ラリアット流行を考える



ウェスタン・ラリアットの元祖は言うまでもなくスタン・ハンセンです。ハンセンがラリアットを武器にニューヨークのWWWF(現在のWWF)で大暴れしたのは1976年のことでした。その後、新日本に来日し、日本にラリアットを持ち込みます。これによって日本でもラリアットが大流行し、現在のような状況へとなっていくわけです。

ちなみに、アメリカではこの傾向はもっと顕著で、現在のWWF(どちらかというと若い選手が多い)では使わない選手より、使う選手のほうが多いという状況だと思われます。確かに、ラリアットは見た目にも派手ですし、試合のテンポがスピードアップするので、現在のプロレスの流れにマッチした技であるといえます。

しかし、ここまで誰もがラリアットを使ってもいいのでしょうか? 最近マット界は「レスラーの個性がない」とよく言われます。プロレスはどんどん進化していくわけですから、誰もが器用に飛び技、投げ技、固め技を使いこなしますが、それだけで一流のレスラーにはなれません。

例えば、
頭突きだけをフィニッシュに使い続けたボボ・ブラジル
アイアンクローだけをフィニッシュに使い続けたフリッツ・フォン・エリック
エルボーだけをフィニッシュに使い続けたジョニー・バレンタイン
こういった選手はラリアットは使いませんでしたが、十分に観客を納得させるだけの技術を持っていました。

ラリアットそのものがダメだと言っているわけではありませんが、自分の技術のなさをカバーするために、無理矢理派手な技を使っているようなレスラーが多いような気がします。

そう考えると、まずラリアットを使わない闘魂三銃士の三人のレスリングセンスはやはり高いレベルにあるといえるでしょう。




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レスラーのタイプとは?



このコラムは少しすれっからしな視点に立って話しています。

プロレスほど選手一人一人の個性が強いスポーツも珍しいと思います。攻撃的なタイプ、職人肌なタイプ、受け身のうまいタイプ、キャラクター重視タイプ…………等々、レスラーの個性をどのように分けるかは十人十色です。

さて、私はレスラーを大きく分けると「攻撃タイプ」「受け身タイプ」「おんぶされるタイプ」の三つに分かれると思います。

攻撃タイプとは、文字どおり相手を攻めることで自分を輝かせる選手で、例としてはロードウォリアーズ、 長州力、 スタン・ハンセン、 ベイダー、 ブレット・ハート等が挙げられます。

次に受け身タイプとは、受けることによって自分を輝かす選手で、例としてはアントニオ猪木、 藤波辰爾、 三沢光晴、 ショーン・マイケルズ、 外道、 蝶野正洋、 等が挙げられます。

最後に、おんぶされるタイプとは、相手が試合を引っ張ってくれることで自分を輝かす選手で、例としてはアンダーテイカー、 神崎人生、 ケビン・ナッシュ等がいます。

攻撃タイプは、一見するとものすごく強いのですが、ある程度の試合数を見ると、いつも試合のパターンが一緒であることに気付いてしまいます。
つまり、例えばロードウォリアーズの試合なら、ホークとアニマルが順番に相手チームにダメージを与えていき、最後にダブルインパクトの体制になります。このダブルインパクトが決まるかどうかで、試合の勝敗が決定してしまいます。決まればそのままロードウォリアーズの勝ち、そうでなければ相手チームの勝ちです。同じ事は長州のリキラリアット連発にもいえます。
こういうタイプが長期チャンピオンにつくと、誰が挑戦者でも同じ試合しかしないために、お客を呼べなくなり、チャンピオンとしては落第ということになります。これはロードウォリアーズがキャラクターが飽きられた現在無冠であることや、長州が藤波に比べると王座期間が短いことに現れています。

反対に受け身タイプだと、とりあえず相手が攻めてくるのを受けるわけですから、対戦相手によって、試合内容がガラリと変わります。
もし受け身タイプがチャンピオンだと、タイトルマッチ毎に試合内容が大きく変わるわけですし、必要以上に自分の強さをアピールしないので「次はチャンピオン陥落じゃないのか」とタイトルマッチ毎に思わせることができ、観客動員的にもいいチャンピオンになれます。
これは古くはハーリー・レイスやニック・ボックウィンクルやリック・フレアー、現在では藤波と三沢がいい例であるといえます。

一般的に、素人目に強く見える「攻撃タイプ」よりも、一見するとあまり強くは見えない「受け身タイプ」の方が玄人好みと言われています。
また、全体的に新日本は攻撃タイプ、全日本は受け身タイプと言われていますが、これは新日本にはガチガチの攻撃タイプであったカール・ゴッチの影響があり、全日本は長く一人で日本プロレスのチャンピオンを支えていたジャイアント馬場の影響によるものでしょう。

