CHAPTER 2   JUDGING CRITERIA

CHAPTER 2ではCHAPTER 1で説明した説得力の6つの局面をジャッジ、そしてaudienceがどう捉えるのかについて具体的に考察していきます。特にジャッジの捉え方=Judging Criteria(ジャッジ基準)となるもので直接Prize に結びつくので、Prize を獲りたいという野心を抱いている人は特にじっくり読んで下さい。このCHAPTERで言うジャッジとは関東の著名な大会(?CHAPTER 5)でジャッジをしている人たちと定義しておきます。というのはそれらの大会ではジャッジをする人が決まっていて、同じ人がいくつもの大会で毎回ジャッジをしているという現状があり、それゆえ過去の入賞スピーチからジャッジ基準が比較的明確に判断されるからです(なお、その判断は私の主観によるものなので実際のものと多少の食い違いがあるかもしれません。このマニュアルは前述のように“分析結果”なのです)。付け加えておくと、その他数多くの大会ではジャッジ基準はバラバラで時々とんでもないスピーチが入賞したりすることもあります。しかしバラバラといっても「説得力の6大要素」の各々へのウエイトの置き方が大会・ジャッジによって違う(下記参照)ということであって、それを理解して読んでもらえればそういった“その他数多くの大会”への応用も可能です。

 ※「ウエイトの置き方が違う」って?
例えばある大会ではlogic がしっかりしていればoriginality がなくても優勝したり、またある大会では最もoriginality があるスピーチが英語力を問わず優勝したりします。deliveryが優れているだけで優勝できる大会もあります。どの大会でもジャッジペーパーがあり、その配点を基準として採点されるのですが大会によってはほとんどジャッジペーパーの配点が無視されることもあります。バランスのとれたスピーチならどの大会でもある程度評価されるのですが入賞できるかどうかはジャッジの主観にかかってきます。このCHAPTERでいう「関東」のジャッジも主観で評価することには違いありませんが、毎回同じ人なので一定のかなり明確な基準が決まっています。彼らはスピーチ大会でジャッジを何十回と経験しておりジャッジのプロともいえますが、だからといって彼らの基準が絶対であるというわけではありません。しかし少なくとも、彼らの基準を満たせば彼らがジャッジとなる日本最高峰の大会で入賞できるといえるでしょう。


1.LOGIC
ジャッジそしてaudienceはlogic をどのように捉えるのでしょうか。以下に長々と説明するように「logic が通っている」という言葉は非常に重みを持つのですが、1度しかスピーチを聞くことのできないaudienceがlogic の弱点を見出すのは至難の技ではないでしょうか。よほどねじれたlogic でない限り多くのaudienceはふ〜んと聞き流してしまうでしょう(Dis・Deb セクの人ならいとも簡単に見つけてしまうかもしれませんが)。だからそういった受身のaudienceだけを対象にスピーチをするならlogic はあまり重要視する必要はないかもしれません。しかしprize を獲りたいならジャッジの存在を考慮に入れなければなりません。ジャッジは全員がスピーチ経験者で、数え切れないほどのスピーチを目にしてきた人たちです。中にはDeb セク出身の強者もいます。一筋縄ではいかないでしょう。このように、logic に関してaudienceとジャッジの観点の差はその見る目の鋭さにあるといえます。ここではその鋭い目を持つジャッジの視点にフォーカスしてlogic を考えてみましょう。なおlogic は厳密な意味ではlogicality(論理性・いわゆる「ロジック」)とoriginality of logic(logic の独自性)とに分けられますが、後者はorigi-nalityの項に譲るとしてここではlogicalityのみについて説明していきたいと思います。 

A.LOGICとは
ここでもう一度logic (logicality)という言葉の定義を「logical である」という形容詞に置き換えて行ってみたいと思います。
    「logical である」とは

     (1)論理が首尾一貫している
     (2)しっかり裏付けされている
     (3)明確に説明されている
     (4)反対意見・disadvantage(不利益)にも言及しそれを踏まえている
     (5)practicalityがある(assertion・solution・suggestion が実行可能である)

前述のlogic の定義に3点加わりましたが、それらはlogic そのものというよりもlogic を補するための要素だと言えます。ここではその5つの点を一つ一つ検討していくことにします。

(1)論理が首尾一貫している
スピーチに一本の筋が通っていて、それに余計なものがついていないかということです。「一本の筋が通っているか」というのは具体的にはproblem-harm-cause-solution (Problem-Solving type の場合)という因果関係が認められるかどうかということで、専門用語でいえば、linkage のことです。またsolution・suggestion・assertionのworkability (sol.・sug.・ass.によって本当に問題が解決されるかということ)も含みます。「余計なものがついていないか」というのは、1つのスピーチの中で2つの主張があったり、主張とは論理的に関係ないことに言及したりしていないかということです。それはしばしば日本の新聞のコラム等に見られるもので、例えば日本文化の話からいつの間にか政治腐敗の話になっているコラムを見たことがありませんか(実際にあったものです)。日本語ではそういった論理の飛躍や無駄もしばしば許されますが、英語、特に時間制限のあるスピーチにおいては主張をわかりにくくし、少なくと
も説得性に関してはマイナスポイントとなります。以下、例を挙げて「一本の筋が通っている・か」「余計なものがついていないか」という2点についてもう少し詳しく見ていきましょう。

   一本の筋が通っているか

    ☆GOOD☆
problem   多くの森林が伐採されている
harm    緑の消滅で酸素が減ってしまう
cause    人間が木材を浪費するから
solution  木を使うのをやめよう

これはやや極端な例ですがP-H-C-S の明確な因果関係が見られます。木を使わない→森林伐採ストップというworkabilityも満たしていると言えるでしょう。“一本の筋が通っている”という意味では合格点です。
      

   余計なものがついていないか

ここでは良い例は挙げません。悪い例から余計な部分を取り除いたものだと考えて下さい。

    ☆BAD☆
      problem   老人が孤独な思いをしている

      harm    老人の自殺が多い

      cause    1.核家族化の進行により一人暮らしの老人が増加
            2.社会の中で老人の果たす役割がない

      solution  老人のできるボランティア活動を推進しよう(老人の新たな役割の創造)


このchart はそれほど問題あるものとは言い切れませんが、cause 1に対するsolutionがなくややもの足りません。核家族化を食い止めるsolutionを別に提示するのがベストだと思われますが実際問題として難しい話です。ここではcause 1を出さないほうが流れがすっきりして良いでしょう。このようにcause を出しておいてsolutionを示さないというミスはしばしば上級者にも見られるので特に注意しましょう(スピーチの内容によっては許されるときもある?CHAPTER 5)。


    ☆BAD☆
      problem   エイズに関する知識が国民に浸透していない

      harm    1.エイズ患者がさらに増加
            2.エイズ患者に対する偏見がある

      cause    自分とは関係ない、という態度

      solution  1.エイズに関心を持とう
            2.エイズ患者に偏見を持つのはやめよう

このchart も一見しっかりしているように思えますが、実は大きな落とし穴があります。このトピックでスピーチをつくった人なら良くわかると思いますがエイズというトピックにはたくさんの論点があり上記のチャートはそれをすべて満たそうとしたものです。これが悪いとは言い切れませんが7分という時間の制約上、水かけ論になってしまう可能性が高いといえます。このように複雑なトピックを扱うときはポイントの絞りこみが大切です。このチャートでどこが余分と言えるところはありませんが、このチャートをもとに3本くらいスピーチができるのではないでしょうか。つまり主張が3つくらいありそうだということです。以下に上記のチャートがどのようなポイントに分けられるか参考例として載せておきます。


      例1)
        problem  エイズに関する知識が国民に浸透していない

        harm   エイズ患者がさらに増加

        cause   情報量の不足

        solution 政府はエイズのことをもっとPRすべき


      例2)
        problem  エイズ患者に対する偏見がある

        harm   エイズ患者の人権侵害

        cause   エイズについて我々が無知であるから

        solution エイズについてもっと知ろう


      例3)
        Under Status Quo エイズに対して、自分は関係ないという態度をとる人が多い

        Analysis     エイズの危険性・真実を知らないから?危険性・真実の説明

        Ideal Situation  エイズの危険性・真実についてもっと関心を持つ

        Suggestion    1心当たりのある人はエイズの検査を受けよう
                 2エイズの正しい知識を得よう

以上参考例を3つあげましたが、これらは今までにつくられたエイズのスピーチのlogicをくっつけたり離したりしたものでやや強引なところもあります。ここで言いたいのはポイントを絞りこむことの意義なので細かいことは気にしないように。なおエイズのスピーチはポイントを絞り切れていないものが多いのにかかわらず、ある程度ジャッジから評価されているという現状がありますがそれには2つの理由が考えられます。まずエイズというトピックがジャッジ受けするトピックであること、そして資料が多いため最新の情報で裏付けがしっかりしたものが多いという理由からです。ジャッジが評価したスピーチ(prize を獲ったスピーチ)をもって「余計なものがついている」と言うのは言い過ぎかもしれません。しかし、ポイントを絞りこむと、より深く分析する余裕ができlogic をさらに突き詰めることができるという点でポイントを絞りこんでいないスピーチより有利だといえます。もっとも、トピックについてあり余る最新情報を持っている場合などはポイントを絞りこまないほうがよいこともあります。また、トピックを絞り込むことによってsignificanceが小さくなるような場合も同じです。結論として言っておくと、一般的にはポイントは絞りこんだ方がジャッジの評価は良くなるが、トピックによっては例外もありうるということです(特にそれまでだれも扱わなかったトピックが例外となります)。

その他「余計なものがついている」悪例として多いのはP-H-C-S などの型に強引にあてはめようとして必要ないことに言及してしまうという例です。例えば、「韓国人が日本の大学に入れない」というproblem で、harmを強引に考えて「日本が韓国人に嫌われてしまう」としても一応筋は通りますが、harmはむしろproblem それ自体と言うべきで、上記のようにすると取ってつけたような感じが否めません。Pro-Sol タイプのスピーチだからといってProblem以下4つの要素がすべて必要であるというわけではないのです。内容によってはproblemとsolutionしかないようなスピーチも認められるのです。必要ないと思った部分は大胆にカットすることも重要だということを心に留めておきましょう。

以上「論理が首尾一貫している」ことの意味を2つの基準で説明してきましたがやや例が強引に思えたかもしれません。というのはすべての例でlogical であるための5つの要素のうちここで関係のない4つをすべて無視したからです。これからの残り4点の説明でも関係ないものは無視していくので、かなり強引な例も出てくると思いますが、あまり気にせず読み進めてください。なお、この「論理が首尾一貫している」かどうかというのはlogic のバックボーンととしてlogic の核となるものです。折れてしまわないように慎重に検討してください。


(2)しっかり裏付けされている
英語では“well-supported”という言葉で置き換えられます。裏付け(証明・サポート)には大まかにexample 、fact、data、quotation 、argument、opinion という6つの方法がありますが、その裏づけとしての効果は以下の2つの基準によって判断できます。

基準1:その裏付けが、客観的・一般的に受け入れられるものであるかどうか
基準2:その裏付けが、claim (下記参照)を満たすものであるか


※基準2は「warrant があるか」という言葉で言い換えられます(詳しくはdis セク員に聞いてください)。

「しっかり裏付けされている」スピーチをつくるためには客観的・一般的に受け入れられない(下記参照)すべてのclaim に裏付けが必要だと言えます。それでは、上記の2つの基準に基づいてそれぞれ検討していきましょう。

※CLAIM
“主張”と訳されます。各スピーチに1つしかないassertion と異なり、各裏付けから導き出されるideaのことです。裏付けのないclaim もありますがそれはclaim がfact(後述します)になっているかあるいはスピーカーの主観のみに基づいたideaであるかのどちらかです。後者は独りよがりとかサポート不足と呼ばれる対象になるので注意しましょう。

       ex. 「この1週間で3件もの交通事故を見た」(裏付け)
         「交通事故が多い」(claim )

         「外国人不法労働者は貧困にあえいでいる」(裏付け)
         「彼らは窃盗を起こしやすい」(claim )

         「白書によると女性は生涯に1.51人しか子供を産まない」(裏付け)
         「子供の数が減っている」(claim )


客観的・一般的に受け入れられないclaim とはすなわち常識に照らし合わせて受け入れられないことを述べているclaim (ex.1)を指します。その裏返し、つまり常識的・一般的に認められる事柄を述べたものがfact(ex.2)と呼ばれます。
       
       ex.1「タイでは物価が高い」
          「ロシアは自由な国だ」
          「エイズは治る病気だ」
          「かすり傷が死に至ることもある」


       ex.2「日本では物価が高い」
          「アメリカは自由な国だ」
          「エイズはホモの人がかかりやすい」
          「ガンの死亡率は高い」


★EXAMPLE

具体的事実・事件・出来事・体験談などの例のことです。factの一種とも考えられますがその違いは特定の具体的な例を用いる点にあります。example は具体的なもの(実際にあるもの・起こったこと)であるだけに客観的・一般的に受け入れられないとは誰も言うことはできませんが「宝くじ1億円当たった」とか「誰かに殺されそうになった」というような極端な例は何らかの方法で証明しない限りは「本当に?」ということになりかねないので注意しましょう。もっとも大抵のものは許されるので、事件・出来事などに関しては自分で「創作」することも可能です。ただし外国の政治制度・歴史上の事件などについて言及する場合など客観的事実を述べる場合は絶対に嘘はだめです。これらのポイントをおさえておけば基準1はあまり気にすることはないでしょう。問題は基準2です。上の例を用いると、「宝くじ1億円当たった」というのは百歩譲って許されるにしても「だから宝くじを買えば皆大富豪になれる」(claim )というのはまず誰も信じてはくれないでしょう。そもそも1つのexampleからclaim を導き出すのはかなり無理があり、まず客観的に受け入れられるclaim (factといえます)があって、そしてexample が続くのが普通です(あるいはその逆)。そういった場合のexample の役目は裏付けというよりもclaim をジャッジ・audienceにvisualize させることにあるといえます。だからexample を用いるときはclaim に客観性を持たせfactとするか、あるいは他の方法で(dataなど)さらなる裏付けが必要です。ただclaim によってはdataなどがなくexample による裏付けしかできない場合があります。そのようなときは1つのclaim に対するexample を複数出すことによってclaim を客観的なものにすることも可能です(あくまでも「可能」ということであって実際にclaim を客観化することができるかどうかは個々のclaim ・example 次第です)。ただし外国の政治制度などはこの基準2の説明の例外に当たるものです。しばしばideal situation の例として用いられており裏付けというべき性格のものではありません。このような場合問題となるのはそのideal situationが実際に実現可能かというpracticalityに関わってくるのでここでは説明を省略します。

例1)I am sorry to say that I think they come to juku not to study, but to play.What they usually talk about is boyfriends and girlfriends, games and so on.For example, “Hello, I saw Mike's boyfriend today." “Say, how about going to see fireworks now?" Of course, they talk in Japanese like this : “NENENE!HANABIO MINI IKAHEN?"                 “What Is education"

下線部がclaim 、そのあとにexample が続いています。factととれなくもないですが、いずれにせよ裏付けとvisualize の2つの役割を果たしており効果的であるといえます。

例2)Suppose there was a manual which said you should dislike certain types of people? What if it said the world would be better without them?

