じゃなくて……。

「薫ちゃんは俺のこと嫌い?」

そんな上目使いで見られて、嫌いと言えるはずもなくて……。

実際嫌いでもないし。

「嫌いじゃないっすよ」

「よかったー!!俺も薫のこと大好きにゃん♪」

海堂も人の子。好意を持たれて嫌な気はしない。

そんな様子を心配そうに見つめる手塚。

「海堂」

「ん?なんすか、部長」

「…いや、なんでもない」

海堂がクラブの連中と仲良くするこたはいいことだが。

だが!!気分のいいものじゃない。『自分のものだ』と言えたらどんなに楽か……。

「あの、部長。今日一緒に帰れますか?」

控えめに聞いてくる。

「あぁ。大丈夫だ」

「ホントっすか!?」

嬉しそうな顔をする。

そんな表情を見せられたら、どんどん好きになってしまう。

押さえが利かないほどに……。










帰り道、手塚はあまり口を開かない。

話をしないのは今に始まったことではないけど。

海堂が話すと必ず相打ちを打ったりと、相手をしてくれるのに。

今日はそれさえも、あまりなくて。

「あの……部長、今日用事でもあったんすか?」

「なぜだ?」

表情を変えずに聞いてくる。

それがなんだか、今日はあまりにも距離があるように感じられて。

「だって、話しもしてくれないし、目を合わせてくれないから……」

悲しそうに、じっと自分を見てくる。

見てるこっちの方が苦しくなるようで。


俺の勝手な感情で、海堂を不安にさせていたことに気付く。

「俺、何か部長を怒らせたっすか?」
不安なのに、じっと俺も目を真っ直ぐ見据える海堂。

「お前のせいじゃない」

そう言って終らせようとする手塚。

本当に海堂が悪いわけじゃないので。

「部長は俺に何も言ってくれないんっすね……。俺じゃ頼りになりませんか?」

「そうじゃ……ない」

「じゃ、何で?俺不安なんです。何時か部長に捨てられるんじゃないかって」

「そんな訳ない!!」

つい大声で叫ぶ。

俺が海堂を捨てる訳がない。こんなにも好きなんだから。

「俺は、お前が誰かと話してるだけでも嫌なんだ。

俺だけを見て欲しい、俺だけのものにしたいから……。

ただの独占欲なんだ。こんな俺を軽蔑するか?」

海堂からの言葉がない。

嫌われてしまったのだろうか。

そっと海堂の顔を覗く。

真っ赤な顔をして、恥ずかしそうに俯いてる海堂。

「お…俺、部長のこと好きです!!!だからそんな風に思われてるなんて」

「嫌じゃ、ないのか?」

恐る恐る聞く。

「嫌じゃないです!!俺だって、部長が誰かと楽しそうにしてたら嫌だし。俺だって、独占欲強いから」




こんな風に、お互いの気持ちを言葉にして言うのは初めてで。
言わなければ伝わらないことが、こんなにもある。




まだ不安は全部解消される訳ではないけど、この気持ちがある限り大丈夫だから。






後日談

海堂にいつもじゃれつく菊丸に、きつ〜いお仕置きをしたとか。

それでも懲りないエージは、今日も元気に校庭を走っている。


900HITの亜紀様のリクでした。
海堂にじゃれつく菊丸を、複雑な心境で見るというやつなんですが、そうなっていない…?!
めっちゃ嫉妬しまくりです!!!!
私の中では、手塚はけっこう嫉妬深いと思ってるせいでしょうね……。
でも、この二人はいつもラブラブな感じに仕上がるので嬉しいです(*^ヮ^*)

では、こんなものですが、貰ってやってくださいv

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