社内通訳・翻訳者
会社に毎日通うようになって早1年半、このあたりでいままでを振り返ってみよう。
通訳者が少ない場合、その仕事は多岐にわたる。2人の打ち合わせから、その課全体のミーティングまで規模はさまざま。


 
定例会の場合は、議題案件が先に提示されているので、それに関する資料の下読みと単語のチェック。ほとんど毎日使用している単語を使用するので、問題はないが、たまに予算に関する打ち合わせなどがあるときは、金融関連の単語を軽く見ておくとよい。

始まるとアメリカ人上司が司会進行役兼主要発言者になるので、タイミングをみて逐次で訳してゆく。
息があうようになると、とてもやりやすい。私の上司はウィスパリングは好まないので、全て逐次で訳していった。また、私の通訳の間に考えをまとめているような節が見られた。


 
個別ミーティングは日本人から提案されることが多いので、事前にどんな内容か聞いておく。
事前にある程度内容を把握しているのと、そうでないのとでは訳の出方、スムーズさにおいて違うように思う。特にアメリカ人上司はいつもは日本にいないので、考えをつかむまでに時間がかかり少し困る場面もあった。しかし、何度もこなしているうちに思考回路が分かるようになり、だんだんと先が読めてくる。


 
プロジェクトを立ち上げて、それに通訳として参加すると、様々なことが関連して起こってくる。
まず、
会議の手配。進行役の人から、参加者と日時が伝えられると、それに従いメールで参加者に通知。事前資料がある場合はその翻訳と配布。また、会議室の手配も欠かせない。
このように事前準備を行なうと、当日は司会進行役の人について通訳を行なう。

 全てを英語で進行したいという英語のできる方たちのはやる気持ちを静めて、英語の分からない人たちに通訳サービスを行なうのは結構難しい。

また、議題案件を事前に良く知っておくのとそうでないときとは、パーフォーマンスに大きな差がでる。まだ、新米だからかもしれないが、今でもそうだ。だから、事前の資料集めは社に通訳者にも欠かせない。できるだけ会議の主催者に連絡をとって、議題案件の内容を詳しく聞いておくことが好ましい。

 違う課の通訳をピンチヒッターで頼まれることがあるが、本当にそういう時は困るものだ。直前にちょっと来て欲しいと呼び出され、大きな会議の通訳に借り出されるとほんとにやりにくくて困ることがある。でも、同じ会社だから分かるようなものと思いがちだが、セクションが違うと驚くほど違うことをしているものだ。
常に他のセクションでもどんなことをしているかぐらいは把握しておいた方がいいかもしれない。

 私の場合直属の上司が逐次通訳が好みであったので、逐次ばかりであったが、もう一人の人はウィスパリングでずっと通していたものだ。好みがあるようなのでそれにあわすといいかもしれない。


 
電話会議の場合は、顔が見えないだけでほとんど同じだが、普通の電話でスピーカーホンにしただけの場合は非常に聞き取りにくく、やりづらい。私の会社も当初は一般電話でほんとに聞けなくてこまったが、途中から会議専用電話になったので、その問題も解消した。いまはクリアで臨場感あふれる声を聞いている。ただし、やはり顔の見えないコミュニケーションであるので、会議が沸騰してきたときはやはりやりづらいかもしれない。


 エンジニアとの
技術通訳は苦手の一つ。私にしてみれば随分と努力したつもりだが、エンジニアの知識には到底およばない。その付け焼刃の知識でいかにつまくコミュニケーションを図るか、コレは大きな問題。
一番良いと思われるのが、できるだけ短文にしてもらって、丁寧にメモをとり、そのまま訳すのが良いと思う。どうしても分からないときは図を書いてもらう。たいていこれで問題は解決する。
アメリカ人エンジニアはいかにして短時間の内に多くの情報を伝えるか、に腐心するようで、早口で巻くし立てるので困った。ただ、ウィスパリングをするからと言って、ゆっくりしゃべってもらうと、これが本人にも好評で、つまり良く考えながらしゃべれると、言っていた。


 他には、たわいのない会話の通訳も結構需要がある。日本人は色々と聞きたいことがあるのに、なかなか切り出せないでいることが多いので、普段の会話も手を抜かずに通訳すると喜ばれる。ただ、ランチのときなどは私はあまり好きではないが。自分が食べられないので。



 
翻訳はまず日常的に発生するのが、メールの翻訳。送受信両方あるので、これが結構料が多い。また、じっくりと読めるので、微妙なニュアンスまでも気を使う。誤解のないように細心の注意を払って訳さないと後で問題になりかねない。

メールだからと言って、簡単に済ませられない。 いろんな案件がメールで処理されるから。メールが大きな意味を持つことも多い。 特に、アメリカ人上司やベンダーがアメリカにいる場合は、メールが大変大きな意味を持つ。 だから、決して簡単に考えずにきちんと訳すことが大切。

添付資料は明らかに大切なので、気をつけて訳す。 分からないことがあれば、すぐに聞く。



技術文書の翻訳の場合は訳語に注意。 内容がわからない場合がほとんどなので、出来たら他の人に解説をしてもらうか、インターネットでできる限り情報を集めて、それから翻訳にかかる。 

契約書の翻訳も気を使う。 なれない分野の場合は、結構時間がかかるので、いつまでに仕上げるのかを必ず聞いて、下情報の検索から始める。 共同で仕上げる場合は、訳語の統一などにも注意する。