   Once there was such a manual. Its title was “Mein Kampf" written by Adolf Hitler. It led to the Holocaust in which millions died.  “A THINKING REED"

前半がclaim 、後半がexample です。example は歴史的事実が使われています。claim は疑問文となっていますが反語的にとらえれば良いと思われます。このexample も裏付けとvisualize の2つの役割を担っています。


例3)Secondly, even for those who has actually commited crimes, revealing their names is a far greater punishment than what the laws of our nation demand.

Here is an example. There was a fireman who was arrested for drunken driving when he was not on duty. The next day his name appeared in a newspaper. If it hadn't been in there, he would simply have had to pay a fine and have his driver's license suspended. But his boss saw the article and told him to resign. Since then he hasn't been able to get a proper job. This is far beyond what the law calls for. A little newspaper article changed his whole life. If a drunken driver has to suffer this much,what it must be like for robbers or murderers who have completed their sentences and trying to start new lives?
                                  “Master or Servant"

前半がclaim 、後半がexample です。裏付けとしてはこれだけでは力不足ですがexampleのあとにargument(点線部)が続きexample の補足をしています。


    例4)This may sound quite radical and impossible, but it isn't. In fact, this system is already at work in Sweden and partially in Finland. In Sweden no names of ordinary citizens are revealed, unless it is thought to be in the public interest ; for example, the names of ministers, officials of high rank, and so forth.                  “Master or Servant"

これは裏付けとideal situation の両方を兼ねた例だといえます。非常に効果的だと言えるでしょう。


example については以上ですが、example の役割というのは、前述の通り主にジャッジ・audienceにclaim をisualize させることにあり、logic の裏付けとしてexample を多用するのは避けたほうが良いでしょう。ただ、dataによる裏付けが難しいとされているvalue スピーチを作るときには助け船となってくれます。普通のsocialトピックを扱ったスピーチでは特にintroduction・ending でよく用いられるようです。なお初心者はしばしばexample を拡大解釈する傾向があるので基準2については特に注意してください(?前述の宝くじの例)。



★FACT
factはclaim を裏付けするために客観的・一般的な事実を述べるものです。常識的に受け入れられないものはfactと言えないと前述しましたが、本当に事実であるのならfactとして認められます。ただしそういう場合は他の裏付けでそのfactを証明しておいたほうが良いでしょう。例えば「水道水を飲んだら死ぬかもしれない」というのはfactと言えることなのですが可能性がきわめて低く常識的には受け入れられないので、発ガン物質の存在などを証明しなければなりません。このような特殊な例を除けば本来客観的であるはずのfactはすべて基準1をクリアすると思われます。基準1を満たさない限りはfactとはいえないのです。基準2についてはfactの中身次第ですがfactは普通短いものなので比較的容易に判断できると思われます。factの応用編としてargumentがありそれはしばしば長いもので基準1・2共に判断が難しくなります。その点についてはargumentの説明で触れることにします。最後にfactの例をいくつか挙げておくので参考にしてください。


例1)
AIDS, the most fearful infectious desease in the world, is now rampant all over the world.
                               “Wicked bowler-Who is it?"

Now the notification of cancer has become a hot topic in Japan.
                               “OUT OF THE PASSIVE WAY"

In Japan, computer has become very popular, and seem never to stop its prevailing not only in

business world but also our daily life.
                                 “Keep Humane"

誰もが知っている事実でありfactの典型的な例であるといえます。


例2)
Children are not happy to see parents fighting.  “Diagram for Happiness"

Once we die, we can never come to life again.  “Let Us Look At The Sunset"

Every culture has its advantages and disadvantages. “Rainbow-Colored Sheep"

これらは事実というより常識といえるでしょう。たとえ意識していなくても知らず知らずのうちにこのような形でみんなfactを利用したことがあると思います。


★DATA

dataとは客観的事実に基づいた数字による統計・資料などのことです。dataというのは客観的に聞こえますがジャッジの目から見るとそうとは言い切れないようです。dataを用いる際は出典と日付(いつのdataであるか)を明確にしなければほとんどのジャッジに疑われます。また、誰も聞いたことのない本や雑誌からのdataや古いものは避けたほうが無難です。自分自身で友達に聞いたアンケートなどもないよりましですが、あまり客観性があるとはいえません。とはいえ、そもそもdataというのは客観的なものなので基準1であまり困ることはないでしょう。次に基準2ですがこの基準がなかなかやっかいです。たとえば「去年交通事故死者が12、000人いた」(data)?「交通事故死者が多い」(claim )というのはジャッジによっては「なぜ多いと言えるのか」と疑問に思うかもしれません。このdataを用いるなら、史上2番目に多かった」などの付随的説明を施せば「なるほど」とうなづいてくれるでしょう。特にclaim で多い・少ない、高い・低いなどの形容詞を用いる際に注意が必要で、そのようなときは比較(過去・外国との比較など)やillustration(例えば「45分間に1人の人が死んでいる」)によってclaim を補足しておいたほうが良いでしょう。

例1)
What do you think of the patients in a mental hospital who have a mental illness? It seems to me that most of you regard them as madmen or people who are too dangerous to get to know better. In effect as many as 360,000 patients are kept in mental institutions, completely separated from society.
                          “Love For Everybody"

例2)
In the fiscal year 1991, there were 314 cases in which foreign nationals failed to pay their medical bills. The grand total came out to be about 37 millon yen, according to a Kanagawa Medical association survey. This is only for the Kanagawa prefecture. The estimated amount of unpaid medical bills across the nation is more than 200 million yen each year. “A WAY OUT OF A VICIOUS CIRCLE"

例1は最後の1文だけがdataなのに対し例2はすべてがdataとなっています。例1はdataの出典に触れられておらずあまり好ましいとはいえません。例2は3つのデータを提示することにより、説得力を増しています。


★QUOTATION

quotation というのは格言や名言、その他文学作品・映画などからの引用のことです。quotationを用いる際は、基準1についてはその引用の意味するところが常識的なことなら差し支えないでしょう。欲を言えばあまりにメジャーなもの(「時は金なり」など)は避けたほうがよく、やむを得ず使うにしてもサラっと触れておく程度にしたほうがoriginality を損なわないという意味で無難であるといえます(この点はoriginality の項で説明します)。もちろんquotation の客観性そのものはメジャーなものでもマイナーなものでも大差はなく、客観性の基準となるのは常識的に受け入れられるものであるかどうかということです。基準2に関してもあまり気にする必要はないと思われますが時々quotation を拡大解釈する人がいるのでその点だけ気をつけましょう。また同種・異種にかかわらずquotation は1つのスピーチに最高2〜3個に留めておくべきで、あまり多用すると「くどい」というイメージをジャッジに抱かせかねないので注意してください(例えばことわざを5つも6つも使ったりしたらaudienceも飽き飽きしてきます)。なおquotation には裏付けと同時にrhetoric

を引き立たせる役割もあり(それは、originality へとつながります)、後者のみを意識して使われることも多いようです。quotation を用いるときは何のためのquotation かということを考えればより効果的に使えるのではないでしょうか。



例1)
Let us reach for the rainbow, and you will find your destiny-your land-your   goal-yourself. Let us listen, feel our hearts. And you will find.
           SOMEWHERE OVER THE RAINBOW BLUEBIRDS FLY,
           BIRDS FLY OVER THE RAINBOW, WHY THEN OH WHY CAN'T I?
                                   “OVER THE RAINBOW"

後半が「オズの魔法使い」の挿入歌(主題歌?)からの引用です。直接のclaim となる文はありませんが、このスピーチの主張「夢を持とう」にマッチした引用ではないでしょうか。夢=BLUEBIRDS というたとえになっていることはわかりましたか?この部分はスピーチのendingになっており本番ではスピーカーがその美しい声で歌ってくれました。私は実際にこのスピーチを見る機会があったのですが何とも言えない余韻が残ったのを覚えています。この引用は裏付けというよりも余韻を残す役割をしておりrhetoricのテクニックだと言えるでしょう。


例2)
There is a proverb which states, “Prevention is better than cure." We must prevent this desease from spreading. We must not let our next generation be“computerlized". In order to keep the “human society", we must keep humane.
                             “Keep Humane"

ことわざの引用が使われています。メジャーなものでありあまり効果的とは言えませんが主張を軽く裏付けしているだけなので使い方には問題ないでしょう。


例3)
There is an English proverb,“Fire is a good servant, but a bad master,"meaning that fire under control is very useful, but when out of control it can cause enormous damage.

In a way, freedom of the press is similar to fire. The Japanese people gained freedom of the press after World War U, and when we think about the mis-information during the war, we are so lucky now to have such a strong servant for our society.

At times however, I feel that this servant has become a terrible master.

“Master or Servant"

このことわざを知っている人はあまりいないのではないでしょうか。そのようなマイナーなことわざをうまく使っており、非常に効果的です。この引用もrhetoric(メタファー)のために使われているといえるでしょう。なおこのあとには宮崎勤とその家族の例が挙げられており、火が「恐ろしい主人」になる様子が説明されています。





このマニュアルのためにいろいろとquotation を探しましたが、quotation をlogic の直接の裏付けとすることは難しいというのが率直な感想です。実際過去の入賞スピーチのquotationはrhetoricのために用いられているものが多く裏付けとしてのquotation はほとんどありませんでした。しかしrhetoricというのはそのスピーチの説得力に結びつくものでrhetoric のために用いられたquotation が説得力に貢献していることには疑う余地はありません。もしlogic の裏付けとしてquotation を用いる場合はその効果を十分に考える必要があるといえるでしょう。originality の項でも説明してあるので参考にしてください。 


★ARGUMENT

argumentは裏付けのもっとも高等なテクニックであるといえます。具体的にはclaim とfactを何重にも組み合わせ、そこから1つの大きなclaim を導き出すというものです。factの応用編と考えてもらえばよいでしょう。「雷は危険だ?自然は恐ろしい?自然を破壊しよう」という屁理屈にしか聞こえないような論理展開も1つのargumentといえます。基準1に関してみるとargumentは1つでも非常識なclaim があるとそれは全く受け入れられないものになってしまいます。上の例では最後のclaim が非常識なもので受け入れられません。また、基準2については各claim ・fact間のつながりが客観性と同じくらい大切です。上の例では表面的なつながりはあるといえます。ここまで説明して気づいている人もいると思いますが、argumentはスピーチのlogic chartを考える際にまず用いるもので、その意味でlogic の基本であるといえます。argumentに他の裏付けを加えて発展させ、さらにintroduction・conclusion(ending) をくっつけるとflow chartの出来上がりです。もっともここでいうargumentはもっと細かい段階のもので、例えばcause を説明するために用いるとか、solutionのworkability を説明したりする場合に用います。最初の部分でもっとも高等なテクニックであるといいましたが、難しさは常識(客観的なこと・fact)をいかに自分の主観的な意見にすり替えるかという点にあり、argumentをうまく使いこなせるようになれば、他の裏付けを最小限にしてスピーチをつくることができます。

例1)
But are the patients really “Outcasts"? The answer is NO. Death is inevitable for all living things. Our life is as limited as a piece of candle. When our candle was lit, the countdown to death was already begun.Candles may be in differnt shapes and sizes, but we are all burning our lives each moment. All life has a limit.
                            “OUT OF THE PASSIVE WAY"

(ガン告知された)患者も我々と同じである、というclaim を生命をろうそくにたとえながら説明しています。メタファーをargumentにうまく取り入れた例です。

例2)
Today, there are more returnees than ever before, far more than there were when I was a student but ten years ago. And at a time when the buzz words are internationalization, globalization, and borderless world, who can better help Japan than returnees.
                           “Rendezvous with Destiny"

帰国子女が日本を救う、というclaim をfactを2つ使って裏付けしています。比較的簡素なargumentと言えるでしょう。

例3)
In this “fake" world, where everyone moves according only to their own   personal gains, something important, essential, is being ignored. In this world filled with material goods, people cannot help but consider human relations as just one part of material wealth. We therefore misjudge having "many" of everything, even friends, as one form of distinguished wealth.
                              “IS IT TOO LATE?"

