散歩道


ポカポカと陽気のいい日。

不二は何となく公園に足を運んだ。

「ん〜、気持ち良い。こんな日に部活が休みなのが残念」

グランドの整備の為、今日は運動部全部休みになった。

久々の休みで嬉しい反面、物足りないのもある。

でも、今日一日はゆっくりしよう。

あまりにも、良い気候。

「なんか寝ちゃい……そ…」

ベンチに腰をかけて、ウトウトし始める。

別に用事もないし、困ることもないので誘惑にあっさりと身を任し目を閉じる。

初夏のこの季節。一度眠ると起きるのが嫌で……。

もちろん不二もそうで、不機嫌そのもので起きた。

いや、起こされた。

「重い……」

さっきから足元がこそばくて、それがなくなると次は膝が重くなった。

「捨て猫?」

膝の上にちょこんと乗っている、一匹の猫。

人の睡眠を邪魔しておきながら、自分はぐっすりと寝ていて。

「ムカツク」

起きる気配が一向にない猫。不二はじーと観察する・

捨て猫には、見えないよね。毛も綺麗に整えられてるし、ヒマラヤンの猫で高級。

「迷い猫?」

考えていると猫が目を覚ました。

「おはよ」

と声をかけるが、そっぽを向いて膝の上から降りる。


「こっちにおいで」

読んでみるが、そっぽを向いたまま不二を見ようともしない。

「仕方ないか…」

立ちあがって歩き始める。

トコトコトコ。くるっと振り返る。

また、トコトコトコ。くるっと振り返る。

「何で付いて来るの?」

猫の再び手を伸ばすが、それは無視され。

「構って欲しいけど、触られるのは嫌なのかな。まるで彼みたいだね」

構って欲しいくせに、近づくと逃げてばかり。

人を翻弄するのが得意で。

くすっと笑う。

向こうでコンビニを見つけ、アイスを買い猫にあげる。

「食べてるよ。猫ってなんでも食べるんだ」

ペロペロと美味しそうに舐める。

彼そっくりの猫を、不二は気に入っていた。

食べ終えて、不二が猫に手を伸ばした。


今度は逃げることはなく。

「これって、餌付けって言うのかな?」

楽しそうに笑う不二。

猫を軽くなでる。

再び膝の上に乗ってきて、寝ようとする。

「くすくす。でも、飼い主はそこだろ。探してるんだろうな」

不二もまた、眠たくなってきた。







「あっ、不二先輩」

誰かに名前を呼ばれ、起きた。

「越前君。偶然だね。どうしたの?」

「カルピン探してて……。って、それっスよ」

と、不二の膝の上猫を指差す。

「この猫君のだったんだ」

「そっスよ。ほら、カルピンいくぞ」

無理矢理不二から奪おうとする。

「まだいいよ」

不二にそう言われたら仕方ない。

リョーマも不二の横に腰をかけた。

「先輩って猫好きなんスか」

ちょっと不機嫌そうに尋ねてくる。

「別ね。この猫は特別」

そう言うと、より一層機嫌が悪くなる。

「そっすね。アイス買ってあげるくらいだし!」

「猫って何でも食べるんだね」

……あれっ?何でアイスのこと知ってるんだろ。

あっ、そっか。

「越前君、大分前から見てたでしょ?」

「なっ!!そんなことないっすよ!!」

大声で否定する。肯定しているよなものだけど。

「だって、アイスあげてたの知ってるし」

しまった、と後悔したリョーマ。自分から墓穴をほったのだ。

だって、先輩が可愛がってるから。

出ていきにくくて……。

「焼きもちやいたんだ?」

嬉しそうに言ってくる。

「ボクがこの猫可愛がってたのって、君に似てると思ったからだよ?」

「えっ?」

「似てない?」

「どこがですか」

とそっぽを向く。

やっぱり似てる。

それに、そっぽを向く理由を知ってるから。

君は真っ赤になってる顔を見られたくないんだよね?

可愛いな、もうv

「ごめんね、カルピンばっかりに構ってて気付いてあげれなくて」

「………、いいっすよ。でもこの後は俺と遊んでくださいよ」

「当たり前だよ。君が嫌だって言っても離してあげないからね」

「何言ってんっスか……」

文句を言いながらも、嬉しそうな表情は隠せなくて。





カルピンを家に一度つれていって、不二の家へと向かった。

もちろん、不二の宣言通りその日は離せてもらえませんでした。

葵 蛸絵様に差し上げた小説です。
嫉妬するリョーマって可愛いvとか思ってしまいました。
カルピンは羨ましいし……。
最後は、ギャグっぽく終らせてみました。


back