いや、まあ、それはそれで、いいんだけど

              -----「親バカ日誌」を読む(2001.10.20  少女マンガMLへの投稿を修正)


 久しぶりに大阪に出て大きい本屋に出かけると、なんと魔夜峰央「親バカ日誌」が平積みになっておりました。
 ん!
魔夜峰央が親バカ? というか、そもそも魔夜峰央の妻というと、市川ジュンだったっけ。いやいや市川ジュンの夫は、柴田昌弘だった。
 じゃっ、山田ミネコだったっけ、おっと、山田美根子と山田峰夫(だったかな)は本名だか旧姓だかが偶然近いだけで、全くの他人。だいたい、山田ミネコの夫は、樹村みのりが「菜の花シリーズ」で「ネコちゃん」と引用したような由緒正しい「YOROネコ」生活を送っていた「ミケコさん」を「うさぎ」にしちゃったタヌキだぞ。

 そういえば、萩尾望都だか竹宮恵子だかにバラの花束を贈ったこともある、と言ってた魔夜峰央の妻ってどんな人?と思って読み始めると、な、なにーっ、ワイフはクラシック・バレエをやってるのでスタイル抜群だとっ。娘もそれに似て足が長すぎてバランスが悪いだとっ。ワイフが今でも7号サイズの服を着てるから、長身で10歳の娘は同じ服を着れるのだとっ。妻のように美しく生まれたので、娘はいわれのない嫉妬や陰湿ないじめにあう不幸な宿命だとっ、兄弟ゲンカをしない兄弟はいなくても、夫婦ゲンカをしない夫婦はここにいるだとっ。それって「親バカ」どころか、「夫バカ」の方が実は強いんじゃないのか(日々の生活を円滑にするため、というのなら、わからなくもないが)。

 まぁ、がんばって「親バカ」やってもパタリロにしか見えない弟(それはそれで十分「親バカ」なのか)はご愛敬としても、「マリエにもいよいよお赤飯を炊く時がきて」なんて父親にまんがに描かれて、日本全国で売られているってのは本人にとってはどうなんだろうかね。巻頭には、もはや14歳になった「長女マリエ」さんのイラスト(なかなか上手い)も載っていたりするから、決定的な対立にはなってないだろうけど。

 いわゆる「少女マンガ家によるエッセイマンガ」として評価するとかしないとかいう話はおくとしても、もはやオッサンと化した少女まんが読みにとっては、けっこうたまらん一冊なのじゃないかと思ったのだった。
 


    そこに愛があるなら、何をしても許されるのか

                                   -----「親バカの壁」を読む(2005.8.2)


 魔夜峰央が子どものプライバシーを無視した親バカ発言を続ける「親バカ日誌」の第二弾である。

 「親バカ日誌」では10歳から13歳になった姉と8歳から11歳になった弟は、 この巻の中でさらに4年の歳月を重ね、17歳と15歳にまでなる。 本当なら微妙な年頃のはずなのに、父・魔夜峰央は相変わらず、 ささいな言い間違いや思い違いを「こんなことでいいのでしょうか」と平気で描く。 時には、子どもにとっては禁じ手である幼いときの失敗ネタまである。

 長女・マリエは書く。
 「本人も覚えていないことを周りが知っているというのは、 何とも不思議な気分(笑) クラス中読者でした。」
こんな状況でもグレないあなたはエライ。むしろグレてもネタにされるので、それも許されないほどの不幸な境遇だったというべきだろうか。

 そんな高校生の彼女をはじめ、弟、妻による魔夜峰央の似顔絵がある。  皆、それなりに達者だし、家族が魔夜峰央を許していることがよくわかる。 むしろ、愛していることががんがん伝わってくる。 魔夜峰央も、実に親バカがいがあるというものである。

 なるほど、幸せな家族だ。魔夜峰央の描き方にも愛があるのは、よくわかる。しかし、そこに愛があるなら、何をしても許されるのだろうか。けっして不道徳な事件が起こっているわけではないのに、ふとそんなことを考えてしまった。

 ところで、数年前に亡くなった同業者のAさんというのは誰なんだろう。 少し気になる。 (1)



 (1) 調べて見ると、「あなだもあ」が1997年に亡くなっていた。週刊マーガレットデビューということで、魔夜と交流もありそうだ。確証は
  ないのだが。



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