「好きだから、壊したいんだ」

「好きだから、憎いんだ」

「好きだから、ボクの物じゃないのが許せないんだ」



好きという感情は、最高の媚薬。

人を狂気へと導く、麻薬……。




ボクを含まない風景




「不二ー、忘れ物したから待ってて」

「いいよ、じゃ部室で待ってるから」

「OK。早くすますから」

そう言って、駆け足で教室へと向かう。

鍵閉めのため残っていた大石に声をかける。

「大石、ボクエージ待ってるから鍵閉めるて帰るよ」

「いいのか?じゃ、すまないが頼む」

何も疑わず鍵を手渡す大石。

「お先に」

「また明日」

準備は整ってる。

後はエージの帰りを待つだけ……。






早く済ますと言ったエージは、廊下を全力疾走したため、先生に今まで怒られてた。

「不二の奴怒ってるかにゃ〜」

不二を怒らすと後が面倒なのを知ってるエージは、怒られたことなどすっかり忘れてまたもや全力疾走。

「不二ごめんにゃ〜。先生に捕まっちゃって!!」

いい訳をしながら部室へと入るエージ。

振り向く不二の表情は何時通りのあの笑顔。

エージは怒ってないと思い、安楽する。

「構わないよ、エージ」

「あれっ?大石たちは?もう帰ったの」

「うん、用事があるからって」

「そっか、なら仕方ないね」

「俺達も早くかえろ。もうお腹空きすぎ〜」

「うん、でもボクもちょっとまだ用事が残ってるんだ。エージ付き合ってくれる?」

「構わないにゃ♪で、何?」

不二に無防備に近づくエージ。

そんなエージの顔を静かに覗きこむ。






なんか何時もと雰囲気の違う不二を不思議に思う。

何も話さない不二。

どう切り出そうか考え込む。

(こういう時の不二って怖いんだもんあ〜)

半泣き状態である。

「ねぇ、エージ」

「ん、何?」

やっと言葉を発した不二にホッする。

「エージは大石が好きなの?」

「な……、何言ってるの!?」

顔を真っ赤にして言うエージ。

肯定しているようなものだ。

「前ね、エージと大石がキスしてるところ見ちゃったんだ」

「何が・……。言いたいの?」

恐る恐る聞いてみる。

「別に、何も。ただね、ボクもエージのことが好きなんだ」

「俺は……」

突然の告白にどうしていいものかわからない。

今まで一度もそういう風に見たことがないから。

「大石と別れて、ボクと付き合う気はないんでしょ」

確信のような言葉。

「ごめん」

謝るしかない。

「ボクは別に謝罪の言葉が欲しいんじゃないよ」

「じゃ、何……?」

不二はいきなりエージを床へと押し倒す。

「ちょ……ちょっと待って!!!」

無言。

何も言ってはくれない。

ただ黙ってエージの服を脱がしていく。

「や……だ。大石……」

無意識の内に口にした名前。

「ボクの前で、他の男の名前を呼ぶんだ」

冷たく、冷酷な瞳。

多分、これが彼の本性なのだろうことは容易に考え付く。

「お仕置きだね」

部室に卑猥な音が鳴り響く。

口はふさがれて、手足は拘束されて自由がきかない。

「ん……、くぅ、」

声にならない声。

それでも喘ぐ声は出てくるもので。

エージ自身は紐で括られていて、イくことがかなわない。

相手のことを思いやらない、一方的なセックス。






「エージ」

耳元で囁く。













「好きだから、壊したいんだ」

「好きだから、憎いんだ」

「好きだから、ボクの物じゃないのが許せないんだ」













まるで、愛の告白のように告げる。

エージを縛っていた口の布を取る。

答えを待っているのだ。

「こんなことして、俺の気持ちはどうでもいいの?」

弱弱しい声で言う。

「だって、ココロは大石のものなんでしょ?」

「間違ってるよ、不二……」





わかってる。

ボクは間違ってるんだ。

こんなのは愛じゃないのかもしれない。

でも、もう遅いんだ。




「ココロが無理なら、躯(からだ)だけでいい。エージの姿をした人形でいい」




エージは、涙を流さずに泣いた。


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白神さんのを読んで書きました。
人形なエージを。
ダーク不二って、なんて書きやすいんだ!!!
手塚×海堂はあんなに苦労したのに。
流石不二先輩!!!!!!!!




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