技の話7「ブレーンバスター」



最もポピュラーな投げ技の一つである、ブレーンバスター(以下、BB)について話をしてみたいと思います。


「BBは明らかに背中から落とす技なのに、どうしてブレーン(頭蓋骨)砕きという名前なのだろう?」という疑問を持ったことはないでしょうか?
実は、今で言うところの垂直落下式BBこそ元祖のBBなのです。

元祖はキラー・カール・コックスという選手で、日本で初公開されたのは1966年5月のことだそうです。
その後、続々と使い手が現れるのですが(一時は猪木もフィニッシュ技として使っていた)、危険過ぎる(当時はマットが固かった)、見栄えがよくない、などの理由で、今の背中から落とすスタイルが中心となりました。


使い手が増えることにより技の研究が進み、高速式、滞空式、雪崩式、フェースバスター、ロープリバウンド式などの改良型が生まれました。
しかし一方で、BBの持つ神通力が失せていき、痛め技になっていったことも事実で、80年代にBBをフィニッシュとして使っていたのはディック・マードック(垂直落下式)だけでした。

BBの凋落を顕著に表していたのが、ブリティッシュ・ブルドッグスによる合体アバラッシュホールドです。
これは、ダイナマイト・キッドがBBの体勢で相手を持ち上げ、デイビーボウイ・スミスがその相手を受け止めてアバラッシュホールドを決めるという連係技です。確かに二人の得意技を繋げた巧い連係ではあるのですが、BBは相手を「持ち上げる」ためだけに使われており、明らかにBBがアバラッシュホールドの前座に甘んじていました。まるでBBではフィニッシュにならない、ということを示しているかの様でした。
話は変わりますが、この二人は合体ヘッドバットという連係技も持っていました。これは、スミスがキッドを抱え上げてそのままキッドがヘッドバットを決めるというもので、リフトアップスラム、ダイビングヘッドバットという二人の得意技が互いを打ち消すことなく組み込まれており、全ツープラトン技の中でも屈指の完成度だったと思います。


90年代になってからは、SSD、オレンジクラッシュ、ファルコンアロー等、さらなる改良型が登場しました。が、これらの技は前述した「持ち上げる」為にBBの形をしているだけで、BBの改良型と一括りにできるかは疑問の余地があります。

一方で、川田利明が垂直落下BBを復活させたことにより、元祖BBにも注目が集まりました。
この流れを汲み、橋本真也が現在最も破壊力のあるBBである「垂直落下式DDT(本人はDDTと言っていますが、形は明らかにBBです)」を完成させました。

しかしよく考えると、この垂直落下式DDTとは元祖であるキラー・カール・コックスのBBと殆ど同じ形です。つまり、BBは色々と進化してきたように見えて、実のところは「退化」していたということになります。



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