おんぶされるタイプとは、一発一発の技はすごいのだが、キャラクターを重視し過ぎていたり、試合の組み立てが下手な選手に多いです。懐の深い選手(受け身タイプに多い)との試合で、相手が試合を引っ張ってくれた時に初めて真価(と言えるかは分かりませんが)を発揮するわけです。
アンダーテイカーやケビン・ナッシュは体が大きく、技に迫力があるのですが、残念ながら試合の組み立ては下手です。しかし、ショーン・マイケルズやブレット・ハート(ブレットは試合の組み立てが抜群に上手い)との試合では年間ベストバウトを生み出しています。
神崎人生も三沢とのシングルマッチやサスケとのシングルマッチでは実にいい試合をしていますが、それ以外となるとイマイチ印象にないのが実状です。

私の理想とするレスラーは、『基本的には「受け身タイプ」だが相手によって巧みにタイプを変える選手』です。




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技の話1「エースクラッシャー」



今、日米で大流行中の技にエースクラッシャーがあります。
エースクラッシャーは88年にジョニー・エースが初公開したものですが、形としては(?)ビル・ロビンソンが日本で初公開したショルダー・ネックブリーカーと同じです。違う点は相手の向きで、エースクラッシャーは自分の肩に相手のアゴを乗せるのに対して、ショルダー・ネックブリーカーは相手の後頭部を乗せます。

元祖のジョニー・エースの他にも、エースクラッシャーをフィニッシュホールドとして用いているレスラーとしては、この技でWWF世界ヘビー級を獲得したスティーブ・オースチンと、WCWのダイヤモンド・ダラス・ペイジが代表です。
オースチンのエースクラッシャー(ストーンコールド・スタナーと呼ばれる)は完全なアゴ砕きなのに対して、ペイジのエースクラッシャー(ダイヤモンド・カッターと呼ばれる)はマットに相手の顔面を叩きつけるフェースクラッシャー気味の技です。また、船木勝一、小島聡、スカル・フォン・クラッシュ、ディサイプル、ディスコ・インフェルノといった使い手が続々と現れています。

エースクラッシャーに最も強いこだわりをみせているのは、やはり元祖のジョニー・エースでしょう。基本型、ギロチン型、奈落式、トップロープ併用式、雪崩式、助走式、ツープラトン式(バックドロップと合体するパターンと、パワーボムと合体するパターン、スカイハイ型、などがある)、メキシカンクラッシャー(ショルダースルーで相手を持ち上げ、落ちてくるところにエースクラッシャーを決めるという超荒技)、ムーブメントクラッシュ(パートナーのリフトアップスラムを受けてのエースクラッシャー)……と、バリーエーションでは他の追随を許しません。
エースが使っていないタイプのエースクラッシャーに“ファイヤーマンズキャリーの体勢からのエースクラッシャー”があります。これはマーク・メロが「スピニング・フェースバスター」という名称で使っている技で、全日本のマウナケア・モスマンも「ハワイアン・クラッシャー」の名前で使っています。

初公開から僅か10年で、これだけエースクラッシャーが進化したことは驚異的なことです。


参考書:流智美のこれでわかった!プロレス技 上・下半身編




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理不尽大王・冬木語録



理不尽大王の異名を持つ冬木弘道ですが、実は彼は頭が大変キレる人物で、一度リングを離れると、理論整然としたコメントを次々と言うひとです。
ここではそんな彼のセリフの内、主にプロレス観についての話を (最近の冬木はインディー統一を目指しているので、経営に関しても色々と面白いことを言っている) 集めてみました。


危険技について
基礎体力のない奴が見よう見まねでやる、それが危険技だよ。頭から本当に真っ逆さまに落ちていく奴は運動神経が鈍いんだよ。ただ、ようはその前だよ。もうどうしようもない状態で頭から落とされると、イッちゃう場合はあるよ。だから俺がみんなによく言うのは「素直に負けなさい」ということ。最後まで意地を張らなくても、これを返しても次に技をもう一発食らえば負けるってわかった時は、素直に負けなさいと。でも若いうちはそれが分からないからケガしちゃう。ケガをするにはそれなりのプロセスがあるんだよ。

