なんかぁ、桃城君はオネムぅ〜みたいなのでほっといてぇ、今日は仲良しのみんなと一緒にぃ、お出かけをすることにぃ、しました〜♪ 「先輩、何処行きたいんすか?」 「〜。やっぱ此処は、俺と二人っきりでペットショップ巡りにゃん!」 「俺と一緒にとろろそばを食べに行くっすよね?」 「いや、此処は部長の俺と一緒に登山に行くべきだろ」 えっとね、えっとね。どうしようかなぁ・・・・うに〜?あれれ、みんなの意見ってばねぇ〜、全部バラバラじゃないかなぁ〜?うにに〜、どうしよぉ?? 「手塚部長、それめちゃくちゃ過ぎっすよ!!」 「越前。一年は先輩の命令を聞くものだぞ!!」 「部長・・・。失望するっす」 「絶対絶対俺と一緒にペットショップ巡りするんだにゃん!!」 うににぃ〜。えっとぉ、えっとぉ〜何処に行こうかなぁ?ええとね・・・う〜ん、ピクニックするんだからぁ〜、やっぱり公園でお弁当とか食べたいのぉ〜。 ・・・みんな、あたしの話ぃ、聞いてるぅ?誰も聞いてないなぁ〜。北風がぁ、ぴーぷー吹く。うぅ〜、北風がしゃむいぃ〜。コンビニのトイレ借りてこよぉ。 「あたしぃ、トイレ行ってくるねぇ〜」 一応声を掛けて、とたとたと走っていく。誰もその声に気付いていなかった。 ††† が居なくなったにも関わらず、青学男テニ部(又の名を『狼の群れ』)は人目も全く気にせずに吠え続けていた。 「君達、何してるのかな?」 その凄まじい争いに似合わない、涼しい声が聞こえた。全員、その声の主に注目した。 「「「「「不二(先輩)!!!!!」」」」」 手塚と菊丸と越前は、不二を睨み付ける。海堂は、不二に脅える。乾は不二のデータに関するページを開く。 「こんにちは。部活が終わった瞬間、みんな何処に行ったのかなって思ってたんだよね」 爽やかな笑顔を振り撒く不二。真っ白なキレイな顔で微笑む不二。片手に紙袋を持っている。 「何しに此処にいるんだ?不二」 「さっきから、駅前で何を吠えているのかと思えば、ちゃんのことで揉めてるみたいだね?」 「不二先輩には関係ないことっすよ。邪魔っすね、不二先輩って?」 「何、その言い方?僕、傷ついちゃうな。クスクスッ」 「腹黒でずぶとい神経の何処が傷つくんだにゃ!」 「へぇ。何か手塚と英二と越前君は、僕に対して友好的じゃないね?」 「「「当たり前だ(にゃ/っすよ)!!!」」」 殺気を込めて怒鳴る。部内での不二の存在はあまりにも腹黒で鬼畜で、人間の域を越えている。『魔王』という異名を持つ彼の性質は、一般人には想像を絶する恐怖を与える。 (・・・とんでもないくらいヤバイ・・・まだ、俺は青学テニ部でレギュラーをやっていたいんで、逃げます) 海堂、不二の目を盗んで其の場から音も立てずに去る。人間業じゃない。 「何か本気で僕を怒らしたいみたいだね?クスクスッ」 不二はにっこりと微笑んで、目を見開いた。手塚、菊丸、越前は其の時、初めて恐怖を感じた。 「味わってみる?最大最強の黒魔法」 FFXをプレイしたことのある人間ならば、一度はこの恐怖の台詞をお目に掛かったであろう。その魔法は黒魔法。黒魔法とは、戦闘中にダメージを与えることのできる魔法である。魔法名・アルテマ。消費MPは90、ただし不二の場合はそんな少量の消費量など全く疲労を感じない。属性不明。・・・効力、敵全体に無属性の大ダメージを与える。言い忘れていたが、『不二』の操るこのアルテマは、『普通』ではない。 現実世界で魔法が使えるわけがなかろうという読者方がいるであろう。その貴方方がおっしゃる『常識』というものを覆すのが不二である。青学の魔王様に『一般常識』など通じはしない。 地が揺れ、暗雲が渦を巻く。地を這う砂埃が舞い上がる。駅前の広場で、巨大な音が激しく空気を揺らした。駅前の広場は一瞬にして、月面のクレーターの如く凹んでいて、その近くにゴミのような物が横たわった。 ††† 駅前の広場に人だかりができていた。たくさんの人間が集まっていて、其処だけ熱気が篭っていた。 「あ〜。やっぱ、お外はしゃむい〜」 は、ハンカチで手を拭きながらコンビニから出てきた。 「あれ〜?何でこんなに人が、いっぱいいるのかなぁ〜?」 は人だかりをよいしょよいしょと掻き分けて、駅前の広場へと向かう。 「ちゃん」 「不二ぃ〜」 其処にはの彼氏・不二が微笑んでいた。 「不二だぁ〜♪何してるの、此処でぇ〜?」 「ちゃんに会いに来たんだよ。これ、届け物。ってゆーか、君の後ろを振り向いてみなよ?」 は後ろを振り向いた。 其処には乾が立っていた。 「貞治だ〜vvvvあけおめ〜vvv」 は満面の笑顔で乾に抱きついた。 「。俺のデータによるとその日本語は正しくないな。正確には―――んッ!」 は、乾の話を全く聞かずに、乾の頬にキスした。 「貞治だv貞治だv学校が違うから ぜんぜぇ〜ん会えなくてさみしかったよぉ〜」 「会えなかったのは、手塚のハードスケジュールに付き合わされていたからであって、の事をほったらかしたくてほったらかしていた訳ではない」 はぎゅうぅと乾に抱きついた。 「ちゃんってば、僕の存在を気にしないね(笑)乾の彼女を守るのは、親友としての僕の役目だし〜♪(ホントはストレス発散なんだけどね)」 転がっているゴミと見間違うような負傷者の姿(手塚、菊丸、越前)と、黒魔法の為にひび割れ捲くった駅前の広場、それを脅えた目で見つめる人々の視線など、彼らには全く見えていなかった。 お姫様を狼の群れから助け出したのは、黒衣の騎士・・・乾貞治だった。自分の手を汚さない辺りが恐ろしい。 ††† 駅を後にした二人は、街路樹をてくてくと歩いていた。(不二は途中でサボテンを見たいらしくて、別れた) 「貞治〜♪」 「何?」 乾の腕をは小さな手で掴んだ。乾は首を傾げた。 「さっき不二君に貰った紙袋って、貞治からの託なんだよね〜?」 「メニューを考えるのに忙しくて、不二に頼んだんだ。今さっきまで手が開かなくてな。すまん」 「あたしに届け物って、な〜にぃ?」 はにこにこしながら、乾の顔をちらちらと見ていた。 「冬休みの間、俺の家によく泊まっていただろ」 「うん!貞治のベッドでなきゃ、やだもぉ〜ん」 「何故?」 乾は不思議に思った。 「あたしねぇ〜、貞治がだぁ〜いすきぃ〜なの」 は乾の腕に頬を寄せる。 「俺のベッド、楽しかったか?」 「うん。とってもぉ〜!」 「楽しすぎて、これのこと忘れていたな?」 「うに?」 紙袋の中に腕を突っ込んで、がさごそと引っ掻き回す。 「あぁ〜、パジャマぁ!」 「忘れっぽいな、は。」 「うにうに♪」 の頭を撫でる乾。 このバカップルの歩いた後には、草一本さえ生えないと言われている。
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