山吹頭巾-1





 むかしむかし、あるところに、山吹頭巾という者がおりました。

 花が咲くようにほほ笑み、声はまるで小鳥が歌うような可憐な美少女――だったはずなのですが、キャスティングの都合上、銀髪で180センチ超えの、どうやってもカタギには見えない少年がその役を負っていました。

(※みなさまの想像力にとって試練でしょうが、ガタイがよく目つきの悪い男が、例のかわいらしい民族衣装をまとっているヴィジュアルでお願いします)


 少年は、その名の通りの頭巾をかぶっているのですが、足元がスカスカする服装よりもさらに、この頭巾を嫌っていました。

 だって、この頭巾ときたら、どこかのテニス部のユニフォームでもあるまいに、緑色の地に山吹色で「く」の字型のラインが二本も入っているのです。

 おまけに、頭巾をかぶると彼ご自慢の逆立てた髪型がつぶれてしまうのでした。

 この不満を、彼の母親(……に配役された東方)にぶつけると、東方お母さんは山吹頭巾の姿をとっくり眺めた上で、

「ま、仕方がないさ。見栄えはよくないけど、それがなかったらタイトルに偽りが出るだろう?」

 とため息をつきました。何とも世知辛い話ですが、彼も登場人物である以上、その辺りはどうにもなりません。
 どうにかなるものであったなら、東方お母さん自身もスカートを穿いてはいなかったでしょう。

「チッ」

 山吹頭巾は、青い空とのどかな森にそぐわぬ舌打ちを響かせました。

 この少年の気性は、外見通りに全く温和ではありませんでしたが、舞台がメルヒェンの森なだけに絡む相手もおらず、

「オレにしゃしじゅ(指図)しゅるな!」

 と凄んだところで、雲がぽかりと流れるばかりでした。
 普通の人なら癒されるはずの穏やかな環境で、山吹頭巾はかえってイライラを募らせては煙草を喫う毎日でした。