表面的な人付き合いのcause を分析したargumentです。argumentはこのように精神的な問題を分析するときに頻繁に用いられるようです。


★OPINION

opinion というのは権威のある人、例えば教授や専門家、著名人などが述べた意見や見解のことです。特にvalue スピーチでよく用いられるものですが、quotation と同じであまり多く使いすぎるとくどくなります。最高でも2つくらいにしておきましょう。基準1については誰の意見かというのがまず問題となります。どんなに偉い人でも「どうしてお前がそんなこと言えるんだ?」とジャッジに疑われるような人物ではだめです。たとえば、医学部の教授が「日本の景気は回復に向かう」といっても信憑性がありません。もっとも無難なのがその道の専門家ですが、スピーチの中ではきちんと肩書きを付けておきましょう。絶対的権威者(アメリカ大統領、ローマ教皇など)の意見なら大抵のものは受け入れられると思いますが、結局はその内容によってスピーチで使えるかどうかが決まります。次に内容の客観性については他の裏付けよりもopinion の客観性は受け入れられる範囲が広いといえます。客観的・常識的でない意見であっても非常識とまではいかないものであれば受け入れられたりもします。例えば「動物の命は人の命と同じくらい大切だ」という権威者の意見はある程度受け入れられるものだと言えるでしょう。どの程度までだったら使えるのか明確に線を引くことはできませんが、第三者に見せて3人のうち1人以上が異議を唱えるようなものは使わないほうがいいでしょう。次に基準2についてはopinion をそのまま解釈したclaim であるなら問題ありませんし、実際、opinion を用いるときはほとんどがopinion を要約したようなclaim になっていることが多いようです。ずれた解釈をする人がたまにいますが、logic を弱くしてしまうだけなのでopinion はそのまま解釈するのが無難であり基本です。

例1)
According to an article in the Asahi newspaper on september 7th '93, the famous Japanese writer Yasutaka Tsutsui decided to give up being a writer.This is due to the fact one of his works was singled out as strengthening discrimination against epilepsy, and hence banned from high school text books. Mr. Tsutsui feels that it is infringement on freedom of Expression, in this case in even novels. He said, “Our whole culture reacts excessively toward one word `discrimination'. It's wrong."
                         “The Daybreak of Expression"

スピーカー自身の説明の中にははっきりしたclaim はなく、opinion の部分がそのままclaim となっています。このような用法はquotation でよく見られるものです。



例2)
Talking about this relationship, Kazuko Watanabe, an instructor at Kyoto Sangyo University stated that the age of so-called `Radical Feminism' is over, but the problem is far from being over. We have entered a new age where the issue in equal partnership, is not in demanding equal rights, since we have been already given them lawfully. It is not in accusing men, which only seems to aggravate the present situation. Women are not the people who have fallen behind men in progress any more. They have progressed, and live freely as well as independently.
                            “SOCIETY OF YIN-YANG"

opinion をもとにargumentへと発展させています。自分の言葉でここまで言える文章力に驚かされます。


opinion というのは先程述べたようにvalue スピーチで主に用いられますがvalue スピーチの少ない現在のスピーチ界ではopinion の使用例も大変少ないようです。それだけvalue スピーチをつくるのが難しいということだと思いますが、例2のスピーチが大隈杯で優勝したことからもわかるように、value スピーチをうまくつくることができれば極端に良い評価を得ることができるといえます。難しいとは思いますが一度じっくりとチャレンジしてみるのも良いのではないでしょうか。opinion はvalue speechでは強力な裏付けとなってくれるので、もしvalue スピーチをつくる機会があればぜひ使ってみてください。ただし今までに述べたポイントはしっかりおさえておいてください。


以上、裏付けの6つの方法についてそれぞれ説明してきましたが、実際のスピーチではこれら6つがさまざまに組み合わされて用いられスピーチに説得力を与えています。1つ気づいた点を言えば、socialスピーチではdataが多用されvalue スピーチではargument・opinion がよく用いられるようです。example ・quotation はどのスピーチでもまんべんなく用いられています。最後に「しっかり裏付けされている」スピーチを端的に言うと、「出てくるすべてのclaimに対して客観的で、claim を満たす裏付けが施されている」スピーチとなるのではないでしょうか。


(3)明確に説明されている
簡単に言えばわかりやすいかどうかということです。しかし一言「わかりやすい」といってもさまざまな意味があり、単語のわかりやすさ、構成のわかりやすさなどいろいろな段階に分けて考えられると思います。ここでは語句、sentence、paragraph 、全体の構成という4段階に分けて「明確に説明されている=わかりやすい」とはどういうことか探っていきましょう。なお明確さというのは広い意味で具体性をも含意しますが具体性の役割についてはsignificanceの項で考えていきます。またここではlogic のわかりやすさというよりむしろスピーチの原稿そのもののわかりやすさにフォーカスします。logic がわかりやすいというのは「(1)論理が首尾一貫している」こととほぼ同じことだと思われるのでここでの説明は必要ないでしょう。実際、論理が首尾一貫していればlogic はわかりやすいと考えて差し支えありません。

★語句のわかりやすさ

語句のわかりやすさには、難易度と具体性という2つのポイントがあると思われますが、今述べた通り具体性に関してはsignificanceの項で説明します。よってここでは語句の難易度を語句のわかりやすさと定義して考えていきます。そのように定義した場合、わかりやすさの意味はジャッジとaudienceで全く違うものになってしまうのでaudienceとジャッジを分けて説明したいと思います。

まずaudienceにとってのわかりやすさとは言うまでもなくaudienceのボキャブラリーの範囲内の語句であるかということです。いくら基本的な単語やイディオムであってもaudienceが知らないものを多用していればわかりにくいという印象を与えるでしょう。だからもしすべてのaudienceにスピーチを完全に理解してもらいたいのならもっともボキャブラリーの少ないaudienceに合わせる必要があります。おそらく「センター試験より1ランク下」程度の語彙レベルではないでしょうか。少なくとも自分の知らない語句は使うべきではありません。1・2回生の中にはaudienceにとってわかりやすいスピーチをつくりたいと思っている人が多いと思いますが、本当にそれを実行するのなら使えるボキャブラリーの範囲はかなり限定されてしまうことを覚悟しておきましょう。Native Speakerなら少ないボキャブラリーでさまざまな表現ができるのですが、日本人にそれを真似することは大変難しいことです。また彼らがそのようにいろいろな表現ができるのはイディオムを多く用いるからで、それらのイディオムは簡単な単語で構成されていても難解な意味を持つものも多く、ボキャブラリーの少ないaudienceには理解できないのではないでしょうか。もっとも、大会のレベルが高くなればなるほどaudienceのボキャブラリーレベルも上がるので、ハイレベルの大会ではより多くのボキャブラリーを用いてスピーチをつくることができるでしょう。インナーのオラコンなどはボキャブラリーが少ない一回生も多くいるので使えるボキャブラリーはより少なくなってしまうでしょう。

次にジャッジにとってのわかりやすさですが、彼らにはこれだけのボキャブラリーがあるというはっきりした数字を示すことはできません。いくらNative Speakerでも、数十万あるといわれる英単語の中で知っているのはわずか数万語に過ぎません。だから辞書に載っていたからジャッジは理解できるというのは間違いです。audienceが理解できるボキャブラリーはほとんど備えているとはいえますが、日本人に知らない日本語があるように英語のNative Speaker が知らない英単語があるのは当然です。ではどのようにして彼らのボキャブラリー、彼らにとってのわかりやすさを測るのでしょうか。答えは意外とシンプルです。Nativeチェックを利用すれば良いのです。自分のあるだけのボキャブラリーを用いて、さらには英和・和英・英英辞典、シソーラス(類義語辞典)をも動員して作ったスピーチ(その時点でaudience のボキャブラリーは越えているでしょう)を信頼できるNative Speakerに見せてすべての語彙の難易度を文法などと同時にチェックしてもらうのです。難易度チェックに加えて口語的か文語的かというところまで見てもらえば完璧でしょう(一般的にスピーチでは口語表現を使うべきだといわれていますがスピーチに重みを持たせるためにわざと文語的表現を用いることがあります?rhetoricの項参照)。なおジャッジの知らない単語でも専門用語のように使わざるを得ないときがありますが、そんなときはその単語の説明を簡単な語句を用いて付け足しておけば問題ありません。「私はジャッジに理解してもらえればいい」という人なら上記のような方法でジャッジにとってわかりやすいスピーチは完成です。このようにしてつくられるスピーチは使われうる語彙範囲が広く、自分の言いたいことの細かいニュアンスも十分表現することが可能で、言いたいことを100 %伝えることができるでしょう。ただaudienceがほとんど理解できないスピーチになってしまう可能性は大きいといえます。

以上ジャッジ・audienceそれぞれにとってのわかりやすさについては理解してもらえたと思いますが、実際はほとんどのスピーカーはジャッジのボキャブラリーなど気にせず、audience 寄りの簡単なボキャブラリーを用いているようです。恐らく、自分のあまり多いとはいえないボキャブラリーをベースにしてつくった結果でしょう(中には豊富なボキャブラリーを持ちながらaudienceに理解してもらうためわざと簡単な語句ばかり使う人もいるでしょうが)。そのようなスピーチはジャッジもaudienceも一応理解してくれるのでわかりやすさはクリアするのですが別の意味で二つ問題があります。すなわち、audience寄りのボキャブラリーの少ないスピーチは1.ボキャブラリーの制限により自分の考えを十分に説明できていない、2.同じ語句の繰り返しが目立つ、可能性があり、そうなるとジャッジの目には良く映りません。「勝つ」ということにpriorityを置くならジャッジのボキャブラリーに合わせたほうが無難だと言えます。ジャッジに評価され、audienceにも理解してもらうというのが理想ですが、そのためには少ない語彙で多様な表現を強いられるためよほどの英語の達人でなければ難しいでしょう。イディオムを使えばいろいろと表現できますがaudienceに理解してもらうためにはそれさえ制限されてしまうのです。というわけで、辞書とEnglich Checkをフル活用すればprize に一歩近づくというのをここでの結論とします。なお'91 KESS(慶應)委員長の藤田さんは'93 のKESSAキャンプでのレクチャーで「スピーチの難しい単語がわからないのはaudienceの勉強不足のせいであってaud-ience が悪い」とおっしゃっていました。あなたはどう思いますか?


★SENTENCEのわかりやすさ(英作文のわかりやすさ)

センテンスのわかりやすさについては前のマニュアルで触れてありますがここではさらに詳しく考えてみましょう。センテンスのわかりやすさは2つの観点から見て取れます。すなわちセンテンスの長さと、センテンスの構造です。

センテンスの長さについては、長さにはvariety があったほうが良いというrhetoricのテクニックを無視すれば、短ければ短いほど良いといえます。これはわかりやすさを考えたとき当然のことなのですが、その当然のことができない人が多いようです。英訳したものが長いということは日本語も長いということなので、まず日本語を考える段階からセンテンスの長さを考えておくべきでしょう。実際日本語のスピーチでもセンテンスは短いほうがわかりやすいでしょう。もっともジャッジについては少々長いセンテンスでも構造が分かりやすければ理解してもらえるので、プライズのみにこだわる人はあまり気にしにしなくても良さそうです(ただそのわかりやすい構造というのが難しいので短いほうが無難)。具体的にどのように短くするのかと言えば、重文や複文を2文・3文に分解したり、節を句に改めたりする方法があります。1つのセンテンスに最高30words 程度を目安にすれば良いと思われます。

次に構造的な点について言うと、典型的な例として受動体の使用を避けるということがあげられます。というのは、英語は能動体中心の言語であり、日本語よりはるかに受動体を用いることが少ないからで、さらに受動体には文の構造を複雑にしてしまうというデメリットもあります。

この他にも英語と日本語には多くの構造上の違いがあり、英訳するときには十分注意が必要なのですが、ほとんどの人が勉強不足のために、知らず知らずのうちにNativeスピーカーにわかりにくい英訳をしていたり、自分が意味していることとは違う訳をしたりしています。日本語直訳でなければ良いかと言えばそうとも言い切れないのです。結局頼れるのはここでもNativeチェックということになります。十分に時間をかけてよりわかりやすいセンテンスにしてもらいましょう。もし自分自身でわかりやすいセンテンスを作りたいという人はせっせと英語の勉強に励んでください。それがBest Wayでしょう(英語の勉強の仕方については    CHAPTER 3で触れることにします)。

なお、英作文の前に日本語でスピーチを書くかどうかについては、最初から英語で書いたほうがより自然な表現になりやすいと思います。もっとも、ある程度の英語力・英作文力がないとかえって不自然になってしまうこともあるので、自信のない人はまず日本語で書く方が    良いかもしれません。


★PARAGRAPHのわかりやすさ

本論に入る前にまずパラグラフの定義をしておきましょう。Longman Dictionary of the English Languageによると、Paragraph ; a subdivision of a written composition that develops a single point or idea.... と説明されています。つまり1つのパラグラフは1つの中心になる主張とそれを支える文章でできています。それを念頭においてパラグラフのわかりやすさの説明に入っていきましょう。パラグラフを上のように定義するならパラグラフのわかりやすさというのは、1.1つの中心になる主張は明確か、2.その主張がわかりやすく説明されているかの2点に絞られるのではないでしょうか。ではそれぞれ考えていくことにしましょう。

[1つの中心になる主張は明確か]
「1つの明確な主張」というのはトピックセンテンス(そのパラグラフのmain idea を述べたセンテンス)という形で各パラグラフに1つあるものです。「1つの中心になる主張は明確か」という文を言い換えるなら、「1つのトピックセンテンスがはっきりと存在するか」と言い換えられます。トピックセンテンスを意識してパラグラフをつくっていれば問題ないようにも思えますが、実際どれがパラグラフのトピックセンテンス(主張)なのか第三者にもわかるようにしなければなりません(自分だけわかってもだめだということ)。そこで注意してほしいのは複数の異なるポイントを1つのパラグラフに含めないようにすることです。そうすると聴く人は何がポイントなのか分からず、その結果捉えどころのないパラグラフになってしまう可能性大です。もっとも同じパラグラフにポイントが複数あってもきちんとポイントごとに整理されていれば聴いている限りにおいて問題ありません。たとえば、There are two reasons. First〜, Second〜というふうに整理されていれば2つのポイントがあってもわかりやすいと思われます。ただ原稿を「読む」ときにはやはりポイントごとにパラグラフが分かれていたほうが読みやすいでしょう。またトピックセンテンスが複数あってもそれらが同じ内容を言い換えたものであるのなら全く問題はなく、むしろポイントがより明確となってわかりやすいと思われます。付け加えておくと、トピックセンテンスはパラグラフの最初に置くとよりわかりやすくなります。最後に置くのも悪くはありませんがド真ん中に置くとパラグラフがわかりにくくなる可能性が高いといえます。なお、トピックセンテンスが明示されないこともありますが、example やdataの提示に終わりトピックセンテンスが別のパラグラフにあるか、あるいはパラグラフの内容・スピーチの流れからそのパラグラフの主張が明らかである場合は問題ありません(それ以外のケースではわかりにくいパラグラフであるといえます)。とはいえトピックセンテンスはパラグラフに1つ必要なものと考えてもらって結構です。特に初心者は意識してトピックセンテンスをパラグラフに盛り込むようにして下さい。以下にいくつかパラグラフとトピックセンテンスの例を挙げておきます。

例1)
However, as rumors grow mighty based on these three factors, they may cause a great deal of harm to the personalities they deal with. Suppose there is a rumor that today's judge, and I are going out and are deeply in love with each other. People may enjoy passing this rumor about. But how about for him and me? If this rumor causes us to consider each other seriously and we truly come to love each other, Bingo!, I will be very happy about it. But if the rumor conversely discourages our relation and causes us not to talk each other, it is a great pity, isn't it?
                                    “She grows mighty"

下線部がトピックセンテンス、そのあとにexample で裏付けされています。 


例2)
Today, about one million 170 thousand Japanese are living overseas. They work hard and study to learn the native culture. But they are often criticized that they cannot teach about their mother land and their own culture although there is a growing interest in her. Don't you think it's
strange? Akihiko thinks it strange, wondering why the Japanese people don't pay attention to their traditional culture.
                              “Akihiko's Beloved Country"

