あたしは、青学の男テニ部とお友達です。あたしはみんなが大好きです。でも、みんなは時々とっても仲が悪くなってしまうんです。それが、今一番のあたしの悩みかな? タ〜・ララ!ラッ・ラッ・ラッ・ラ〜・ララッ! 「もしもし?ですけどぉ、どちらさまですか〜?」 はジャケットの中から携帯を取り出した。 「もしっも〜し?ちゃん先輩っすか。桃っす。おっは〜」 はきょとんとしたまま、スピーカーに手を当てた。 「誰から電話なの?」 の目の前にいる人物に笑顔を向けた。 「えっとですねぇ。学校の友達みたいなんですよ〜」 「『みたい』って何だよ?相変わらずボケボケだな」 水野は、目の前のレアチーズケーキをフォークで刺すと、形の整った薄いその口唇へとそれを運ぶ。 「そうなんですよ〜。あはは〜」 「俺と話してる暇ないんじゃないの?電話の相手、ほったらかすなよ」 水野は呆れ顔で言った。水野、お前のその口調は目上の人間に対する口調ではないぞ。 「ああ〜。本気で忘れてましたぁ〜」 は携帯を押さえていた手を取る。 「もしもし〜。えっとぉ、ご用件は何でしょうかぁ〜?」 「ちゃん先輩、今すぐ駅前に来て欲しいっす!」 「えきまえぇ?なんでぇ〜?今ちょっとね〜、よ〜・・・・」 「よろしくっす!じゃ、待ってるっすね!」 ブツッ! 「用事がぁ〜、あるんですよぉ〜・・・・」 桃城は一方的に用件だけを言うだけ言って電源を切った。呆然と携帯のディスプレイを眺める。 「とろとろ話してるから、電話を切られたんだろ?」 水野は机の上に転がっていた一冊の辞書を手渡した。 「はぇ?」 「バカな声出してる暇は無いだろ」 「うん」 「俺を呼び出したのは、古典文法を教えて欲しかったんだろ」 「うん」 「で、お前は今、呼び出しを喰らったんだろ」 「うん」 「さっさと行かないとヤバイんだろ」 「うん」 「俺はこれで帰るから、自分で辞書を使って勉強できるだろ」 「うん」 水野は上着とバッグを手に持って、部屋を出て行った。 ・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・水野が居なくなってから、15秒が経過。 「できないよぉぉぉぉぉ〜〜〜〜!!みじゅのくぅ〜ん・・・帰ってきてぇ〜〜」 今更説明するのも可笑しいのではないかと思われますが、は本気でとろ過ぎる性格の持ち主でございます。ちなみにお勉強の出来は悪いです。後輩の水野に勉強を教えてもらっているおバカちゃんです。 帰り道、水野はB`zを聞きながらぼんやりと歩いていた。 「ねぇ、ちょっとそこの君?」 「ん?」 水野は後ろを振り返った。 其処には中性的な面立ちをした少年が立っていた。水野と同じくらいの背丈の少年だった。 「何か用?」 「っていう家を知ってる?」 「ああ」 水野は、耳に付けていたヘッドホンを外す。 「届け物があるんだけど、書いてもらった地図が全然分からなくて困ってたんだ」 その少年は水野に一枚の紙を渡した。 水野は絶句した。 (どこをどうやったら、こんなもんが書けるんだよ・・・?描いた奴、ほんとのバカ?) 小学生が描いたかのような乱雑すぎる地図だった。それはミミズが紙の上で寝転がっているかのようなグチャグチャした筆跡だった。 「この辺の地理が全くわからなくて。よかったらその家まで連れて行って貰えないかな?」 「ああ。別に構わないよ。今日は予定ないし」 「ありがとう」 少年は爽やかに笑った。 水野はその少年を連れて、もと来た道を歩き出す。 「そういや、あんた名前教えてよ。俺は水野竜也」 「あ・名前言ってなかっ―――」 「うわぁぁぁぁん!桃城君との待ち合わせに間に合わないよぉ〜!」 水野とその少年の目の前を、疾風の如くは自転車に乗って走っていった。全速力では走り去っていくその後ろ姿を二人はただ呆然と見つめていた。 「今のがそのって奴だけど?」 水野は横に居る少年の顔を見た。 「・・・」 少年は無言のまま。水野は、こいつ人の話を聞いてるのか?と思い、少年の顔を覗き込んだ。 次の瞬間、水野は何も見なかったことにしようと思った。 (の後輩やってるけど、あいつ 日頃こんな化け物みたいな奴と付き合ってるのかよ・・・) は、ひたすら駅へと大急ぎで向かっていた。能天気な少女は、自分の背後に轟く暗雲に全く気がついていなかった。まだ知る由もないこれからの出来事へとお姫様はただ突っ走る。お姫様を守る騎士は誰・・・?
|