テーマ曲を考える



今回はプロレスのテーマ曲に関する話です。
ある程度の期間プロレスファンをやっていれば、これを読んでいる皆さんにも、それぞれにお気に入りのテーマ曲というのがあるのではないかと思います。


テーマ曲が「いい曲だ、似合ってる曲だ」というのには、多分に個人の好みというのが入ってきます。また、最近のメジャー団体などであれば、ノウハウのある人が一括して作ってる場合が多いので、「あまりにもカッコ悪い曲」というのもあまりありません。

ところで、ベルトの価値に関してよく言われることとして、「ベルトの価値は、試合内容によってのみ高められる」というものです。
こういうことを最初に言ったのは、馬場の妨害もあってNWAになかなか加盟できなかった猪木だそうですが、まったくもって正論です。

私は、同じことがテーマ曲に関しても言えると思います。つまり、
「テーマ曲の凄みは、レスラーによってのみ高められる」
というものです。


例えば、武藤のテーマ曲であった「トライアンフ」。
これは、武藤が長期間のスランプ・欠場を経て、橋本から初のIWGP奪取(95年5月3日)。そして、IWGP王者として初のG1クライマックス制覇(95年8月)。と、完全に驀進状態になった武藤が、満を持して使い始めた(95年9月から)テーマ曲でした。
ところが、この頃の武藤のファンの間での実際の評判というのは、スペース・ローン・ウルフ時代とさして変わっておらず、「試合展開がクラシック過ぎる」「感情移入できない」「上からプッシュされるのが不思議だ」というようなものが大半を占めていたと思います。
この評価を一気に覆すことになったのが、95年10月9日のUインター・高田延彦との一戦です。
大一番で外敵から新日本を守った。ドラゴンスクリューから足4の字という、新たなフィニッシュパターンを編み出した。ということで、強いチャンピオン・武藤という時代が始まります。
この時、高田がギブアップした瞬間にかかった曲が、もちろんトライアンフです。うまい具合に、TVカメラは武藤のアップを映しました。これを見た時、私は思わず「カッコいい〜〜」と唸ってしまいました。

そんなわけで、私はトライアンフが好きです。
もちろんこれは、単に曲がカッコいいというだけではなくて、武藤が自らの実力を開花させた当にその瞬間に鳴っていた曲ですから、私の心に強い印象を与えているわけです。

このように、テーマ曲はレスラーによって高められるわけです。



最近では、三沢にシングルで完勝した秋山のテーマ曲に随分と貫禄というかオーラが出てきたように思います。ま、7秒のせいでオーラも減ってしまいましたけどね(笑)。

逆に「何か一つ、上昇するキカッケが欲しいな。よし、テーマ曲を変えてみよう」というような魂胆でテーマ曲を変えても、あまり意味はなさないわけです。
健介の「テイク・ザ・ドリーム 」がいい例です。すごく中途半端な時期に変えましたから。後に(97年8月から)に新日で3冠(IWGPヘビー、タッグ、G1)を制する時まで我慢すればよかったんですけどね。



最後に、私の個人的な好みで、最も好きなテーマ曲は、アンダーテイカーの「GRAVEYARD SYMPHONY」です。
やっぱりレスラーの風貌・曲の雰囲気・レーザー光線の演出などを総合して、この人の入場シーンに勝てるレスラーはいないと思います。



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WCWの選手層



つい1年ほど前まで、WCWといえば「豊富な選手層を抱えている」というイメージがありました。また、事実、その通りでした。


ゴング名鑑1999年版を見てみると、
ゴールドバーグ、ホーガン、ナッシュ、ホール、スティング、ルガー、フレアー、ヒットマン、DDP、サベージ、といったアメプロの大御所達から、ノートン、ビガロ、ベノワ、マレンコ、サターン、エディ、レイヴェン、ジェリコ、ミステリオJr、フービー、ヘニング、フィンリー、Dスミス、ブッカーT、キッドマン、アームストロング兄弟、等といった実力者達まで、本当にこれ以上はないという大所帯でした。
その後もシッドやJJが加わっています。

