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break heart |
壊したい程、愛することがあるとは思わなかった。
受け入れてもらえない気持ちなら、いらない。
そんなヒトはいらない。
イ ラ ナ イ ・・・・・・
見たのは偶然だった。
部室に明かりがついていて、いつもなら無視して帰るのに今日に限って足を運んだ。
手塚か大石だろうと思って。
ドアの前まできて、声が聞えた。
話し声ではない。もう子供ではない不二は、何をしているのかすぐに気付く。
リョーマの熱を含んだ甘ったるいあえぎ声。
女とは違っていつも、妙にそそられる、その声。
相手は誰?なんて愚問だ。
゛菊丸 英二"
ボクの大切な友人・・・・・・だった人。
彼とリョーマの関係は前からうすうすカンづいていたが、目の当たりにするとは思わなかった。
「なんでエージなの?」
涙を流さず泣く。
それが不二の泣きかた。
入ることなく部室から去った。
不二は何も変わらず、生活を続ける。
エージとリョーマに接する態度も同じで。
ただ、笑顔という仮面の下にヒジョウでレイコクな仮面をかぶってる。
数日後の部活終了後、リョーマを残っているように呼び止めた。
「何か用っスか?俺約束があるんですけど。」
「すぐ終わるよ。約束って、エージとかな?」
意地悪く聞く。
「先輩には関係ないっスよ。」
ムッとした表情になる。こんなところも、愛しいと思うのに・・・・・。
「関係なくないんだよ。だってボクは・・・・・・君のコトが好きだから。」
リョーマは別段驚いた感じでもなく。
「気付いていたかな?」
「なんとなくっスけど。」
「そっか・・・・。じゃ、話は早いや。」
「スイマセン。」
「別に謝ってほしいんじゃ、ないよ。」
今までで、一番美しい笑顔。
本当の、心からの笑顔。
あまりに優美すぎて、背筋がゾッとする。
「ボクは欲しいものは絶対に手に入れるんだよ。」
そして、おもむろに隠し持っていたナイフをふりあげる。
グチャッとにぶい、肉が切れる感触。
ナイフから、手に伝わってくる。これがリョーマ君・・・・・・。
「アハハ、ハハ、 ハハハハハ!!!」
笑いが止まらない。
「手に入らないものは、イラナイ。」
愛しそうに、もう動くことのない人形を抱きかかえる。
少しして、エージがリョーマを探している声が聞こえる。
「ねえ不二!!越前知らない?」
尋ねながら、部室のドアを開ける。
「不・・・・二・・・・・・・」
エージは絶句する。
自分の大好きな恋人を、大切な友人が抱いている。
紅く染まった、白く冷たい恋人を・・・・・・・!!
「な・・・・に・・・・してんだよ!!リョーマを!!!」
しずかに降りかえって、優しくほほえむ。
「だって、リョーマがボクを好きにならないから。エージの方がいいって言うから。 だから殺したんだ。」
言葉を発することの出来ないエージ。
「エージ哀しいよね?リョーマがいなくなってさ。同じ所にいきなよ。」
いつの間にかすぐ横にきていた不二が、エージの心臓を突きさす。
「ねえ、エージ。ボクは狂っているのかな。」
決して答えるコトのない人形に、なげかける。
「でも、いっか。僕は今幸せだしね。」
悪夢の中で不二は、夜をすごした。
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