さ ざ ん か

2007年 米田 実  詩・曲

花の少ない季節を 待ちかねたように
真っ赤な花の さざんかが咲く
深い緑につつまれて
冬枯れの街に ほのかな色を添える

この場所で 街を見つめていた
君はきっと見ただろう
あの日 闇に飲み込まれ
変わり果てた街並みを
声を嗄らし ガレキに向かい
叫び続ける人たちを

もう ここには 昨日までの街はない
枝一杯に花を付け
笑顔を振りまくさざんかを
誰が目に留めるのか

今 改めて思います 悲しいけれど
あの年のさざんかを覚えてはいない

12年の時が過ぎ 今日は1月17日
この道を歩くメモリアルの人たちを
励ますようにさざんかが咲く
生まれ変わった街並に
あの日と同じさざんかが似合う

でも何か 忘れて来た気がします
遠い日々の 記憶の片隅に

明日のために 昨日を忘れ
立ち止まることもできず
前だけ向いて歩いてきた

あの時流した涙の意味を
生きていた命の重さを
思い起こそう もう一度
伝えたい いつまでも

※ 2007年のメモリアルウォークで出会った山茶花に寄せて

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