ケガ&キャリアについて
若いうちは、どうしてもケガするよね。キャリアを積むとケガはしなくなるよ。わかるんだよ、「これはケガする」って。ここは動いちゃいけないとか、これは受けちゃいけないとかが、自然に分かってくるようになるんだよな。若い選手は勢いでガンガンいくとこがあるし、体が少々おかしくても「いいや」って向かっていっちゃうでしょ。例えば、試合中に頭を打って首とか手が痺れたとするよね。そういう状態になると、俺は元に戻るまで絶対に動かないもん。無理して動いちゃうと、後々どこかしらおかしくなる。
俺がそういうこと分かってきたのはキャリア10年過ぎた辺りからかなあ。「プロレスは十年やって一人前」て言うけど、あれはホントだよ。ということは、10年やってダメな奴は一生ダメってことだよ。

体の大きさについて
体小さい奴は、頭を使えばいいんだよ。体が大きい奴は、頭を使わなくていいんだよ。体を使えばいいんだから。でも、小さい奴は、絶対に頭を使わないと。それでちょうど五分。体が大きくて頭を使う奴がいたら、それはかなわない。

レスラーと素人について
プロレスは甘くないんだよ、誰にでもできるもんじゃないんだよ。「好きだからやってる」じゃ通用しない。プロレスが好きだったら誰でもレスラーになれる? 別に誰でもレスラーになっていいんだよ、好きだったら。俺だって好きだからなったんだよ。なったらいいけども、俺の場合で言うと、デビューまでに一年かかったんだよ。今のインディーで練習生生活を1年も経験する奴はあんまりいないよね。ということは基礎体力もなんにもなしでデビューしてるってことだ。まずはそれをなくさないと。

団体の規模について
小さな団体が独自で興行を打っていくなんて、そんなことはあり得ない。そういうことは、あっちゃあいけないんだよ。プロレスって華やかなスポーツなんだよ。ちっちゃくこじんまりやったらダメなんだから。プロレスは個人競技だけども、興行としてみたら団体競技なんだから。そこを勘違いしたらダメだよ。みんながそれぞれ役割を持ってるんだから。

八百長論
俺が「ショー的要素の強いプロレス」って言ったら拒絶反応する人がいるんだよ。日本で「ショー」っていうと、八百長のことになっちゃうんだよな。これ、わかんない人にはいくら説明しても、分かってもらえないんだよ。

UWFについて
UWFっていうのは進化したプロレスとかいってるけど、違うよな。あれは今のプロレスを退化させて、ガス灯時代に戻しているだけなんだ。大体、俺はプロレスが格闘技だと思われるのも好きじゃない。プロレスはプロレスだよ。

バーリ・トゥードについて
全く興味ない、あんなもん。くっだらない。別にレスラーが出場してもいいけど、勝てるわけないじゃんか。餅は餅屋だよ。普段あんな試合してないのに、なんで勝てんだよ。俺、人の顔面殴るの嫌だもん。大体さ、腕が折れるまで引っ張るとかできないもんな。

新日本と戦った感想
感想として一ついえるのは、新日本のスタイルには間がないよね。そこが全日本と違うところさ。だから、ぼーっとしていると、いいようにやられて終わりになっちゃう。気がついたら、あっ、終わっちゃったって感じだ。過激だとか、そんなのは関係ないな。間の取り方の問題だ。
橋本真也とは、93年の3月に2度ほど戦ったけど、別にどうということなかったよ。あいつのキックだって、天龍のほど効かなかったよ。あと、レスリングに対してちょっと頭が固い気がしたな。プライドを持ち過ぎるというか、自信過剰というか。まあ、お互いプロだから試合は成立したけど、好き好んでやりたい相手ではないよ。

馳浩
新日本の選手で対戦した中で、コイツおもしろいなって思った選手が馳浩だ。まあ、新日本の中でも異質な感じがしたよ。元ジャパンプロ、それも全日本のリングに長州が上がっている時に入団している。本人も馬場さんから受け身を教わったって言ってるんだから、根っこの部分で俺と共通点があったのかもしれないな。それまで当たった新日本の選手っていうのは橋本みたいに一本気っていうか、一直線に攻撃してくる選手が多くて、新日本の選手っていうのはそういうもんかと思っていたところにヤツと対戦したんで、正直言って面食らったね。馳は試合の中で自分から引いたり、かと思うと強引に押してきたり、とにかくうまい選手だったよ。

三沢光晴
三沢が今トップをとっているけど、わかるよ。三沢は昔から、周りのみんなを引きつける魅力があったんだ。たとえどういう状況で、どこの団体に行ってたとしても、トップになっていたろうよ。それだけ三沢にはセンスがあったってことだ。もちろん本人の努力もあるだろうけど、三沢という男は、もともといい星の下に生れているんだろうな。