現状を説明した上でその結論としてトピックセンテンスがあります。現状の説明ではargument が使われています。


例3)
There is a tendency in this society, not to accept anything that is foreign, or different. The hot discussion on Super 301 has been focused on this fact, and also the waves of unskilled foreign workers to Japan and their acceptance, is related to this. The cause of my mother's warning was this, too. Well, why this tendency? Simply because it is a homogeneous society, with black hairs and black eyes? The country has closed its doors to the outside world for more than 200 years. We are just not so used to something that is different.
                                    “THE BLACKBOX"

このパラグラフにはトピックセンテンスが2つありますが、ポイントが明確に分かれており問題ありません。Well〜以下でパラグラフを2つに分けることも可能でしょう。


上記の説明で「1つの中心になる主張は明確か」の意味は理解してもらえたと思いますが、実はこの説明は7割程度のパラグラフにしかあてはまらないもので多くの例外があります。その例外を説明するためにはパラグラフの種類・役割に触れておかなければなりません。次頁に前のマニュアルからパラグラフの4つの役割について引用します。それぞれ例を付け加えておきます。

a)the paragraph to show the speakers' thought or idea

このパラグラフはスピーチの中でもっとも重要で、いわゆるassertion (主張)を述べるパラグラフです。

例)
So, it is vital for us to know what kind of technology is being developed. We don't need to be specialists on these technologies, but we can read simply written books and articles on the new media. Then we will be able to think about how we can utilize them., how they can be abused, and what we should do in order to eliminate such possibilities.
                                “Two Possible Futures"

b)the paragraph to support the speakers' thought or idea

このパラグラフはスピーカーの主張したいことを裏付けし、聴衆にわかりやすく受入れやすいようにするためのパラグラフです。

例)
Nowadays , it is common in Japan to spend 7,500,000 yen on average on a wedding. 7,500,000yen! For the rich people like famous singers and TV celebrities, it may not be that expensive. However, for ordinary people who make up the majority of Japan's population, like you and me, it is a  ridiculous sum of money.
                                    “Budget or Bust"

c)the paragraph to join each one

2つのパラグラフをスムーズに連結したり、次のパラグラフを引き出すために使われるパラグラフです。

例)
Then what measures can be taken to abolish this discrimination, and also show the world that it can be done?
                                 “In a Different Light"

d)the paragraph to get interest from, or give impression to the audience

このパラグラフは聴き手の興味を引いたり、深い印象を与えたりするためのパラグラフです。特にスピーチのintroduction・conclusionでよく用いられます。 

例)
Sarah was such a sexy girl. She had a short tight skirt and low-cut T-shirt on. There were many drunkun men around her, dancing very seductively and kissing her. Suddenly, one man held her down on the pin-ball machine, and started to rape her. Many men watched it, as if it was a show. Sarah kept saying “NO", but couldn't resist, because she was so tiny. They were clapping hands, instigating other men to rape her.
                                     “The Accused"

     ※この他に用語の定義のためのパラグラフなどもあります。


前述の説明がほぼそのままあてはまるのはa・bの場合で、cの場合はほとんどあてはまらずdも例外となることがしばしばあります。cについてはただのつなぎのパラグラフに過ぎず、パラグラフの主張というものが含まれないからです。dはその目的がaudienceの関心を引き印象づけることにあり必ずしも主張を含む必要がないからです。もっともdでも2つのことに言及してはならないという原則があるのでそれは守って下さい。大変長くなってしまいましたが「1つの中心になる主張は明確か」の説明は以上です。


[主張がわかりやすく説明されているか]

「主張」とあるように主張のないパラグラフc・dには適用できない説明となります。cについては1センテンスないし2センテンスのパラグラフとなるのが通常でわかりやすさの説明は必要ないでしょう。dについては長いパラグラフになるときもありますがrhetoric能力によってわかりやすさが左右されることになります。rhetoricの項を参考にしてもらえばよいでしょう。ではそれらの例外を除いて本題に入ります。主張というのは前述の通りトピックセンテンスのことでパラグラフはトピックセンテンスとその説明という構成になっているのが普通です。ここでいう説明というのはいわゆる裏づけとなることがほとんどで、トピックセンテンス(claim )→裏付け(もしくはその逆)という公式にパラグラフの流れが沿っていればわかりやすさの第1段階はクリアです。第2段階として実際にその説明(裏付けの仕方)がわかりやすいものであるかということになりますが、この点については作文能力によるところが大きく特にこれといった公式はありません。もし自信がないなら他の人に見てもらえばよいでしょう(nativeチェックで見てもらってもよいと思います)。なお、ここではパラグラフはトピックセンテンスとその説明(裏付け)で構成されているといいましたがその説明の中に裏付け以外の要素が含まれることがあります。すなわち言葉の定義やつなぎのためのセンテンスなどです。これらに関してもパラグラフに違和感なくマッチしていれば問題はないでしょう。

以上でパラグラフのわかりやすさの説明は終わりです。難しく思われたかもしれませんがパラグラフの段階では日本語の作文の作り方と大差ありません。実際「主張とその説明」というのは作文のパラグラフの基本の型でもあるといえるでしょう。ただスピーチではその説明に裏付けが多用される(多用しなければlogical にならない)という点が違うだけです。自然とクリアしている人も多いのでここまでくどい説明は必要だったかどうかは疑問に思いますが「わかりやすさ」に自信のない人には参考になったのではないでしょうか。 


★全体の構成のわかりやすさ

全体の構成のわかりやすさをここでは「わかりやすいパラグラフが、わかりやすい順序で、わかりやすくつながっているか」と定義します。わかりやすいパラグラフについては既に説明済みなのでここでは「分かりやすい順序」と「わかりやすくつながっているか」について考察します。


[わかりやすい順序]

わかりやすい順序といってもピンとこないかもしれませんが、ベースとなるのはP→H→C→S の流れです。というのはその流れがジャッジ・audienceにとって一番理解しやすい流れだからです。例えば順序を変えてcause を最初に出してしまってもだれも理解できませんし、harmとcause をひっくり返すとproblem の深刻性がなかなか説明されずジャッジとしては“So what?"状態が長く続くことになります(なぜproblem が問題となるのかはharmが出されないとわかりにくい)。Comparative Advantage タイプ(以下、CAタイプ)のスピーチでも同じことが言えます。A.S.Q.→Suggestion という流れに従うのが普通です。ただしideal situationとturning point についてはスピーチによって位置が異なり、特にideal situationは前半にくるときもあれば後半にくるときもあります。スピーチの構成の仕方によって位置が異なってくるので自分で検討して下さい。実際上記のように型通りの流れになっていないスピーチも多くありますが、そういったスピーチの組み立て方に規則みたいなものは存在せず、経験によって学んでいくものなのでとりあえずは基本に則ったほうが無難だと言えます。どのスピーチにもあてはまる流れをあえて見出すならreasoning (主張する理由)→主張という流れではないでしょうか(まれに逆になる)。PS・CAタイプ以外のスピーチも存在しますがトピックが特殊な場合に限られるので実際に使うことはないと思います(前のマニュアルを参照して下さい)。最後に実際に自分のスピーチがわかりやすい順序で構成されているかをチェックする方法をお教えしましょう。それは各パラグラフのトピックセンテンスだけを抜き出して並べてみることです。これはパラグラフチャートと呼ばれるものですが第三者がそれを見てスピーチの流れをすぐに理解すれば合格といえるでしょう。先にパラグラフチャートをつくってから英訳に入ればその手間が省けてより効率的です。

[わかりやすくつながっているか]

パラグラフのつなぎ方というのは上級者でも悩みの種となることが多いのではないでしょうか。problem とcause をつなぐときは“What is the cause of this problem?"、cause とsolutionをつなぐときは“How can we solve it?"などの疑問文でつなぐのがポピュラーですがrhetoricの面から見るとこれらはあまりにもありふれていてできれば避けたい表現です。確かにわかりやすさの面では問題ないのですが稚拙なつなぎ方だと言えるでしょう。もちろんそういうつなぎの文なしにパラグラフが変わることも多いのですが、流れが急に変わるときなどはまず必要となります。以下につなぎの例をいくつか挙げておきましょう。

例1)
On the other hand, the recycling rate of aluminum cans is only 42%. Yes, about 60% is still thrown away after being used once.

We know that metal is hard to resolve by the force of nature. Especially, an aluminum can will remain as it is left for more than 500 years.
                             “Is It Really A Can Of Worms?"

前半と後半は別々のパラグラフです。後半の最初で金属という言葉を出すことで前半のアルミニウムの説明とつながりを持たせています。

例2)
This data show the fear of drug addiction. Once you try it , you will not be able to get out of it. If you try to get out, you may have to risk your own life. Also, crime involving drugs will certainly increase.

But how can we improve the present situation? You might say the solution to this problem is clear.                                  “Where is the Devil"

ベーシックなつなぎ方です。どうしても思いつかなければこのようなつなぎが無難でしょう。

例3)
Returnees are treated in a similar manner. They are Japanese, yet they are often looked upon warily, as if there was something not quite right about them ; i.e., they are not normal Japanese.

This situation is magnified in a Japanese company or other organizatiion. Let me present a scenario.

A newly recruited returnee is assigned to a certain department or ......
                              “Rendezvous with Destiny ”

真ん中がつなぎのためのパラグラフとなっています。なかなかしゃれたつなぎ方ではないでしょうか。


つなぎというのはlogic とは直接関係のないことです。しかし必要なところでつなぎがないと論理の飛躍とまではいかなくてもそのスピーチが非常にわかりにくいものになります(実際に上の例からつなぎを取ってもらえばわかると思います)。つなぎはわかりやすいスピーチには欠かせないものなのです。その他のパラグラフのつなぎ方としてポピュラーなのが接続詞を用いることです。もっともシンプルな方法ですが使い方を誤ると流れが違うものになってしまうこともあるので細心の注意が必要です。初心者には順接(and ・soなど)と逆接but ・yet など)の誤用がよく見られるので特に慎重に使用するようにして下さい。

以上「全体の構成のわかりやすさ」について説明しましたが、これらは基本というべきもので最低限クリアしておかなければならないことです。応用編としてはより複雑なlogic をいかにわかりやすく構成できるかということになりますがこの点については自分の経験から学んでいって下さい。


「明確に説明されているか」の説明は以上です。大変長くなってしまいましたが理解できていない人が多いようなので敢えて細かく説明しました。まあこれほどまでくどく説明する必要はなかったのかもしれませんが.....実際に自分だけの力でわかりやすいスピーチをつくるのは難しいかもしれませんが、人に何度も見てもらいチェックしてもらうことによってわかりやすいスピーチを作ることは可能です。特に日本語の段階(Logic・Flow Chart)ではだれでもよいので、できるだけ多くの人に見てもらうのが良いでしょう。10人の人が見てすぐに理解してくれるようなら合格です。ただ、人に見てもらう前にここまでの説明を応用してもらえばスピーチメーキングはよりスムーズに進むでしょう。英語に関係するわかりやすさについては前述の通りNativeスピーカーにじっくりとチェックしてもらって下さい。余談ですが「わかりやすいスピーチ」というのは常に私自身が心がけていたものでこの点については毎回のようにジャッジの人に評価してもらえました。このようになんらかのこだわりを持ってスピーチをつくればスピーチメーキングをより楽しむことができるのではないでしょうか。




(4)反対意見・DISADVANTAGEにも言及しそれを踏まえている
「DebateやDiscussionじゃないんだからそこまでしなくても...」と思う人がいるかもしれませんがこの点をクリアできていなかったためにprize を逃した人が1つの大会で最低1人はいます。prize 獲得をねらうのならもっとも重要でしかも見落としやすいポイントの1つであるといえるでしょう。audienceの立場から見ても自分の言いたいことだけ言って反対意見などに言及していないスピーチは独りよがりに聴こえます。なお、反対意見とDisadvantageというふうに分けてはいますが、そのスピーチにDisadvantageがあるから反対意見があるわけで両者は同質的なものだと言えます。一方反対意見とまではいかなくても異なるアプローチが考えら
れる場合があります。よってここでは反対意見(Disadvantage)と異なるアプローチという2つの視点に立って説明していきます。


★反対意見(DISADVANTAGE)

文字通りスピーチのassertion を真っ向から否定する意見です。多くの場合assertion から生じるisadvantage(以下、DA)の発生が反対意見の根拠となります。特にcontrovertialなトピックでしばしば問題となります。だからそういった意見が真っ二つに分かれるようなトピックを扱うときはDAを打ち消すか、あるいは自分の意見のadvantage (以下、AD)のほうがDAより大きいことを証明しなければなりません。例えば脳死、原発のようなトピックがあげられます。それではこの2つのトピックを使ってどのようなチャートができるか考えてみましょう。

例1)    problem   脳死体からの心臓移植ができない

       harm    多くの心臓病患者が死んでいる

       cause    脳死が認められていない

       solution  脳死を認めよう

このチャートでは脳死を認めることによるADにしか触れられておらず脳死者の家族の感情(DA)などに言及していません。一方的なスピーチだと言えます。


例2)    problem   原発が推進されている

       harm    事故が起これば日本中が放射能に汚染される

       cause    原発は安全だという神話がある?本当は危ない

       solution  原発を廃止しよう

原発問題にはいろいろな論点があり、このチャートはそれらの1つをピックアップしたものです。このチャートから生じるわかりやすいDAをあげるなら「原発を廃止したら電力需要が賄えなくなる」ことがあります。あまり深く考えずに資料がたくさんあるからという理由でこのトピックに飛びつく人がいますが、たった7分間のスピーチでカバーできるほど底の浅い問題ならとっくに解決されているはずです。原発賛成にしても反対にしてもすべての論点を押さえた上で結論へと導くのは7分間ではまず無理でしょう。特にジャッジにはDebater 出身の人もいるのでまず説得することはできません。専門的な問題なので知識のないudienceは説得できるかも知れませんが、自分の弱点(DA)を語らずに説得して自分自身満足できるでしょうか。ただし、原発賛成・反対という立場に立つのではなく「みんな無関心だからもっと考えよう」という流れならlogic の立て方次第でジャッジにも受け入れられるかもしれません。また、関東以外の大会ならジャッジによっては原発賛成・反対というアプローチでも勝てる可能性はありますが避けたほうが無難です。

