act,2 薬剤師の魔の手
手塚が入院して、二日目。
今日も朝からさわやかに…………。
「う〜ん、手塚は意外に寝起きが悪いんだな。そんなに眉間に皺を寄せてると元に戻らないぞ?」
”寝起きの悪い手塚と”と形容出来るかもしれない。
しかし、だ。
普通、悪いと思わないか?
人が寝てるところを観察した後無理矢理起こし、傷口を見てデータをとる。
データをとるのとかは百歩譲っていいとしても、こんな朝っぱらからだと怒るだろう?!
現在時刻はというと、朝の五時。
起きている訳がない。
傷口を叩かれたりして、これで目覚めのいい奴がいたらお目にかかりたい。
「何をしている」
「いや、これからの為にと思ってデータをとっているのだが」
「確か担当医は不二だと聞いたんだが」
素直な疑問を口にする。
にしても、ここには普通の医者は居ないのだろうか…。
不二に診られるのもかなり嫌だが、この医者もかなり怪しい。
「俺は薬師なんだ。これからお前の飲む薬は俺が全部扱うから。よろしく」
「(また変な奴だ)よろしく」
「なんか間が気になるけどね。まぁいいよ」
眼鏡をキラリと光らせて言う。
「で、話は戻るが何でこんな時間にデータをとる必要があるんだ?」
「何事も色んなデータがあると助かるんでね」
そう言って去っていく乾。
「俺はとんでもない所に来たのかも…」
まだ二日目だといのに、何年もいるかのような錯覚に陥る。
それだけ、この病院が最悪なところだと…(笑)
時計に目をやると、まだ五時半もまわっていない。
一度起きてしまうと、今から寝るのもだるくて。このまま起きていることに決める。
「カーテンでも開けるか」
まだ薄暗くて、けっこう寒い。
窓もついでに開ける。
冷たい風が流れ込んできて、手塚の体を冷やす。
「寒い」
布団からモソモソっと顔だけを出して、手塚にたった一言文句を言う。
昨日から、こいつには文句しか言われたい気がするのは気のせいだろか…。
「悪い」
一応謝ってみるが、(五時過ぎはさすがに早いから)一向に返事は返ってこない。
どうしたのかと、近づいて顔を覗きこむ。
「……………」
リョーマはまだ気持ち良さそうに寝ていた。
寝言で文句を言っていたのか…。
ある意味尊敬に値するな、こいつは……。
寝言でまで寒いと文句を言われたのなら仕方がない。
窓を閉めて、カーテンを閉じる。
することもない手塚は、持ってきた小説を読むことにした。
枕元の電気を付けて、極力静かに本を読み始める。
本を読み始めて、けっこうな時間がたった。
何時かと時計に手を伸ばす。
「七時をまわったか」
そろそろ起きる時間だ。
自分はもう起きているから関係はないが。
「は〜い、皆起きてる?朝の診察の時間だよ☆」
朝から妙にハイテンションな声…。
頭痛がしてきた。
「なぜ、そんなに元気なんだお前は?」
「くすっ。相変わらずムカツクね☆ほっといてくれるかな?」
”言われなくても、お前のことなんてほっておく!!”と言えない辺りちょっと悲しい(笑)
診察とかいいつつも、何かする様子はない。
「しないのか?」
「今するよ♪」
そう言って、まだ寝ているリョーマの元へ足を運ぶ。
可愛い寝顔を堪能した後(笑)頭までスッポリ被っている布団をはがす。
「リョーマ君、朝だよ。もう起きようね♪」
ゆすったりして起こすのかと思いきや……。
朝っぱらから、しかも隣で手塚が見ているというのに濃厚なキスを始める。
三十秒くらい続くと…。
「あーもう!!苦しいっすよ!!!」
「そう?なら起きようね」
「…………わかったっすよ」
しぶしぶと起きるリョーマ。
っていうか、医者そんなことをしていていいのか!!??という突っ込みはしない方が身のため。
「じゃ、リョーマ君も起きたことだし診察しようかな☆」
手塚の方に近寄ってくる不二は、笑っているのに背筋が凍るような気がしたのは絶対に俺の勘違いではない………と思う。
診察が終わり、食事を終えたら乾ところまで薬を貰いに行けと言われた。
普通、薬とかは医者が貰ってくるもんじゃないのか?という疑問をあえて口にしなかった。
別に取りに行ってもいいし、ここで不二と言い合いしても負けそうな気がしたからだ。
不二に教えられた部屋につき、軽くノックをする。
「開いてるよ」
返事が返ってきて、手塚は部屋にへと入った。
「失礼します」
「やぁ、いらっしゃい。薬貰いにきたんだよね?不二から聞いてるよ」
「あぁ」
ちょっと待っててと言って、薬品が並んでいる棚にへと向かう。
薬剤師というのは嘘ではないんだな(失礼)
すごい量の薬品だ。
その中から、一瓶手にして手塚の方に持ってくる。
「じゃ、これを飲んで」
薬三錠と、水を手渡される。
なんとなく怪しいが(失礼)飲むしかない。
ゴクン
飲んでみるが、特別変わったところはない。
「なんか変なところはないか?」
「…ないが」
「そうか」
なんか残念そうに見えるのは気のせいか!?絶対に気のせいじゃねーだろ!!
