「ハーハーハーハーぜぇーぜぇーはぁ・・・」 は息を切らしながら、何とか駅前に着いた。駅前の駐輪場のおじさんに150円支払って、自転車を置いてきた。 (しんどいぃ・・・辛いぃ・・・冬休みの間、ゴロゴロしてたせいかなぁ。体が辛すぎだよぉ・・・桃城君、何処かなぁ・・・・?) は、波の如く人々が行き交う其の大きな駅前をきょろきょろと見回す。のんびりとした性格の持ち主であるは、よく迷子になるのであまり人込みの中へは自分から進んでいかない。目まぐるしく行き交う人々を は呆然として眺めていた。 「何処にいるのかなぁ〜。もしかして、桃城君ってば、迷子になっちゃったのかなぁ〜。ダメな子だねぇ〜。あぁ〜!こんなことなら、水野君に残ってた勉強を手伝ってもらえばよかったかなぁ〜。」 自分が迷子になっていることに全く気がついていない能天気な。明日締め切りの古典のプリントが6枚もあるのに、ぼけ〜っとした顔でただ人込みの中で突っ立ていた。 「?何をしているんだ?」 次の瞬間、の腕が誰かに掴まれた。腕がぐいっと掴まれたので、肩ごと斜めに傾いた。 「え?」 はゆっくりと自分の頭上から声を掛けるその人物の顔を見た。 「あぁ〜!手塚くぅ〜ん♪」 其処には青学テニ部NO.1の手塚が立っていた。 「お久しぶりぃ〜。あけましてぇ、おめでとぉ〜」 「また迷子になっていたんだな?」 「あはは〜。手塚君が一緒に居れば大丈夫だよぉ」 その言葉に思わず絶句する手塚。 「先輩、今頃新年の挨拶っすか?相変わらずとろいっすね」 「ん?」 手塚の横には超生意気ルーキー越前が立っていた。 「やほぉ〜。元気でしたぁ〜?牛乳飲んでるぅ〜?可愛い越前く〜ん」 越前の頭を撫でる。越前は上目遣いでを軽く睨んだ。 「あけおめにゃ!!」 の背中をぎゅうと抱きしめる菊丸。 「あ〜、菊丸君だぁ〜。相変わらずぅ、にゃんこだねぇ〜」 菊丸の髪に顔を埋める。 「あ・思い出したぁ〜!ねぇ、桃城君見なかった?」 は彼らの顔を見た後、そう言った。 「こいつのことっすか?」 ベンチに腰掛けながら、海堂は何かを指差した。 「ん?それ、なぁ〜にぃ?海堂君?」 「ただのゴミッすよ」 海堂は指先でそれを掴む。彼がゴミと言ったものは、桃城(傷だらけのズタボロ状態)だった。 「ふしゅ〜」 「あぁ〜!桃城君ってばぁ〜、どうしちゃったんですかぁ〜?」 さすがのもそれには驚いた。 「これは、が来るわずか5分前に俺らが―――ふがッ!?」 「海堂先輩・・・それ以上、言わない方がいいっすよ」 海堂の口を押さえる越前。背伸びをしてまで海堂を黙らせる。この少年は・・・もとい、この連中は何を隠したいんだ? 「?」 「菊丸。から離れろ。駅周辺、10周させるぞ」 「やだにゃ!暴君は最低にゃ!」 に密着したままの菊丸を引き剥がす手塚。 「そぉ〜言えばぁ〜、何でぇ、みんな此処にいるのぉ〜?」 このドタバタした状況でも、の能天気ぶりはびくともしない。 「部活中に、桃城先輩が先輩に電話をしてるのを見てたんで、此処に来たんっすよ」 「へぇ〜そぉ〜なんだぁ〜」 ちなみに大石・河村はこのメンバーに絡むのは危険と判断して、部活が終わると同時にひっそりと逃げた。青学男テニ部の喧嘩腰の性質というものは恐ろしいもので、その被害はご存知の通り 部内だけでは収まらない。周りへの被害は毎度 多大なものである。 「あのねぇ〜、こんなに楽しいめんばぁなんだからぁ〜、どっか遊びに行きましょうよぉ〜♪」 筋金入りの能天気なの頭の中では、“楽しいピクニックができるぅ〜v”と喜んでいた。 「構わないな」 「やったにゃん♪」 「ふしゅ〜」 「いいっすよ」 全員その申し出を快く受けるが、心の中は『何故メンバーなんだ!?俺とではないのか!?』と、非常にご機嫌が麗しくなかった。 ††† 「えっと、確か水野君の説明だとこの通りを真っ直ぐだったかな?」 少年は周りをきょろきょろ見ながら、歩いていた。少年はあの後、水野と別れた。正確には水野が急用を思い出したと言って、その場を去っていったからだ(駅の行き方だけは教えていった)。水野はよほど凄いものを見たのかもしれない。 「あんた何こんなとこで突っ立ってる訳?」 少年はふと振り返った。 「ん?」 少年の目の前には、少女と見間違う程の麗しき椎名翼が立っていた。 「あ・君、駅がどっちか知らないかな?」 「は?僕は今急いでいるんだよ。あんたに構っている暇はないんだからね。通行の邪魔なんだから、道譲って欲しいんだよね?あんた、人の話聞いてるの?それとも其の耳はただの飾りなわけ?」 相当急いでいる椎名は、いらつきのあまり 身も知らない少年に向かってマシンガントークをぶっ放した。 「さっさと道譲ってくんない?あ〜!柾輝との待ち合わせに遅れる!ちょっと、聞いてんの?」 椎名は其の細い手首に付けた腕時計を見て、さらにイラつき出した。 「くすくすっ。聞いてるよ」 少年はキレイな笑顔を翼に見せた。椎名はその笑顔を見て、ぞっとした。その笑顔はキレイだという形容詞が当てはまると言えば、当てはまる。だが、その笑顔には黒いオーラが満ち溢れていた。 「弱い犬ほどよく吠えるんだよね。誰に対して口を聞いてるのかな?くすっ」 「・・・・・・」 椎名はその場で黙り込んでしまった。『黙り込んだ』と言うよりも『脅え』てしまった。 暗雲は、さらに勢いを増し、怒りが満ち溢れていた。 「僕に歯向かおうだなんて、その考えは甘すぎるんだよ」 青学No.2にして、青学の魔王様こと不二周助は微笑んだ。
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