ソフト・エネルギー・パス

 

エネルギー政策の基本方針

 ハード・パスとソフト・パスの二つがあります。前者は今後もエネルギー需要は増大し、大幅なエネルギーの不足を埋めるために原子力や石炭のような代替エネルギーを開発すべきという考え方、後者はエネルギー供給の中心を太陽熱、風力などの再生可能エネルギーに置き、エネルギーの需給ギャップを閉じるために需要減(省エネルギー)に依存するという考え方です。後者は前者に比べて環境破壊が少なく、核拡散の危険性も少ない、集中管理よりも分散管理志向型となります。

  エイモリー・ロビンズは電力の需要は不可欠の用途のみに限られるとしたら、電力必要量は大幅に節約されることを示しています。ハード・パスからソフト・パスへの転換は単なる技術問題ではなく、むしろ価値観の変化がその背景にあることを示しています。ハード・パスは効率重視並びに「More is better. 」、ソフト・パスはゆとり、質素、多様性並びに「Enough is best.」という考え方です。

ソフト・エネルギー技術

  ソフト技術の特徴は次の5点に要約されます。

  1. 太陽、風、植物といった再生可能なエネルギーのフローに依存し、枯渇してしまうエネルギー資本ではなく、エネルギー所得に依存します。
  2. 分散型であり、それぞれの状況に応じてもっとも効率的に設計された小さなエネルギー供給単位による供給の集合によって成り立っています。
  3. 理解が容易で、秘伝などを必要とせずに秘密ではなく、近づきやすい技術です。
  4. 最終エネルギー需要の規模と地理的分布に適しており、ほとんどの自然エネルギーの流れをただで利用します。
  5. 最終需要の用途に対応したエネルギーの質に見合ったものです。

原子力の魔人を再び封じ込める

  地上の生命の基本的事実は、変わらないということです。世界が数十億年前どのように動いてきて、今どう動いているか、人々はどう行動するか、太陽光によって与えられた化学エネルギーがいかにして生命のシステムを非常に安定で複雑なものにしているか−すべては、今までと変わらないのです。

  この永続性のなかに生存のためのカギがあります。われわれを今日あらしめている生命力を窒息させたり、とって代わろうとせずに、それとともに生きることです。

  太陽の光は色々なやり方で、数十億年の間、この惑星の奇跡的な生命の形をつくり上げてきました。そこには最良のエンジニアリングがあり、広汎な安全余裕があり、偉大な設計の経験が含まれていることをわれわれは知っています。それはわれわれの必要を、十分に満たし、われわれの貪欲を制限しもします。・・・それは安全で、永遠で、普遍的で、無料です。太陽は東西、南北、すべてに等しく降り注ぎます。自立を助け、分散を育て、支払いのバランスをくずしません。その質は一定で非常に高いのです。

 太陽の光は地球を収奪せず、倹約させ、再生させます。人々を突然変異させず、陽気にし、輝かせます。とりわけそれは、この小さな惑星の上に絶えず存在する限界を重んじます。生命の微妙なはかなさ、人間社会の不完全さ、人間のつくったものの弱さ。われわれはまだ明るく生き、光とともに生きることを選べます。そして人生を選べます。-パンドラの箱の底で待っている、残された希望をつかまえれば。