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大切な言葉 |
まだ付き合い始めて、半年も満たない。
テニス部は休日もほとんどが練習で、出かけることも叶わない。
今までは別に構わなかったが……。
今は違う。
相手の些細なことでも知りたいし、自分のことも知って欲しい。
それでなくても、普通のカップルのようなことは出来ないというのに。
ボク自身は人目を気にしない。
でも………。
「相手はあの海堂君だしねー」
今時珍しい…というより、まずいないという純情振り。
手を握るのさえ、真っ赤になって俯く。
「そんなとこも可愛いんだけど」
やっぱり触れたいと思うのが普通で。
「ふーじ!何考え込んでるの」
「あっ、エージ。今走り終えたの?」
「そう!!もうクタクタだよ」
つい考え事をしていて、周りが見えてなかった不二。
特に海堂のことになると、いつもそうだ。
「ねー、不二何かあったの?」
「ん〜、ちょっと海堂君にことでね」
「何?上手くいってないとか」
ちょっと楽しそうに聞いてくる。
自分が大石と上手くいってるからって。後でしっかり苛めておかねば。
「そんなことないよ。ただね、付き合ってるって感じが今一つなくて。
エージはどう?大石と休日とか」
思い出すようにう〜んと頭をひねるエージ。
「家にいったり、買い物とか。あと、テニスもやるよ」
テニス。そりゃ海堂君はテニスなら喜んで付き合ってくれるどろうけど……。
「海堂君とテニスしたら、デートになると思う?」
思うならすごい。
「にゃはは〜、無理だね」
きっぱりと否定すりエージ。
ハァーと、不二に似合わない溜め息。
普段は自信過剰で、我が侭で、笑顔で他人を脅して、人で遊ぶのが好きで…省略(本当に友達か?)
そんな不二が溜め息にゃんて………!!
こんなことを考えてるエージを無視して練習に戻る不二。
「よーし!!俺が二人を幸せにするにゃ!!!」
決心わ固めるエージに
「菊丸!うるさい。肯定10周」
部長の容赦のない一言。
ワクワク気分のエージは、にこやかに走りにいった。
「ん〜ん〜ん〜」
悩むエージ。どうやったらあの二人がラブラブになるのか。
「やっぱり恋人といったら焼きもちかな…?」
俺と不二が一緒に居るのは今までと一緒だし、海堂とかな?
明日から海堂にくっつくのだ!!
思い立ったらすぐ行動!!のエージ。
次の日から海堂に抱きつく。今までよりも、ずっとずっとくっつく。
「先輩、やめて下さいよ」
「嫌だにゃーん。だって薫ちゃん可愛いんだもーん」
「もう……」
嫌がってる割りには振り切らない海堂。
不二の機嫌が悪くなるのが手に取るほどわかる。
(ボクがしたら怒るくせに……!!)
「暑いから離れて下さいよ」
「もうちょっとだけ〜」
なかなか離れようとしないエージに段々腹が立ってきた。
(ボクの気持ち知ってるクセに!!海堂君も海堂君だ!!)
キツイ視線を送っていたので海堂が気付く。
無視して練習へと戻る富不二。
海堂の方を見ようとしない。
「あっ…………」
「薫ちゃんどうかした?」
「なんでもないっす」
沈む海堂。
俺の作戦通りにいってるにゃん♪
その日、不二と海堂は一緒に帰らなかった。
というより、不二が勝手に帰って行ったといった方が正しい。
しょんぼりと帰る海堂。
「やりすぎちゃったかな……」
心配になって不二の家に寄ることした。
家に着くき、不二が出てくる。
「あの……、不二」
「何?用がないなら帰ってよ」
「怒ってる?」
恐る恐る聞くエージ。
「別に」
「怒ってるじゃんか!!」
「当たり前だろ!!」
不二が大声を出したのを見るのは初めてだった。
自分のしたことの重大さが今ごろわかった。
不二が殴りかかりそうになたのを止めたのは、海堂だった。
「にゃんで海堂がここに?」
「不二先輩何やってるんですか!?」
「ふ〜ん、海堂君はエージを庇うんだ」
「だ…だって、普通止めるでしょ…」
「そんなにエージがいいならボクとじゃなくてエージと付き合ったら?」
冷たく言い放つ。
「何言ってんすか……?」
「だって、エージを庇うんでしょ?」
そう言って家の中に戻ろうとする。
「待ってください!!あの……」
不二を必死で引き止めようとする。
「……エージは帰って。海堂君と話するから」
「わかった」
エージは帰り、海堂は大人しく不二の家へと入る。
沈黙。
こんなに沈黙が嫌だと思ったことはない。
何から話すべきなのか……。
「ねぇ、海堂君はボクのことどう思ってるの?」
「それは……」
「ボクは君のことが好きなんだよ?はっきり言ってよ」
返事がない。
こういうことに慣れてない海堂はどう言っていいかわからない。
それを不二は悪いようにとる。
「やっぱりエージの方がいいんだ」
「何でそうなるんですか!?」
「だってそうでしょ?ボクが抱き締めたりしたら嫌がるのに、エージのときは怒んないし!!」
「それは……」
「ボクのことなんて、どうでもいいんでしょ!」
「先輩は俺のこと信じてくれないんスか?」
「どこを信じたらいいの?」
「俺は先輩のこと好きですよ?だから先輩と居ると緊張するし、
その……触れたりすると恥ずかしいんです………」
「……」
今度は不二が黙る。
「俺、口下手だから上手く伝えられないけど、先輩のこと好きです。
それに、先輩相手にキれますか?」
やっぱり不二は黙ったまま。
(俺、嫌われたのかな)
海堂は泣きそうな気分だった。
「…………ごめんね」
「えっ?」
「信じてあげられなくて。好きだよ、薫」
「不二先輩」
「でも、これからは少しでもいいから言葉にして。不安になるから」
「はい。好き……です。先輩のこと」
「うん」
後日
「エージ、昨日はごめんね」
「ううん、俺も悪かったから」
「そんなことないよ、あれかたボク達うまくいったから。ありがと」
昨日とは違って、にっこりと綺麗の笑う。
(不二が嬉しそうで良かった)
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