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七夕 |
「今日って、七夕なんスよね?」
「そうだよ♪」
「七夕ってなんスか?」
「えー!!おちび知らないの!?」
「悪かったスね」
むっとする。
「じゃ、ボクが教えてあげるよ」
「不二先輩……」
この人に何か聞くと後が怖いけど、エージ先輩もいるし大丈夫か。
「七夕って言うのはね、年に一度、天の川で引き離された恋人達が会える日なんだよ」
「ふ〜ん。で、何か意味あるんッスか、それに」
「そうだよね。何か意味あんの?不二」
「さぁ?別にないんじゃないのかな」
いい加減な返事。
元々ちゃんとした答えを求めてた訳じゃないけど。
「日本って変な行事があるんだね。国民総出で他人の恋愛を応援するなんて」
「ホント、変な行事だね」
くすっと笑う不二。
「でも、今年も雨降りそうだね」
「雨降るとダメなんッスか?」
「そうだよ〜」
「何で?」
ホントわかんない。
「ん〜、川が溢れるからかにゃ?」
「先輩ってバカ?空に雨が降るわけないじゃん」
「越前君、そんなホントのこと言っちゃ可哀想だよ」
「そうっすね」
「二人ともひどーい!!!いいもんね、大石の慰めてもたうからさ」
すぐに拗ねるこの先輩は年上には絶対に見えないと思う。
叫びながら全力で走っていく姿を見る。
「でもさ、雨降ったらまた一年あえないんッスか?」
「そうだね。そういう風に言われてるよ」
「ふーん、そうなんだ。でも、一年に一回だと相手のこと忘れません?」
「どうだろ?ボクなら忘れないように毎日あいにいくしね」
「…………先輩ならそうッスね」
「でも、一年に一度っていうのもロマンチストでいいかもしれないよ?」
「じゃ、俺達も年に一回だけにしましょうよ」
「それはダメ」
速攻でダメだしをしてくる。
リョーマの顔を覗きこんで、真剣に言ってくる。
「毎日リョーマの顔を見れなかったら、ボクは死んじゃうよ」
そういって、軽く触れるだけのキスをしてくる。
「好きだよ、リョーマ」
滅多に名前で呼んでくれない不二が、名前を連呼するからドキドキがおさまらない。
「……………俺も」
消えそうなくらい、小さな声で言った。
もちろん、不二がそれを聞き逃す訳はなくて。
織姫と彦星みたいに、運命を受け入れる程お互い素直じゃない。
会えないなら、会いに行く。
どんなに大きな川で隔たれても……。
リョーマは、明日が晴れるといいなと思った。
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