確証のない以上、追求することが出来ないのが口惜しい。
「まぁ、何か体に異常が発生したら教えてくれ」
「ちょ…!!」
「俺は忙しいかたこれで。病室に戻った方がいいよ」
手塚が何か言いたそうにしているのを無視して、部屋から追い出す。
片手には、いつも持ち歩いているノートが抱えられていた。
「さてと、どんなデータが手に入れられるかな?」
逆行を浴びながら、眼鏡がキラーンと光る。
やっぱり怪しい薬だったらしい(笑)
多分、不二もグルです(爆)
追い出された手塚は仕方なしに、自分の病室へと戻った。
部屋の前で、唐突に今朝のことを思い出した。
……普通、あんな風に起こすものなのだろうか?
越前も特別変に思っていない風だった。ただ、苦しいというだけで。
当たり前のことなのだろうか…?いや、そんなはずはない!!
「ここに居ると頭が変になりそうだ」
「へぇー、なんで?」
リョーマが林檎を片手に聞いてくる。
「いや、別に」
「ふーん。まぁいいけどさ。あんた今ヒマ?」
「別に忙しい訳ではないが」
「じゃ、これ剥いて」
林檎を渡される。
先程から林檎も持っていじってるだけで食べないから不信の思ってたが、剥いてくれる相手を探していたらしい。
「自分で出来ないのか?」
自分のことは自分でと、ずっと言われてきた手塚は不思議でたまらない。
「だって、いつもは周助がしてくれるもん」
「周助?」
誰のことがわからなくて、思わず聞いてしまう。
「あぁ、不二先生のこと」
「そうか」
下の名で呼び合うような仲なのだろうか。
色々と疑問点はあるが、あまり質問するのも良くないと思いしなかった。
「早くしてよ」
なかなか林檎を剥き始めようとしない手塚に苛立つ。
もともと、剥いて貰うのだからもう少し謙虚な態度でもいいものを…。
この子供には、そういうものを求める方が間違っているような気がする。
「ちょっと待ってろ」
結局剥いてあげる自分は、甘いと思う。
林檎を剥き始める。
なぜか手元がふらつくろうな気がする。うまく剥けないし。
自分はこんなに不器用だっただろうか?
「どうしたの?なんか変だけど」
「いや、へい……き………だ」
そう言いつつも、手にしている林檎を床に落とす。
「すま……ん」
なんだか目蓋が重い。
早く起きたせいか、ものすごい眠気に襲われる。
特別激しい運動もしてないし、こんなに体が疲労するはずはないのに…。
「ねぇ、大丈夫なの?」
リョーマの声はもう届いてなかった。
パタッとベットに倒れこみ寝てしまった。
「何、この人」
不思議そうに手塚を見るリョーマ。そりゃ突然寝られたら驚くよ。
突ついたり、蹴ったりしても起きる気配はない。
「う〜ん、どこで配分を間違ったんだろう?」
突然リョーマの頭上から声が聞こえる。
「な、何してんの!?」
「いや、ちょっと実験をね」
「実験?」
怪訝そうな表情で乾を見る。
「ホント、気になるね」
乾同様、どこからともなく現れる不二。忍者か、お前らは。
もう慣れてしまっているリョーマは驚きはするものの、別段不思議には思わない。
(この人達、もう人間じゃないし)
「で、何をしたの乾」
「この前な、もっと強力な睡眠薬を欲しいという人がいて新しいのを作ってたんだが」
「ふ〜ん、人体実験ってやつ?」
「動物実験はもう終わっている」
そういう問題か?!
「結果は微妙だな。強力だが、時間がかかる」
「強力ってもんじゃないでしょ、これは」
死んだように眠る手塚を指差して言う不二。
強力な睡眠薬ていうレベルじゃない。っていうか、これを人様に簡単にあげたら犯罪じゃん!!
「どうすんの、これ」
「取り敢えず、データをとっておくか」
なんか色々と取り出して、検査していく乾。
憐れな手塚よ……………(涙)
乾と話しこんでいる不二の服の裾が軽く引っ張られる。
「ねぇ、周助。林檎剥いてよ。手塚に頼んだのに寝ちゃってるし」
「うん、いいよvもう無能な人間って嫌だね」
それを言うか、不二…。
「なぁ、不二。これからも手塚には俺から直接薬を渡すから」
「うん、わかったよ」
無言の契約がここで交わされたのは言うまでもない。
「さて、明日は何の薬を試すか」
にやりと笑う乾。
頑張れ手塚!!
かくして、手塚が目覚めたのはこれから数日後だったとか。
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やっと2を書き上げれました。
っていうか、もうこの病院は犯罪者の集まりですね(苦笑)次くらいには良心の塊大石か、
心のオアシスの薫ちゃんを出したいと考えてます!!
リョーマ君はかなり長い間入院してます。理由はまだ秘密で☆(そんな深い理由はありません。所詮ギャグですから)
で、1のときに手塚は骨折とかあったくせに元気です(爆)
深く追求しないでください。私が楽しんで書いてますので
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