これら2つの例からわかるのはcontroversial なトピックを扱うときは賛成・反対両方の意見を比較・吟味した上で結論を出さなければならないということです。実際ほとんどのスピーカーはそのようなアプローチを用いているのですがたいていはアナリシス不足に終わっています。ジャッジはスピーチのプロであると同時に時事問題のプロでもあるといえます(多くのスピーチを見ることによりさまざまな知識を蓄えており、しかも大学教授のようなインテリが多い)。そのようなジャッジが相手にするとなるとよほど深く分析して望まないとなかなか受け入れてもらえません。実際controversial なトピックでprize を獲る人はほとんどいないのです(ただし、成功すればインパクトは大きく、極端に高く評価されます)。そういったトピックでスピーチをつくろうとするなら以上の点を覚悟しておいて下さい。

以上controversial なトピックを扱うときの注意点について説明しました。次にそれ以外のトピックのスピーチに対する反対意見について考えてみましょう。controversial なトピックについてはassertion そのものが否定されることが多いのですが、それ以外ではsolution・suggestionが否定される対象になります。つまり総論賛成、各論反対ということです。例えばガン告知という問題では「告知すべきだ」という世論が形成されつつあるといえますが、それでも「患者全員に告知すべき」というsolutionではそれはやりすぎだということになるでしょう。そういった反対意見は自分ではなかなか気がつきにくいものです。徹底的にリサーチするなり多くの人の意見を仰ぐなどしてクリアするほかないでしょう。


★異なるアプローチ

異なるアプローチとは同じトピック・problem に対する異なる分析ということです(反対意見も含まれますがここでは反対意見を除外したものと考えます)。例えば看護婦不足という問題があってその原因を労働条件の悪さとするか教育施設の少なさとするかということです。もし自分が扱うトピックに自分のスピーチとは異なったアプローチが考えられる場合はそれも吟味しておかなければなりません。特に自分が一般論と異なるアプローチ(例えば「政治腐敗の原因は政治家でなく官僚にある」)を試みるときは一般論(持論とは「異なる」アプローチ)を否定した上で持論を展開するといった方法が必要です。その場合一般論を自分の意見とするとき以上に裏付けを強化しなければなりません。異なるアプローチは主にcause・A.S.Q で現れますが、反対意見と比べると自分で見出すのはかなり難しいので第三者に意見を聴くのが早期発見へとつながります。いろいろな人の意見をもとに真理というものを追求していって下さい。次に異なるアプローチを試みたlogic チャートの例を挙げておきます。

例)U.S.Q.   車の増加→交通渋滞・交通事故

  A.S.Q.   渋滞・事故をなくすために政府は高速道路などの整備を進めている
            →便利さのためよけいに車が増えて状況は変わらない

  Suggestion  1.政府は公共交通機関を整備すべき
          2.われわれは車の使用を控えるべき   “Public" For “Private"


ideal situation がないじゃないか!と文句を言う方がおられるかもしれませんが前のマニュアルで述べた通り必要ない要素はしばしば省略されます。このチャートでは道路などを整備すれば渋滞・事故が減るという政府のやり方(一般論)を否定した上で代替案を提示しています。

「反対意見・DISADVANTAGEにも言及しそれを踏まえている」ということについて考えてきましたが前述の通りこのポイントは大変見落としやすく、ジャッジコメントのときに指摘され気づく人が多いようです。しかしもしprize を獲りたいのであれば絶対におさえておかなければならないポイントです。時々明らかなDAがあるのにprize を獲るスピーチもありますが、それはrhetoricなどlogic 以外の要素が他のスピーカーを圧倒していた場合などで少なくとも大きなマイナスになっていることは確かです。対策についてはリサーチ・分析、他の人の意見を聞くという3つの方法を地道に実行するしかありません。もっとも、実際それら反対意見・異なるアプローチにすべて言及してスピーチをつくるというのは7分ないし8分という時間の制約上非常に難しいことです。そこでスピーチで言えなかったらどうするのかといえば、Q&Aの時間を利用するのです。現在ある程度以上のレベルの大会では、たいていQ&Aの時間が設けられています。もしそのスピーチに反対意見などがあれば必ず聞かれるのでそこできちんと答えられればスピーチの評価はかなりよくなります。ただしだれの目にも明らかな反対意見があればQ&Aの有無にかかわらずスピーチ本文中で触れておくべきでしょう。Q&Aの役割についてはlogic の項の最後で説明します。


(5)PRACTICALITYがある
「PRACTICALITYがある」かというのはassertion ・solution・suggestionが実際に実行可能なものであるかということです。誰にとって実行可能かということが問題になりますがそれは三者に大別できると思われます。すなわちaudience、政府、その他の三者です。その他というのは会社や公共団体などを指します。audienceにとって実行可能かどうかは一目瞭然だと思うのであまり気にする必要はないでしょう。例えば「募金しよう」、「Living Will に登録しよう」などは簡単にできますが、「憲法を変えよう」とaudienceに訴えてもそれ以上に具体性を示さない限りは難しいのではないでしょうか(「署名を集めよう」など)。「批判の手紙を書こう」というのは困ったときの常套手段ですがpracticalityには問題ありません(workability はかなり疑わしいですが)。このようにaudienceにとってのpracticalityの有無は自分で簡単にチェックできるのでこの程度の説明にしておきます。簡単そうで自分ではなかなか判断しがたいのが政府、「その他」にとってのpracticalityです。「政府は〜すべき」というのは簡単です。またたいていの場合workability もクリアされます。しかし例えば「アメリカは銃の使用を規制すべきだ」というassertion があるとして実際にそれが実行可能であるかというと圧力団体(全米ライフル協会)の反対があり実際規制できるかどうかはかなり疑わしいといえます。もしpracticalityを重視するなら圧力団体をも説得する理論を提示する必要があるでしょう。企業などに問題解決を求める場合は特に難しくなります。企業の利益を損なうような方法を提案すると「本当に企業はやってくれるの?」という疑問がジャッジ・audienceに生まれるのです。例えば「企業はもっと利益を社会に還元すべき」と言えば正論には聞こえますがpracticalityはそれほどあるとはいえないでしょう。「この不況期にそんな余裕があるわけない」と思うのが普通でしょう。このような場合practicalityの証明をすることは不可能だと思われますが、代わりにできる限りassertion の必要性をアピールしなければなりません。上記の例で言えば「利益は減るが会社のイメージアップにつながる」とか「アメリカでは企業の社会貢献が当たり前になっている」などの理論が考えられます。これらの理論をもってしてもpracticalityは解決されませんがスピーチ発表の直接の対象となるaudience・ジャッジはある程度納得してくれるでしょう。practicalityを考える際はあくまでもaudience・ジャッジにスピーチをするのだということを前提にしてください。「政府や会社は〜すべきだ、そしてそれは実行可能である」ということを第三者であるaudience・ジャッジが納得してくれればよいのです。1つ付け加えておくと政府にしても企業にしてもaudienceにしても多額のお金を必要とする提案をするのは避けたほうが無難です。たいていは「そのお金をもっと有意義に使えるんじゃないの?」という反論が考えられるからです。その反論をスピーチの中やQ&Aで否定できればよいのですが完全に否定するのは難しいと思われます。どうしても多額の出費が避けられないようなsolutionやsuggestionにした場合はsignificanceをできるだけ強調するというのが唯一の手段です。たとえ多額の出費が必要でも敢えてお金のことには触れないという方法も考えられます。ただしQ&Aでは聞かれる可能性が高いのできちんと答えを用意しておきましょう(明らかなDAと言えるほど多額の出費が必要なら、スピーチ内でふれておくべきでしょう)。 

practicalityは各スピーチ・トピックによってその果たす役割の大きさはまちまちで絶対に逃してはならないものだとはいえません。一般論として言えることはsolution・suggestion重視のスピーチ(sol.・sug.にoriginality がある・大きなスペースをさいているスピーチ)では比較的practicalityの役割が大きくなるということです(workability についても同じことが言えます)。またpracticalityはworkability があってはじめて意味を持つもので両者には密接な関係があります。workability については前述しましたがもう一度いくつか例を挙げてworkability ・practicalityの両方を検討してみましょう。


   例1)problem   日本は海外に派兵できない

      harm    日本が国際社会で孤立する

      cause    憲法9条の存在

      solution  憲法を変えよう


このsolutionに従えばproblem は解決されるのでworkability は満たしていますが、憲法の改正という複雑な手続きが必要でpracticalityは弱くなります。国民の反対も予想され現実的なsolutionとはいえません。


例2)problem    疑獄の増加

   cause     政官財の癒着構造

   solution   マスコミに投書して政治改革を促そう

practicalityはありますがマスコミに投書したところで政治が変わるとは考えにくくworkabilityはあまりありません。


例3)U.S.Q.    日本人のマナーが悪い

    A.S.Q.    日本人は自分が属している集団の中にいるときは礼儀正しいがいったん集団を離れると一転して無作法になる。 
          →みんなが不愉快な思いをする

   Ideal     みんなが礼儀正しく楽しく生活できる社会
    Situation

   Suggestion  いつでも、どこでも礼儀正しく行動しよう
                              “OF CABBAGES AND JAPANESE"

理想論的なideaですがworkability ・practicalityの両方満たしています。このようなvalueスピーチではworkability ・practicalityを気にする必要はあまりないのですが理想論に終わりがちなので注意しましょう。

practicalityは1回生のスピーカーでも結構気をつけていることではないでしょうか。audience は何をすればよいのかということに言及されていればたいていpracticalityは満たされています。しかし、多く見られる悪例が、audienceがあまり影響力を持たない問題に対して、「audienceは〜すべき」と強引にsol.・sug.を出した例2のようなworkability のないスピーチです。そのような場合は「政府は〜すべき」というworkailityのあるsol.・sug.を提示すればよいでしょう。「audienceに何ができるか」ということはしばしばスピーチでポイントとされますが、全くworkability のないsol.・sug.は蛇足となる可能性が高いので出さないほうが無難です。その結果政府に対するsol.・sug.のみになっても構わないでしょう。


B.ジャッジ基準としてのLOGIC

Aのところでは「logical である」ための5つの要素について説明しました。二十数ページにわたる長いものになってしまいましたが敢えてこれだけ詳しく説明したのは、スピーチの一番の基本となるものでありながらその重要性に気づいていない人が多いと感じたからです。先程述べたように、筋が通っていればいい、と言う単純なものではないのです。ここではlogic の5つの要素のジャッジ基準としての重要性についてもう1度まとめてみたいと思います。


(1)論理が首尾一貫している
この点については1.一本の筋が通っている、2.余計なものがついていないという2つのポイントに分けられると述べました。実際のスピーチにおいて1は最低限クリアしておかねばならないものです。もしこの点に大きな問題があれば、そのスピーチは明らかな欠陥スピーチであると言っても過言ではありません。この点はlogic チャートの段階で容易に気づくことのできる問題であり、余程手を抜いたスピーチでない限りは筋の通っていないスピーチはあまり考えられません。次に2については自分ではあまり気づくことのできないポイントで、ジャッジもひょっとしたら気づかないかもしれません。しかし余計なものがついていないということは
、その分、他の情報や分析に言及できていないということで、時間・ワード数を損していることになるのです。余計なものがついていないに越したことはないと言えるでしょう。

(2)しっかり裏付けされている
「出てくるすべてのclaim に対して客観的で、claim を満たす裏付けが施されている」と定義付けしました。この点については1回生でも自然にクリアしているポイントだと思います。というと問題はなさそうですが、それはlogic がシンプル・一般論的なものが多いので容易に裏付けが可能であるからなのです。新出の問題やcontrovertial なトピックでスピーチをつくるときほど裏付けは難しくなりますが、きちんと裏付けできれば一般論そのままのlogic よりはるかに評価は高くなります。しかし実際はほとんどの人はシンプルなlogic が好きなように思われます。もしジャッジに評価されたいのならより複雑な問題をもとにしっかり裏付けされた
スピーチがつくれるよう頑張ってください。もっとも一般論そのままのlogic での入賞が無理だというのではなくどちらかといえばより難しい問題のほうが評価が高いということなのでその点は誤解しないでください。結論として、裏付けに関しても入賞するためにはしっかりしていて当然と言えるのではないでしょうか。ただしvalue スピーチについては裏付けが難しくどうしても適切な裏付けが見つからないこともあります。うまいスピーカーはそれをrhetoric・英語力でカバーしているようですが、そのようなスピーカーも裏付けに関しては不十分なことが多く、結果的にトータルの評価で入賞するのです。もちろん裏付け・rhetoric・英語力のす
べてを満たしている他のsocialスピーチがあればそちらが評価されることになります。rhetoric ・英語力は一朝一夕に身に付くものではなく、一般に「value スピーチでの入賞は難しい」といわれるのも納得できます(下記参照)。

※VALUEスピーチの裏付けとその評価
value スピーチの裏付けは大変難しいものですが、たとえ不十分でもsocialスピーチほど大きな減点にはならないようです。value スピーチの性質上、裏付けが不十分であることが目立ちにくいからです。一方、仮に十分と言えるほどのものであっても目立ちにくいのも事実です。すなわち、value スピーチの裏付けはその善し悪しの評価がなされにくいものなのです(value スピーチの裏付けには客観的dataが用いられることが少なく、ジャッジとしては非常に評価しにくい)。そのためvalue スピーチは、(example などで)「十分に裏付け」されていても、同じように(客観的data・事実に基づいて)「十分に裏付け」されたsocialスピーチには勝つことは難しくなります。「十分に裏付けされた」socialスピーチの方が、ジャッジには評価しやすいのです。関東でvalue スピーチが勝てない所以です(「関西」との比較についてはCHAPTER 5を参照してください)。 


(3)明確に説明されている
この点については、英語に関するわかりやすさを別にすると多くの人は自然と身に付けているようです。それだけに明確に説明されていて当然だといえます。当然であるだけに苦手な人は第三者にチェックしてもらうなどして「明確に説明されたスピーチ」を意識してつくる必要があります。特に日本語でつくる段階では気をつけて下さい。日本語の段階でわかりにくいスピーチだとジャッジはおろかaudienceも理解してくれないでしょう。英語のわかりやすさはaudience とジャッジで意味が異なるので、スピーチをつくる際にどちらを対象にするかをある程度はっきりさせたほうが良いように思われますが、実際そこまで考えている人は入賞者の中にもあまりいません。それだけに差をつけやすい点なので入賞したいのなら対象を意識する価値はあるでしょう。いずれにせよ、logic の5大要素の中では比較的簡単にクリアできるのできちんとおさえておいて下さい。