これだけ選手を揃えていながら、ストーンコールドとマクマホンの抗争に人気で勝てなかったわけですから、皮肉なものです。



そのWCWもついにリストラを始めています。大御所達はあまり動きませんが、最近にWWFに移籍した選手を列挙してみると、
ビッグ・ショー、 クリス・ジェリコ、 クリス・ベノワ、 エディ・ゲレロ、 ディーン・マレンコ、 ペリー・サターン、 ビッグ・ボスマン、 デイビーボウイ・スミス等です。

まずショーは、いわゆるWCW純血選手でしたが99年2月にWCWとの契約が終了したのを期に、WWFへ移籍しました。現マット界では唯一といってもいいアンドレ・ザ・ジャイアント系の選手で、単純明快に“強さ”を体現している選手です。

ジェリコ、ベノワ、エディ、マレンコ、サターンは中量級の実力者達。WCWの選手層や内部問題に絡んで、WWFに移籍していきました。日本でも来日を待望する声が多い選手達です。

と、ここまでの6人は実力者で、WWFは実に安い買い物をしたといえるでしょう。
WCWはWWFの選手を何でもかんでも引き抜いたのに対し、WWFはいい選手を契約トラブルなしで取り込んだことになります。

ボスマンは、今でもWWFでそれなりの地位に就いていますが、全日本を「ハードシップすぎる」という理由で去っていった経緯があるので、私はそれほど評価していません。
デイビーボウイ・スミスは、ダイナマイト・キッドと組んでいたころや、ヒットマンとのITC戦では素晴らしいファイトを展開しています。が、その頃のファイトを期待して現在のファイトを見ると、いつも肩透かしをくらってしまいます。現在はWWFのヨーロッパ遠征要員となっているようですが。



と移籍組について書きましたが、それでもWCWにはまだまだいい中堅選手がいます。

ブッカーTという選手は、クリス・ベノワと激しい抗争を繰り広げた選手です。その頃は、ベノワよりも紙一重上というポジションでしたし、実際それに関して違和感を感じることはありませんでした。
長い足と跳躍力・バネを兼ね備えた選手で、独特のキックは見応え十分です。
シングルプレイヤーだと少し地味で、タッグだと兄のスティービー・レイに足を引っ張られるというのが何とも残念な存在です。

そしてキッドマン!!
これは本当に素晴らしいジュニア選手です。
WCWのパワープラント出身という、珍しいWCW純血選手で、ライガーに憧れてプロレスラーになり、ライガー直伝(短期遠征中に教えたそうです)のシューティングスタープレスをフィニッシュとして使っています。
97年9月14日にフゥーベント・ゲレラから念願のWCWクルーザー級を名勝負の末に奪取し、以後、WCWクルーザー級の中心選手として、エディ・ゲレロ、レイ・ミステリオJr、シコシスらと、密度の濃い戦いを展開してきました。また、WCWタッグ王座についた時期もあります。
アメリカでしか試合をしたことはないのに、メキシカンにも対応でき、日本的な2.9カウントプロレスも出来るという、実に貴重な選手です。
実力派のレボリューション(現・ラディカルズ)が離脱する時、一緒に付いて離脱するのではないかと予想されましたが、WCWに残留。現在は何とホーガンと抗争中です。
残念ながら(本当に残念です)初来日は中止となってしまいましたが、是非とも日本で見てみたい、そしてライガーとのシングルを見てみたい選手です。


ノーマン・スマイリーがわけのわからんキャラでハードコア戦をやってるのを見ると、思わずチャンネルを変えたくなりますが、WWFばかりに気を取られていてはいけないでしょうね。



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天才レスラー



「天才レスラー」という言葉が最も似合うのは誰でしょうか?
日本人でよく言われるのは武藤敬司、佐山聡、三沢光晴などでしょう。
女子プロでは井上京子がよく言われますし、自称という点ではセッド・ジニアスがいますね(笑)。


日常的に「天才」という言葉を使っているわけですが、いざ定義を言えといわれても、なかなか出てこないのではないかと思います。
私は、持って生まれた運動神経(瞬発力や反射神経)と持って生まれたレスリングセンスがハイレベルにある、というのが天才レスラーではないかと思います。

どちらかというと、佐山は運動神経が抜群だった天才(ま、技の習得も群を抜いて早かったそうですが)、武藤・三沢がレスリングセンス的な天才、として分類できるのではないかと思います。