長州力
あの人は団体だとか、そんな小さな枠に関係のないスケールの大きな人だ。リング上の因縁だとかにもとらわれないスポーツライクさも持っている。力も強いし、気も強い、レスリングも強い。プロとして理想的なレスラーかもしれないな。

高田−ヒクソン戦(一回目)の感想
見たよ。俺だって何千万も金をくれるんだったら、同じことやってやるよ。俺だったらもっと早くアッサリ負けてる。プロレスのルールでやってヒクソンに負けたらいけないよ。でも、裸足でやって、しかもプロレスのルールじゃないんだから。いいんだよ、あんなの負けたって。でも高田は中途半端に負けてたけどな。もっとアッサリ負けるか、最後の最後まで頑張るか、どっちかにすればよかったのに。あんなに金もらってるんだから、一月くらい入院するつもりで頑張ってもいいような気がしたけどな。何千万も貰うんなら、それが礼儀だと思うけどな。



    参考資料
  • 週刊プロレスNo.749,778,840,841,869,889
  • 「理不尽大王の高笑い」 フットワーク出版社



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日米技の名前の違い



日本とアメリカで呼び名が違う技の内、代表的なものをまとめてみました。


日本 アメリカ
ブレーンバスター バーチカル・スープレックス
ラ・ケブラーダ アサイ・ムーンサルト
河津落とし ロシアン・スイープ
サイド・レッグ・スイープ
ダブルアーム・スープレックス バタフライ・スープレックス
フロント・スープレックス ベリー・トゥ・ベリー・スープレックス
雪崩式ブレーンバスター スーパープレックス
トラースキック スーパーキック
ラリアート クロース・ライン
ボディアタック クロスボディ
ギロチンドロップ レッグ・ドロップ
ショルダースルー バックドロップ
フライング・ボディシサーズ テーズ・プレス
腕ひしぎ逆十字固め フジワラ・アームバー



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名勝負論・四天王対決



平成になってから、プロレスはもの凄い勢いで進化しています。
全日本プロレスでもたくさんの黄金カード(ドル箱カードとも言う)が生まれました。三沢VS鶴田、川田VSハンセン、小橋VSウィリアムス、川田VS小橋等々…。その中で私が最も好きなカードが四天王対決(三沢&小橋vs川田&田上)でした。今では三沢、小橋、川田がそれぞれの軍団のトップに立っているので、実現は難しいと思われるこのカードの全試合結果は下の通りです。

1、93年

6月

1日

○川田(29分12秒)小橋×
2、93年

12月

3日

○小橋(23分24秒)川田×
3、94年

5月

21日

○小橋(40分25秒)田上×
4、94年

11月

25日

(30分時間切れ引き分け)
5、95年

1月

24日

(60分時間切れ引き分け)
6、95年

6月

9日

○川田(42分37秒)三沢×
7、95年

10月

15日

(60分時間切れ引き分け)
8、95年

11月

21日

○川田(29分1秒)小橋×
9、95年

12月

9日

○小橋(27分4秒)田上×

約二年半の間に9回対戦し、戦績は3勝3敗3分けの全くの五分であることが分かります。この全9試合のうち私は、ノーテレビ・ノービデオだった8.以外は全て見たのですが、その中で最も”いい試合”と思ったのが、札幌での3.でした(もちろん、他の勝負も全て名勝負と言える内容ですが)。序盤からのピリピリした精神戦、川田の執拗な蹴りを受ける三沢、ヒザを痛めながらもムーンサルトを打つ小橋、小橋に対して意地を見せる田上等、試合は白熱し、世界タッグ史上最長タイム(当時)である40分という時間もあっと言う間に感じられました。

ところで、世間一般では6.の試合がベストバウトとされています。これはおそらく川田が三沢から初ピンフォールを奪ったという事実がそうさせたのでしょう。

また、94年の東スポのプロレス大賞と週刊ゴングのGWYSでは3月2日、WARでの天龍&原VS大仁田&後藤が選ばれています。これはWARとFMWの初遭遇というシチュエーションと大仁田が天龍からフォールを奪うという意外な結果が相俟ってそうさせたのでしょう。また、週刊プロレスのファン投票によるプロレスグランプリではベストバウトは3月5日での馬場&ハンセン VS 三沢&小橋が選ばれています。これは56歳で武道館のメインイベントに立った馬場と、その馬場から初めてフォールを奪った三沢の印象が強いからでしょう。

いつかのインタビューで川田が「名勝負かどうかは、試合やる前で半分くらいは決まっている」と言っていましたが、私の中では最高のタッグ戦だと今でも信じてやまないこの試合が、特にこれといった賞を受けていないのを見ると、歯がゆい思いを感じてしまいます。




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