(4)反対意見・DISADVANTAGEにも言及しそれを踏まえている
この点は前述の通り、prize 獲得のためにもっとも重要で見落としやすいポイントの1つであるといえます。どんなスピーチ、どんな意見にも反対意見(「異なる意見」含む)は存在します。ワード数の許す限り、反対意見には言及するようにしてください。反対意見にも一理あることを認めた上で(簡潔に)、徹底的にけなすのが効果的です。反対意見の発見法については、「他の人の意見を仰ぐ」というのが早いでしょう。どうしてもスピーチ内で言及する余裕がなければ、Q&Aを利用することになりますが、マテ審査にQ&Aはないということを覚えておいてください。スピーチ内で言えなければ「Q&Aで」というのではなく、まずは自分のスピーチの「無駄・不要な部分」をカットすることを考えてみてください。私の感想を言わせてもらえば、たいていのスピーカーは反対意見に言及しているのですが、それを完全に打ち消すことができずに終わっています。自分では気づいていないのでしょうが中途半端に終わってしまうとQ&Aで突っ込まれる対象となります。そこできちんと答えられなければもちろん評価は下がります。フローチャートが出来上がった段階、できればlogic チャートの段階でも他の人にしっかりチェックしてもらって下さい。

(5)PRACTICALITYがある
practicalityはスピーチ・トピックによってその重要性が異なるので一概には言えないのですが、いずれにしても全くないのでは問題です。例えば「日本経済が不況にあえいでいる」というproblem があって、「税金をなくそう」というのではworkability はともかくpracticalityは全くありません。このような極端な例を除けばpracticalityがあまりなくてもそれほど大きなマイナスにはならないようです(もっともaudienceに対するsol.・sug.ではpracticalityがないと一目で分かるので注意が必要)。ただしQ&Aでpracticalityについて聞かれたときに全く答えられなかったり、的外れの答えをした場合は大きなマイナスになります。たとえ聞か
れないにしても必ず発表の前に考えておくべきでしょう。もしQ&Aで聞かれなければジャッジ(questioner)の関心がpracticalityにいかなかったということであまりpracticalityに問題がなかったと言えるでしょう。


C.Q&Aの役割

Q&Aというのはスピーチの発表のあとに3分前後設けられるそのスピーチに関する質疑応答のことです。ジャッジペーパーの上ではQ&Aはそれほど大きな配点にはなっていないことが多いのですが、実際はprize を左右する大きな要素となります。なぜlogic の説明でQ&Aのことに言及するのか疑問に思われるかもしれませんが、それはlogic に関する質問が全体の7〜8割を占めているからです(ジャッジによっても異なりますが少なくとも関東の大会ではそういった現状があります)。だからもしlogic に関する質問がなければそのスピーチのlogicには弱点がないと言ってもよいのではないでしょうか(ただし、いかにlogical なスピーチでもQ&Aの中で反対意見をぶつけられることはよくあるので要注意)。

Q&Aの具体的内容については前のマニュアルを見てもらえばわかると思いますが、そのほとんどはAで説明したlogic の5大要素(significanceの項で説明する「スピーチの具体性」含む)を踏まえていれば答えられるものです。Q&Aは軽視している人が多いようですがQ&Aをつぼるとジャッジの評価はもちろんaudienceのスピーカーに対する印象も悪くなります。英語がうまく喋れないと不安に思っている人もいると思います。しかし大切なのは英語の流暢さより話す内容です。それにしっかりQ&A対策をしていれば英語も出てくることでしょう。

Q&Aはスピーチで言うことができなかったことを言う場所であるともいえます。Q&Aは通常3分間ありますから単純に考えて7分+3分で合計10分の時間を自分のスピーチのために与えられることになるのです。そしてそのプラス3分をどのように使うかはあなた次第です。例えば、よくAs I said in my speech, と言ってスピーチで述べたことと同じ内容をくり返す人がいますが、それではQ&Aを全く生かしていないといえます。たとえ答えがスピーチの内容の繰り返しとならざるを得ないにしても、よりわかりやすく、より具体的に説明するようにすればよいでしょう。全く同じことをくり返したのではマイナスにはならなくてもプラスにも
なりえないのです。

最後にQ&Aでよく見られる問題点を2つあげておきましょう。まず、聞かれたことに正確に答えていない、と言うことです。例えばDo you〜? と聞かれたらYes /No〜.,Why 〜? と聞かれたらBecause 〜というような基本的なことが守れていないのです。驚くべきことに、関東の大会で優勝するようなグレートスピーカーでもしばしば起こしているミスなので実際大変難しいことかもしれませんが、落ち着いて冷静に考えて答えれば大丈夫なのではないでしょうか(Easier said than done...それが難しいのかもしれませんね)。2つ目の問題点は、「せっかくスピーチそのものでしっかりやったのにQ&Aになったとたん弱気になってしまう」という
ことです。準備不足が大きな原因だとは思いますが、Q&Aは「突っ込まれる」場ではなく、questionerと対等に「渡り合う」場所なのです。このことを忘れてしまい、弱気になってしまう人が多いのです。

Q&Aは準備をしっかりして望むこと、そして何よりも強気で行くこと!自信満々のスピーカーほど見ていてうれしいものはありません。

なおQ&Aの実際については前のマニュアルで触れてありますが'93 KESSAキャンプのマニュアルの説明が非常によく整理されていてポイントをついているのでそちらのほうも合わせて見て下さい。



logic の説明は以上です。最後にlogic のジャッジ基準としての重要性を他の要素と比べてみると、1番目か2番目に評価のウエイトが高い要素だと言えそうです(value スピーチの「裏付け」については評価されにくい要素です。少し前に説明した通りです)。他の要素がズバ抜けていた場合などは例外となりますが、実際に出場しているスピーカーのレベルを考えた場合もっとも顕著に差が現れる要素だと言えます。deliveryも差が目立つ要素だと言えますがしっかりしたlogicは少々下手なdeliveryをカバーできます。またdeliveryは差が目立つわりに評価(prize )にその差が反映されにくいようで、少々deliveryがうまくてもまずいlogic は相殺されません。すばらしいrhetoricはlogic をも凌駕しますが実際そのようなrhetoricは滅多に見られるものではありません。originality に関しては予選突破の段階でoriginality のないスピーチはカットされており差はつきにくいと言えます。significanceとtopic についても大きな差はつきにくい要素です。このようにlogic はジャッジがスピーチを評価する際にもっとも差がつきやすい要素であり、実際logic で差をつけたスピーチはたいてい上位入賞を果たしています。しかし、本当にlogical なスピーチというのは関東でもあまりお目にかかれるものではなくそれだけそういったスピーチをつくるのは難しいと言えますが、logical なスピーチをつくるのに必要なのは英語力でも感性でもなく、いわゆるプレパ・リサーチ・分析なのです。そういった意味では時間さえかければ誰でもある程度しっかりしたlogic のスピーチをつくるのは可能なのです。「時間をか
ける」、これを難しいととるかやさしいととるかは人によって違うとは思います。あなたはどうですか?



2.ORIGINALITY
logic のところでジャッジのほうがaudienceより見る目は鋭いと述べましたがoriginaltyについてはどうでしょうか。意外なことにある意味ではaudienceのほうがジャッジよりoriginality に関しては批判的です。理由は簡単、audienceのほうがジャッジより圧倒的に数が多いからです。例えば100 人audienceがいれば1人位はそのスピーチと同じ意見を持っていたり、スピーチのトピックについて詳しく知っているのではないでしょうか。だからすべてのaudienceがoriginalityを感じ取れるスピーチをつくるのは入賞するより難しいかもしれません。このようにaudienceについてはポイントを絞り切れないのでここでもジャッジの視点から見たoriginality を中心に考えていきます。

originality にはいろいろな種類があるというのは前述しましたが大まかにlogic のoriginalityとトピックのoriginality という2種類に大別できます。rhetoricのoriginality という考え方もありますがrhetoricについては一括してrhetoricの項で説明します。トピックのoriginalityについても便宜上トピックの項で説明します。よってここではlogic のoriginality の説明にフォーカスすることになります。logic とひとくちに言っても前述した通りさまざまな要素があり、すべてについて説明していたらキリがないのでいくつかのポイントに絞って考えていきたいと思います。


A.ORIGINALITYとは
ここでoriginality という言葉をもう一度定義しておきましょう。そのまま訳せば「独自性」ですが大変曖昧な言葉なので「いったい何を基準に測るんだ?」と疑問に思われる人も多いことでしょう。答えはシンプルです。ジャッジにとって新しい、あるいは未知のものであるかということです(下記参照)。audienceの誰もが知らないようなexample などを出したとしてもジャッジがそれを知っていればoriginality がないexample になってしまいます(もっとも、それが一般にはあまり知られていないものであることをジャッジ自身が知っていたら「よく調べたな」と逆に評価されるかもしれません)。また、きわめてタイムリーなことならジャッジ
が知っている事柄でも評価されるようです。originality について一番気をつけなければならないことはそれまでに発表されたスピーチの内容と重なっていないかということです。全く同じlogic なら、たとえ自分がどんなに時間をかけて思いついたものであっても評価は悪くなります(タイムリーでもだめです)。example やsolutionが同じであるだけであっても、少なくともそれらについてのoriginalityはないということになります(そのように考えるとジャッジに評価されるoriginality を出すためには常に社会・スピーチ界の動きに目を向けていなければならないことがわかります)。1年ほど前に現れた問題ならとっくに2〜3本のスピーチ
がつくられているのが普通です。そういった状況で自分のoriginality を見出すというのは大変なことです。それでは次にoriginality を「approachのoriginality 」と「裏付けのoriginality」とに分けて考えていくことにしましょう。

※ジャッジにとって新しいもの・未知のもの
前述の通り関東のメジャーな大会ではジャッジをする人が限定されておりその数は10人に満たないものです(3人ほどはメジャーな大会でのレギュラージャッジとなっているようです)。そしてNativeスピーカーが6割、日本人が4割というのがジャッジ構成の目安になっていると思われます。ジャッジの職業は大学教授、通訳、商社マン、銀行員と多岐にわたっておりどのような内容でスピーチをするにしてもジャッジのうち1人位は少なくともトピックについては知っていると考えてよいでしょう。しかし彼らは基本的に自分の専門分野を除いては広く浅い知識しか持ち合わせておらず、偶然そのスピーチの内容について詳しく知っている場合などを除けば深い知識はありません。だから深い分析・リサーチに基づいたスピーチなら、たとえトピックがoriginalではなくても「新しい・未知のスピーチ」になりえます。また、たとえ彼らが知っているものでも、意外性を持った意見や裏付けは「新しい・未知のもの」とは言えずともoriginality はあると言えます(しかしそういった意外性に客観性を持たせることは難しくoriginalであってもlogical でないことが予想されます)。ただ1つやっかいなことはそういったジャッジの人たちは年に百本以上のよく練られたスピーチを見るために、それらのスピーチからの知識をかなり蓄えているということです。だから過去に何度も発表されたような内容では、たとえそれが深く分析されたものであっても、「またか」ということでoriginality がないことになるのです。


(1)APPROACHのORIGINALITY
approachというのは、スピーチのトピックをどのように捉えどのように解決していくのかというスピーチの流れを指します。具体的には、PSタイプではproblem ・harm・cause ・solution 、CAタイプではU.S.Q.、A.S.Q.、ideal situation 、suggestionというスピーチの各構成要素のことです。それでは次にそれぞれ検討していくことにしましょう。

★PROBLEM・U.S.Q.

problem ・U.S.Q.(以下それぞれP、U)というのは、あるトピックのもとに何を問題・現状とするのかということです。例えば米問題について米を輸入していないのが問題なのか、あるいは、輸入しようとしているのが問題なのかということです。P・Uは決めた段階でスピーチの方向性がほぼ決まってしまうという意味でスピーチの主張をも決定づける性質があり、スピーチメーキングの過程において非常に大切な要素であるといえます。実際何をP・Uとするかは皆さん悩みのタネになっているようで、多くの人はP・Uを見つけるためにかなりの時間を割いていますが、その割にはoriginality を伴わない場合が多いようです。思うに、それはスピーチをつくるときだけP・Uを探そうとするからでしょう。P・Uは普段からの心がけでいくらでもストックできるものです。以下にoriginalなP・Uを見つけるためのコツを3点挙げておきます。

[常識の逆をつく]
例えば体罰を肯定的に捉えたスピーチがJUEL杯で優勝しましたし、'93 大隈杯では「日本は従軍慰安婦問題について韓国に謝罪すべきでない」というスピーチが1st prizeを獲りました。ともに常識の逆をつくと同時にそれを説得するのに成功した例でありP・Uにoriginalityがあったことだけが評価されたとは言い切れませんが、1つの参考にはなると思います。この方法を使えば短時間でoriginalなP・Uが見つけられそうな気もしますが、実際にリサーチしてみないことには「常識の逆」を説得できるかどうかわかりません。短時間でいいP・Uを見つけようという高望みはしないことです。

[日頃の情報収集]
これはExtemporaneous Speech (以下エクステ)でよく言われますが、Prepared Speech でもよりoriginalなP・Uを発見するためには必要不可欠であるといえます。シーズンオフについては「休息期間」になりがちですが、シーズンオフこそ他に差をつけるチャンスです。シーズン中・シーズンオフ問わず情報収集に努め、originalなP・Uを探しましょう。

[過去に発表されたスピーチをできるだけ多く読む]
G.W.S.のスピーチ集を一冊読むだけで20本以上のスピーチを目にすることができます。大会を見に行くのも良いし、セクション員や他大学のスピセク員からの情報を通してP・Uくらいは知ることができるでしょう。そしてそれらのP・Uと自分のスピーチとが重ならないようにすればよいのです。ただし関東で勝つためには、関東の大会で発表されたスピーチを知る必要があり、実際すべてのスピーチを知ることは不可能に近いですが、関東のスピセク員の友達をつくればそういった情報はかなり手に入りやすくなります。毎年3月に開かれるJUELキャンプは関東で友達をつくるいいチャンスなので参加してみる価値はあると思います。このようにさまざまな情報・機会をフルに使えば1年間で200 本以上のスピーチ、P・Uにめぐりあうことができます。私自身、スピセクに在籍した4年間で1000本近いスピーチを目にしてきましたし、マテについても300 本以上のストックがあります。とりあえずはG.W.S.のスピーチ集を読めばいいと思います。その半数以上は関東でのwinning スピーチ、すなわち関東のジャッジが目にしてきたもので、関東での入賞を意識するなら同じP・Uは避けたほうが無難だといえます。