で、私が知るレスラーの中で最も「天才」という名が似合うのは“ショーン・マイケルズ”です。
ショーンのプロレスで凄いのは豪快な受け身と、独特なハイテンポの試合展開である、……と思っています。
ディーゼルやサイコ・シッド、 ベイダー、 アンダーテイカーなどとの好勝負で見せたのは、大きくてパワーのある相手の周りを、ショーンが目まぐるしく動き回るというプロレスでした。その動き回っている中で豪快な受け身を取り、100%試合をコントロールしてみせるのです。

逆にヒットマンとの抗争では、ショーンが得意とするファイトスタイルは使えず、ヒットマンのペースに吸い込まれていたように思います。まあ、そういう展開でも十分に力を出していたのが、プロレスラー・ショーン・マイケルズの奥深さなのかもしれませんが。

ショーンの必殺技といえばスウィート・チン・ミュージックことトラースキックですが、ムーンサルトアタックやダイビングエルボーではかなりの跳躍力も披露していました。
そんな中、私が好きな技に「フライング・フォーアーム」があります。
これは、ロープに振られ、リバウンドする瞬間に大きく前方にジャンプし、リング中央にいる相手にエルボーを見舞うというものです(ちょっと説明し難いですが)。
このロープがリバウンドする瞬間にジャンプするというのは、独特な動きですし、タイミングも難しいのではないかと思います。それをここ一番という状況で、よく使っていました。
この動きからもショーンの天才振りが垣間見えますね。



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秋山発言



今年のチャンピオンカーニバルは小橋の10年目での初優勝で幕を閉じました。
決勝戦の結果は予想がつきやすかったですが、内容的にはなかなかの好勝負で、武道館に見に来た観客の満足度も高かったのではないかと思います。


が、レスラーの中に、小橋のファイトに対して痛烈な批判をした者がいました。
それが、秋山準。

試合後の発言、及び週刊プロレスNO.975でのインタビューでの発言をまとめてみました。


あんなチャンピオンとはやりたくない。三冠挑戦は辞退します」
まったくプロレス知らない人が会場に来て、大森と小橋さんどっちが強いのか最後まで分からなかったと思います」
僕が思っているのは、ジャンボ鶴田さん、三沢さんに続く、小橋さんには怪物と言われるようなチャンピオンになって欲しい。小橋さんにはそれができるはずなのに、しない、出さない」
感じとしては今、小橋さんは優しくて力持ちでしょ」
誰かれなしにいい試合ができるようにではなくて、相手に『お前はここまでなんだよ』という感じのチャンピオンになって欲しい」
小橋さんが『新時代』といった時点で変わると思ったけど、実際は変わってない」
上の人間よりは大森・高山の方が絶対に考えている」
はっきり言って、全日本は遅れてますよ。見てる人がほとんど若い人なのに、考えてるのがオッサンとかオバハンではダメ」


よくもまぁこれだけ言えるなぁ、という印象も受けますが、秋山が考えている全日本の変わるべき部分が、秋山の理想とかけ離れているから、このような発言が出たのでしょう。

小橋vs大森といえば、今年の1月にも福岡国際センターでシングルマッチを行っていますが(18分31秒、ラリアットで小橋の勝ち)、この試合をTVで見た私は、小橋のファイトにすごく失望したのを覚えています。
昔にハンセンやゴディに挑んでいた頃の小橋と、基本的には変わっていないのです。相手の攻撃を受けまくってから、反撃し、大きくガッツポーズ、そしてフィニッシュへ、というパターン。
ここで、相手がベイダーならまだ分かります。しかし、大森は小橋よりも確実に格下な相手です。格下の相手なのに、同じパターンの試合しかできないようでは、「小橋限界説(小橋は今以上に大きなレスラーにはなれない)」というのが出てきてもしょうがないでしょう。


ただ、先日のチャンピオンカーニバル優勝戦は、デンジャラスなスープレックスを連発したり、三沢にしか使ったことがなかったターンバックルパワーボムを使うなど、私の目には小橋は大森よりもかなり強く見えたのですが……。
秋山が小橋に要求しているレベルというのはすごく高いようですね。


ちなみに最後の発言ですが、全日本の幹部にオバハンってのは一人か二人くらいしかいないんじゃないでしょうか? ということは、半ば固有名詞を出しているということになります。
何とも怖いもの知らずな発言ですね。



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