以上P・U探しの3つのコツについて説明しました。2・3点目については大変地味で遠回りのようにも見えますが、ともに「グレートスピーカー」といわれる人たちが日頃から行っていることです。1週間ほどで新聞の縮刷版や雑誌から見つけてしまうような人は、いつまでたってもいいスピーチはつくれないでしょう。

★HARM・IDEAL SITUATION・CAUSE・A.S.Q.

harmとcause というのは皆さんよく理解しておられると思うのであえて説明しませんが、A.S.Q についてはさまざまな憶測・誤解が飛びかっているようなのでまず定義付けをしておきたいと思います。.S.Q.とはCAタイプのスピーチの構成要素となるもので、現状の原因となることや現状に対する自分なりの解釈を述べたものであるといえます。原則的にはPSタイプのcause に当たるものである考えて良さそうです。ただし、実際に現状の「原因」となっていないこともありイコールの関係であるとはいえません。付け加えておくとPSタイプのスピーチではP-H-C-S の範疇にあてはまらない要素がしばしば登場し、そのような要素は現状分析という言葉で説明されることが多いようです。P-H-C-S の流れでは説明し切れない複雑な問題を扱ったスピーチによく見られるもので死刑存廃論・ガン告知の是非などcontroversialなトピックを扱うときに欠かせないものです。例えば死刑のAD・DAの比較、ガン告知の賛成意見・反対意見の吟味などはP-H-C-S の型にはあてはまらない要素であるといえます。それでは前置きはこのくらいにしてharm・ideal situation ・cause ・A.S.Q.(以下、それぞれH・I・C・A)の説明に入っていくことにします。

H・I・C・Aのoriginality についてもP・Uのそれと基本的考え方は同じで、originalityを出す方法についてもそのまま応用できます。ただ少しばかりアドバイスするならC・Aではcause のcause であるルートcause を探るというのがoriginality を出す1つの方法となります。また一般論とは違う視点を通してproblem を見てみると意外なH・I・C・Aが見えてくることもあります。違う視点に立つというのは一見難しそうですが「もし〜だったら」という仮定を通して考えれば比較的簡単ではないでしょうか。例えば「もし政治腐敗を必要悪だとするなら」という視点に立てば政治腐敗について違った視点をもつことができるのではないでしょうか。その他H・I・C・Aのoriginality を考えるにあたっての注意点を2つあげておきます。まずoriginality を追求するあまり一人よがり・illogical なも
のにならないよう気をつけるということです。例えば「原発が推進されている」というproblemで「日本がプルトニウムで核爆弾をつくって第三次世界大戦が起こる」というHでは確かにH自体にoriginality はありますが、logic は全く通っていません。Cに関して例を挙げるなら、「子供が減っている」というproblem に対して「女性が陣痛を怖がっているから」というcause ではまず受け入れられません。H・I・C・Aでoriginality を出そうとする場合は常にlogical であるかどうかをチェックしなければなりません。次に注意すべき点として、これはH・Iについて主に言えることですが、significanceがなくなってしまわないよう気をつけるということです。例えばproblem 「大学生の私語が多い」、H「教授にストレスがたまる」とするとHにoriginality はあるように思えなくもないですが、ジャッジ・
audienceは心の中で“So what?”と呟くでしょう。このようにoriginality はlogic ・significance に影響を及ぼしやすいものなので考える際は十分に注意が必要なものなのです。

★SOLUTION・SUGGESTION

solution・suggestion(以下、SS)はもっともoriginality を出すべき、あるいは、出しやすい要素であると言われます。私はSSでoriginality を出すべきだというのは根拠のないものだと思いますが、出しやすいというのは納得できます。なぜならどのような問題も徹底的に調べあげればなんらかのSSは見えてくるものですが、それはたいてい総論的SSで具体性に欠けるものが多く自分自身で考える余地が多く残されているからです。例えば「リサイクルしよう」というSSは環境問題について調べれば誰でも導き出せるものですが、具体的にどのような方法が効果的・身近なのかはスピーカーの判断に委ねられます。本や新聞にさまざまな方法が載っていると思われますが、選ぶのはスピーカー自身なのです。causeやharmでもある程度同じことが言えますが、メジャーな問題である場合はそれらは誰の目に
も明らかなものが多くoriginality は比較的出しにくいでしょう(例えば、障害者差別というproblem で人権侵害というharmは本や資料を見ずとも明らかです)。多くのスピーカーがメジャーな、すなわち誰でも知っているようなトピックを扱っている現状を鑑みればcause・harmでoriginality を出すのは難しい、すなわちSSで比較的出しやすいと言えるのではないでしょうか。それでは本題に移りましょう。SSは今述べたようにスピーカーの考えが入りやすい要素です。その分originality は出しやすいのですが、SSを考えるときはworkability・practicalityのことを考慮せねばならずより深い分析が必要とされます。結局originalityを出すためには時間をかけてリサーチ・分析するしかないといえます。1つ注意点をあげておけば、本や資料をそのまま鵜呑みにしないようにしてください。それらに載って
いるSSは理想論が多くそのままスピーチに用いることは危険です。具体的にはpracticality がなかったり反対意見を踏まえていなかったりします。もちろんそのまま使うことができるものも多いですが、必ず1度自分で分析してみるようにして下さい。そして最もoriginality・workability ・practicalityを満たしているSSを見出せばよいのです。なお、problem ・U.S.Q の説明でふれた3つのコツはそのままここでも応用できます。それらを踏まえた上で自分なりのoriginality を見つけて下さい。


approachのoriginality については以上です。「assertion のoriginality 」は?、と聞かれる人がいるかもしれませんが、problem ・U.S.Q.のところで説明した通りproblem ・U.S.Q.を決めた段階でスピーチの方向性、すなわち大まかなassertion は決まっていると言えるので説明は省略しました。では最後にoriginalなapproachに成功したスピーチのlogic チャートを見てみることにしましょう。

  
   例1)U.S.Q     NHKが虚偽の報道によって政府をサポートしている

      A.S.Q.    NHKの役員が政府によって決められているから

      ideal     民意を反映したNHK
       situation

      suggestion  NHKに受信料を払うのをやめて抗議しよう
                             “Positve `Negative Action' ”

このチャートは全体にわたってoriginality がありますが特にU.S.Q.はインパクト・originalityを兼ね備えています。



   例2)U.S.Q     朝鮮高級学校の生徒が日本の国立大学への入学資格がない

      A.S.Q.    日本の政策に矛盾点がある

        1.在外邦人に対する民族教育を推進する一方で韓国人の日本での民族
          教育には否定的(民族教育を取り入れた朝鮮高級学校の生徒を大学
          に受け入れていない)
        2.韓国人の生徒はいわゆる国際人であり歓迎されるべき存在であるは
          ずなのに受け入れられていない 

      ideal     1.韓国人の地位向上・大学で専門知識を得れる
       situation  2.日本の文化基盤向上に役立つ

      suggestion  文部省は彼らに国立大学の受験資格を認めるべき
                                   “Open The Door ”

A.S.Q.での深い分析によりoriginality を出しています。「よくここまで調べたなあ」と感心するのは私だけでしょうか。


   例3)problem    陣痛促進剤(LID)が乱用されている

      harm     副作用によって死ぬ人もいる

      cause     医師が出産の時間を自分の都合に合わせるために用いている

      solution   LIDを拒否する権利が確立されるべき
                           “The Tragedy of Poisonous Apple”

このスピーチはまさにトピック・problem の勝利だといえます。今までスピーチで発表され
なかったoriginalでsignificanceもある問題をlogical にまとめています。このproblem で
他のスピーカーが今後入賞することはまず考えられないでしょう。次に同じproblem でつく
    られるときにはoriginalでなくなってしまっているのです。



(2)裏付けのORIGINALITY
裏付けでもoriginality を出すことは可能です。その裏付けがジャッジにとって新しいものならよいのです。裏付けには6種類あるというのはlogic の項で説明した通りですが、そのそれぞれについて考えていきましょう。

★EXAMPLE

example は大きく2つに分けられます。すなわちpersonal exampleとその他のexample です。前者を使えばoriginality が出せると勘違いしている人がいるかもしれませんが、そのexampleがありふれたものならoriginality があるとはいえません。例えば「ボランティア活動に参加した」というのは数年前までならoriginalなexample と言えなくもなかったのですが、今では多くのボランティアがおりoriginalなexample とはいえないでしょう。この点については第三者にチェックしてもらえばよいでしょう。後者に関しては特にoriginalであるかどうかの判断は自分ではなかなかつきにくいものです。ジャッジにとって新しいものというのが1つの基準となりますが、何が新しいものなのか想像もつかないのではないでしょうか。まず、前に述べたように過去のスピーチで使われたexample はoriginalとはいえません。社会人のうち3人に1人以上が知っているようなexample もoriginalだとはいえないでしょう。なぜ社会人を基準にするのかといえばジャッジも一人の社会人だからです。それを測る1つの目安として新聞に載ったことがあるかどうかということがあげられます。記事の分量・載った回数にもよりますが三大新聞(読売・朝日・毎日)に載ったものなら既に多くの人が知るexample といえます。スピーチをつくる際にリサーチをしますが、過去1〜2年の三大新聞をすべて読んでそれぞれに1回以上でてきたexample はジャッジの人が知っている可能性が高いのではないでしょうか。ESSの友達(時事問題オタクが多い)に聞いてみるのもoriginalityの有無を知るいい方法となるでしょう。しかしたとえ新聞に何度も載ったexampleでもoriginality が全くないとは言えず、一番大切なのはくり返し言いますが過去のスピーチのexample と重なっていないということです。特にG.W.S.のスピーチと重なっているexampleにはoriginality はないと言い切れるでしょう。「何で自分のスピーチをつくるのに他人のスピーチ読まなきゃならないの?」と思われるかもしれませんが、ジャッジに評価してほしいのならまあ読んでみて下さい。


例1)
My father was an Englishman. I don't remember him because he died when I was just one year old. I was often picked on in my childhood because my face, hair, or eyes were different from all the other children. My classmates used to point to me and say, “Beat it, Gaijin! You can't play here!" My mother isa Japanese and I was brought up in Japan, and I have never lived anywhere else except Japan. Therefore, I have always felt that I was a Japanese child. Why was I made to feel like an alien, just because my face was different?
                                  “THE FEELING REEDS"

日本で育ったのに容姿が違うという理由でいじめられたというpersonal exampleです。こ
のスピーカーにoriginalであり、しかも内容もショッキングなもので効果的なexample と
     いえます。

例2)
A good example of this is a story about McDonald's. As you probably know, McDonald's has a very comprehensive manual which describes everything from how to make hamburgers or how to greet customers. That manual helps to ensure that you can have the same hamburger at any McDonald's around the world. But, that is also where the pitfall lies. As the story goes, a customer came to McDonald's by himself and ordered 20 hamburgers. After taking his order, the attendant asked the next thing which was in the manual, “Will you be eating here?" Now, think about that. How many people can eat 20 hamburgers?

このexample はおそらく事実ではなくスピーカーによる作り話でしょう。しかしoriginal
でユーモアもあり現実に起こりそうな話なので全く問題はなくむしろ効果的です(もっと
も某マクドナルドアルバイトKさんによると「そんなこと言うわけないじゃない」という
     ことでした)。


★FACT

factではoriginality を出すことはできません。常識的・一般的な事実なのですから当然と言えるでしょう。もしoriginality のあるfactがあるのならそれはスピーカーがfactと思い込んでいるだけのclaim に過ぎません。簡単ですがこれで説明を終わります。

★DATA

dataについてはexample と同じことがいえます。ジャッジが知っているdataではoriginalityがありませんし、初めて聞くものならoriginalだといえます。しかしdataというのはoriginalityを出すためというより純粋に裏付けすることを目的としており、あまりoriginalityには貢献しません。ただジャッジがびっくりするようなdataであればoriginality のあるdataということになります(例えば、〜という国で10000 %のインフレになった、など)。しかし実際そんなdataにお目にかかれることは少ないので、dataでoriginality を出すこと難しいしその必要もあまりないというのが結論です。



★QUOTATION

quotation はoriginality と裏付けという2つの目的があると思われます(効果的なquotationはrhetoricのためにも使われます)。メジャーなquotation はoriginality を損なうと述べましたがその点についてもう少し説明しておきます。例えば「覆水盆に帰らず」ということわざを裏付けにして「一度失った信用は取り戻せない」というclaim にすると確かにきちんとした裏付けにはなっていますがoriginality があるとは到底言えません。だからといってこのことわざは使えないというのではなく、それを前面に押し出さずに軽く触れる程度にしておけばあまり問題ありません(メジャーさを逆手にとって「覆水盆に帰る」という自作のquotation をつくってうまくそれをスピーチに取り込めれば効果的・originalなものにすることも可能です)。ではどうやってメジャーでないquotation を見つけるのかといえば、これは普段の努力・ストックにかかってくるもので、特定のスピーチのリサーチで見つける
ことができるのはことわざ・格言くらいでしょう。文学作品や詩のquotation は探そうと思って見つかるものではありません。普段からいろいろな本・作品に触れ気に入ったquotationをストックする、それが嫌ならoriginality のあるquotation を使いたいという高望みはしないことです(ことわざ・格言については辞書・辞典格言集などによって探すことができます。あきらめないように!)。なおquotation のoriginality を測る基準は過去のスピーチと常識です。過去のスピーチについてはexample と同じですが、常識というのは常識で知っているようなquotation であるかということです。常識で知っているようなメジャーなquotationではoriginality はありません。この点は第三者にチェックしてもらって下さい。

例1)
It is you, me, and everybody here, who must be proud of our land, our sweet mother Japan. We are the future of this land. So come, fellow students, let us all brace ourselves, and join our hands together, and prepare the way for our land. About:
         My country 'tis of thee, sweet land of liberty, of thee I sing
                               “My Country 'tis of Thee"

最後の部分がアメリカの愛国歌“My Country 'tis of Thee" からのquotation です。日本人ではほとんど知っている人はいませんがアメリカ人なら誰でも知っているものです。アメリカ人のジャッジには聞き慣れたフレーズですが、日本人がこの歌を知っているということにoriginality があるのだと思います。


例2)
Ladies and gentlemen, we all have the possibility of dying of cancer in our future. Maybe your parents or your friends will do so. But even in that case, let's try to face death that death is natural and is part of our life-cycle. And dying itself can be the last occasion to grow and mature.

Lastly, let me quote a passage from thr book written by Kubler Ross.

          The fire which is burning is beautiful.
          To create excellent works, it is burning as hard as possible.
          The state of man who lives earnestly is also beautiful.
To live life without feeling regret, he is burning with all his might.
          To burn out completely.

このquotation は生命のすばらしさをうたったものです。メジャーではなくoriginalで、しかも誰もが心を動かされてしまいそうな余韻が残っています。


★ARGUMENT

argumentでoriginality を出すのはかなり難しいといえます。前述のようにargumentはfactとclaim の組合せであり下手にoriginality を出そうとするとfactとclaim のlinkage がなくなってしまう恐れがあります。factというのは客観的なものでありそれ自体にoriginalityはありません。argumentでoriginality を出したいのならoriginality のないものからclaim という形でoriginality を引き出す作業が必要となるのです。仮にoriginality が出せたとしてもどこか強引なargumentになってしまうことが多いのではないでしょうか。実際originality のあるargumentというのはillogical なもの以外は余り見たことがありません。かといってargumentでoriginality が出せないのかといえばそうとは言えず、rhetoricとの組合せでoriginality が出てきます。しかしそれはargumentではなくrhetoricによるoriginalityと言うべきでしょう。

例)
Since it has been a Japanese tradition for women to walk three steps behind men, the society slowly becoming conscious of equality is a good tendency. Using Japanese cultural backgrounds as a justification for unequal partnership should not be allowed any more. Because we are swallowed in this wave of arguments on this topic quite often these days, now is the right time to consider and create a good balance between Yin and Yang.
                                 “SOCIETY OF YIN-YANG"

内容自体は大したことは言っていないのですが、説明の仕方(rhetoricと言えます)が凝
っておりその意味でoriginality が出ています。しかしそれはrhetoricから生じるものであ
     りargumentのoriginality とはいえません。


★OPINION

opinion に関しては知っていて当然と言えるほどのメジャーなものはほとんどなくoriginalなものを見つけるのは一見容易に見えますが、その内容がありふれたものであるならoriginal であるとは言えません。しかもopinion はある程度客観性を持っていなければなりません。実際探してみるとoriginalitiy・客観性の両方の観点から見て効果的なものはなかなか見つかりません。すなわち一般的に受け入れられそうな内容であるのだけれどoriginalityも満たしているという手頃なopinion というのはありそうでないものです。結局はoriginalityのないopinion を使うことが多くなりますがopinion は裏付けのためにあるものなのでoriginality はあまり気にする必要はないでしょう。もっともスピーチでopinion を用いるスピーカーは極めて少なく、その意味ではopinion を使うだけでoriginality を出していると言えるかもしれません。

例)As a matter of fact, most of opinions given by various countries on Article 9 consists of admire or praise, and we can hardly find any blames. For example, here is the quote from International Herald Tribune ; “The constitutional language has kept militalist ideology in check and made possible the most democratic, as well as the prosperous, era of Japan's long history."
                                “A LESSON FROM HISTORY"



後半がopinion となっています。quote とありますがopinion と考えて差し支えないでしょう。内容は常識的な事柄と言えなくもないですが、あらためて「ああそうだな」と思わせるのがopinion の効果だと言えるのではないでしょうか。内容自体にoriginality があるとはいえませんがopinion の役割は立派に果たしているのではないでしょうか。

以上裏付けのoriginality について説明しましたが、6つの中でも一番originality を出しやすいのがexample です。実際多くのスピーチではexample を用いてoriginality を出しています。しかし、「多くの人が使っている」ということはそれだけ差をつけにくいので、他の裏付けにチャレンジして異彩を放つのもいいかもしれません。


originality の概念について説明してきましたが上記のような説明・分類の他に「そのスピーチとスピーカーの関係」という考え方もあります。言い換えればスピーチをつくった動機とでも言えるでしょうか。動機について触れていないと論文的・機械的なスピーチにになってしまう可能性が高く、皆さんの中には、それがなければスピーチじゃない!と言う人もいるかもしれませんが、ジャッジに関して言うなら、動機にふれないことそれ自体はほとんど問題とはならないようです。実際入賞スピーチの中には動機について触れられていないスピーチが多くあります。Q&Aで聞かれることもありますが、無難に答えていればジャッジの評価には大きな影響はありません。動機への言及を省略することで他の情報などについて述べることもできるでしょう。とはいえ、動機に触れることは意味のないことであるかといえばそうとも言い切れません。動機にふれることによって、「スピーカーがいかに言っていることに対して本気であるか」すなわちmotivation がいかに高いかということが見えてきます。ジャッジに与える「心理的」効果は大きいと言えるでしょう。また、スピーチによっては動機に触れていないとまったく説得力がなくなってしまう場合もあります(たとえば男性スピーカーが女性問題を語る場合など)。「本を読んでいて載っていた」などのありきたりの動機でなければ、言及しておいたほうが良いといえそうです


B.ジャッジ基準としてのORIGINALITY

この点についてはAのところでほぼ説明し尽くしたと思われますがわかりやすいようにもう一度まとめておきます。まずジャッジにとってのoriginality というのはジャッジにとって新しいこと、ジャッジが知らないことであるかという基準で測られれます。だから過去に発表されたスピーチと重なったり、常識として社会人が知っているような事柄はoriginality がないとみなされます。originality を出す方法としては、スピーチメーキングの際の深いリサーチ・分析に加え、普段からの情報収集と多くのスピーチに触れるという作業が必要となります。また、独りよがりにならないことが大切です。大体以上がAで説明したことのまとめとなります。つぎにoriginalityのジャッジ基準としての位置付けについて考えてみましょう。結論から言うと、rhetoric・トピックのoriginality をも含めてoriginality と定義するなら、originality のないスピーチでは絶対に勝てません。勝つスピーチというのは、程度の差はありますが何らかの光るoriginalityを持っているのです。logic など他の要素と比較してどちらが上ということはできませんが、originality は勝つスピーチには不可欠なものなのです。また、originality は原稿審査の段階でも大きなポイントとなり、最低限のものがなければ大会に出ることすらできません。実際、関東のメジャーな大会で発表されるようなスピーチでoriginality のないものは皆無といってよいでしょう。では最後にKUESSのオラコンでありがちなoriginality のないlogic chart をいくつかあげておきます。自分も今までに同じようなスピーチをつくったことがないか振り返ってみて下さい。

  例1)problem    日本の英語教育が実践的でない

     harm     10年間も英語教育を受けた人が英語を喋れない

     cause     英語の授業でconversationがない

     solution   授業にconversationを取り入れよう


  例2)problem    日本への留学生に友達ができない

     harm     留学生が寂しがっている

     cause     日本人の排他的意識

     solution   気軽に彼らに話しかけよう


  例3)problem    女性が会社で昇進できない

     harm     男は仕事、女は家庭という考え方が日本に根づいている

     cause     女性の権利侵害

     solution   会社は女性の地位向上をめざすべき


これらはいずれも少なくともlogic の段階でのoriginality はほとんどありません。1回生によく見られるもので一般論をそのまま言っているだけです。しかしこれらのチャートもうまく発展させればoriginalなものにならなくもありません。具体的にはoriginalなexample を使ったりrhetoricに凝ったりする方法が考えられます。そのためにはもっと深く、具体的に分析・リサーチするなど時間をかけるほかないでしょう



3.RHETORIC
rhetoricという言葉は1回生にはあまり聞き慣れないものではないでしょうか。rhetoricとは前述したように、自分の考えをいかに巧みに英語で表現するかということで、その目的はジャッジ・audienceに効果的・印象的に自分の意見を伝えることにあります。似た言葉にillustrationがありますが、hetoricはillustrationの応用編と考えてもらえばよいでしょう。辞書を引くとart of speaking という定義付けがなされているようにrhetoricは言葉の「芸術」なのです。ここでは前のマニュアルで説明したillustration の応用としてのrhetoricを考えていきます。


A.RHETORICとは

まずこの英文を読んでみて下さい。

We must always remember that a democratic nation is a reflection of its constituents. If we want to make government better, we must act. We must have a desire to defend freedom and justice. We must realize that the Blue Bird of healthy politics is never beyond our reach. Whether we find the Blue Bird or not depends on the will of each and every one of us to fulfil our responsibilitty of voting.
                                    “THE BLUE BIRD"

「投票しよう」というシンプルな主張を説明するために大変凝った表現をしています。同じことを言うにしても言い方一つで全く別のものになってしまうのです。rhetoricは英語力によるところが大きいのですが、いわゆるテクニックというものが存在し知っているだけでかなり有利になると思われます。以下に前のマニュアルの復習もかねて、それらのテクニックをintroduction・conclusion(ending)・ スピーチ全般とに分けて考えていきましょう。なおここでの説明は'93J.U.E.L. SPRING SEMINER のマニュアルからも引用させてもらいました。

(1)INTRODUCTIONにおけるRHETORIC

introductionの役目は1.audience・ジャッジの関心を引き付ける、2.bodyの内容を示唆することにあります。その観点に立つと以下のようなテクニックが考えられます。例については前のマニュアルを見て下さい。

★物語風に始める
スピーチの内容を暗示する経験談やエピソード、例え話をする。

★セリフで始める
スピーチの内容を示す鋭い一言を持ってきたり、自分がそのスピーチをつくるきっかけになった誰かのセリフを冒頭に出す(しかしこのような大切なキーワードはイントロでまだaudienceの耳が慣れないときにバッと出されると聞き取られない場合があるので注意しましょう)。

★疑問文で始める
audienceにある質問を投げかけてスピーチのトピックを親しみやすいものにする。

★引用で始める
ある有名な人の格言や名言、ことわざなどを冒頭に出す。

★背景や状況を示して始める
漠然とこれからやるスピーチのアウトラインを示す。

★audienceの注目を集めるように始める
rhetoricと言うべきものではないが、スピーチをわかりやすくするための道具を見せたり、マイクを抜いてステージを歩き回ってみたり、写真やポスターを見せたりする。やりすぎは禁物で、自分のスピーチをサポートする必要最低限にとどめておくのが無難。

★はっとするような言葉で始める
audienceがエッ?と思うような言葉を冒頭に出す。
   ex. 「女は男より強い」

introductionでのテクニックは以上です。これらはすべてillustrationのテクニックでもあるのですがillustrationをrhetoricに高めることができるかどうかはスピーカー次第と言えます。(conclusion・スピーチ全般のrhetoricでも同じです) introductionには2つ注意点があって、まず本文との結びつきがあげられます。conclusion(ending)に関しても同じことが言えますが、introductionとbodyが滑らかにつながっていないとスピーチを分かりにくくする原因となります。あるジャッジの人は“You should talk about something which has something to do with the topic(in the introduction)."とおっしゃっていました。すなわちbodyと関係ないことは喋るなということです。introductionとbodyはただつながっていればいいというのではなく、body全体(スピーチのトピック)とintroductionが内容的につながっていなければならないのです。また、前述したようにintroductionでbodyの内容・方向性を示すことが必要です。そうしないとaudience ・ジャッジ共にスピーチの内容がなかなか見えてこず、「いったい何を言いたいんだ」ということになります。これはスピーチ大会のジャッジコメントでしばしば指摘されることで、それだけできていない人が多いということです。introductionの最後のところで“Today I'd like to talk about〜" などと添えておくのがポピュラーな方法です。


(2)CONCLUSIONにおけるRHETORIC
conclusionはスピーチのシメに当たる部分で、1.自分の主張をまとめる、2.audienceの心に余韻を残す(これを特にendingという)という2つの大きな役割があります。特に後者はrhetoric 能力と大きく関係するもので、実際に余韻を残そうとしてもなかなかうまくいかないものです。次にあげるテクニックも使い方次第で余韻を残せるかどうかが決まります。果敢にチャレンジしてみてください。

?サビを使って盛り上げる
サビとは歌などでもっとも耳につきやすいメロディーラインやフレーズのことです。印象的なサビになればなるほど無意識のうちに頭の中で回って気がついたら口ずさんでしまうなんてことがよくあります。スピーチでも耳につくサビがあればaudienceもジャッジもあなたのスピーチをずっと覚えていてくれるでしょう。サビは主にスピーチのassertion を述べるときやconclusion ・endingで使われますが、ただマテの中に含まれていればよいというのではなくサビのためのdeliveryを工夫しなければ効果は半減します。サビを用いるときは特にdeliveryに注意しましょう。ここまですべて例を省略してきましたが特に難しいテクニックなのでいくつか   の成功例に触れておきます。


例1)語句の繰り返し

The political process is not identical in Brazil and Japan. But, as in those Brazilians, there should be an ever-lasting flame somewhere in our hearts; a flame of desire for a better country ; a flame strong enough to make us despair at the injustice we see in politics today ; a flame which can bring about change. This flame may be but a small flicker of light, but we must fan it into a roaring conflagration of change. How are we to achieve this? Voting is the answer.
                                    “THE BLUE BIRD"

Today, we do more than celebrate America ; we rededicate ourselves to the very idea of America : An idea born in revolution and renewed through two centuries of challenge ; An idea tempered by the knowledge that, but for fate, we the fortunate and the unfortunate might have been each other ; An idea ennobled by the faith that our nation can summon from its myriad diversity the deepest measure of unity ; An idea infused with the conviction that America's long heroic journey must go forever upward.
                        “President Clinton's Inaugural Address"

これらは同じ語句をくり返すことによって余韻を残しています。例2はAn idea +過去分詞となっておりかなり凝っていますが、語句の繰り返しそれ自体は比較的簡単なテクニックだと言えるでしょう。


例2)フレーズの繰り返し

I have a dream that one day “every valley shall be exalted, every hill and mountain shall be made low ; the rough places will be made plane, and the crooked places wll be made straight ; and the glory of the Lord shall be revealed, and all fresh shall see it tiogether." This is our hope. This is the faith that I go back to the south with. With this faith we will be able to hew out of the mountain of despair a stone of hope. With this faith we will be able to transform the jangling discords of our nation into a beautiful symphony of brotherhood. With this faith we will be able to work together, to pray together, to struggle together, to go to
jail together, to stand up for freedom together, knowing that we will be free one day.
I HAVE A DREAM"

Now let us fight to fulfill that promise. Let us fight to free the world to do away with national barriers, to do away with greed, with hate and intolerance. Let us fight for a world of reason, a world where science and progress will lead to all men's happiness. Soldiers, in the name of democracy, let us all unite!

                                  “The Great Dictator"

同じフレーズを繰り返した例です。より印象的なものになりますが、それだけ難しくなります。



以上で約4割です。これ以降は印刷原稿しかないのでアップロードは未定です。要望があれば頑張ってパソコンに取り込みますが、誰かボランティアで打ち込みしてくれませんか〜〜??