To Win or Not to Win

ここでは、私が学生時代に作成した、English Speechマニュアル、「To Win or Not to Win」をほぼそのままの形で掲載します。このマニュアルでは大学生(主に英語関係のクラブ部員)の英語弁論大会でいかにして勝つか、いかにしてジャッジ・審査員を攻略するかについて、具体的例を挙げながら説明しています。

英語のスピーチに興味がない人でも、説得術という観点で読まれたらおもしろいかもしれません。いかに論理的に・効果的に相手を説得するかについて、日本語での日常会話・論文等でも応用できるテクニックを多々扱ってます。

ただ、経験者ににしか分からない専門用語のオンパレードなので、英語ができる人でも理解不能かも。。。要望があれば、専門的な語句の説明を付け加えてもいいと思ってます。掲示板やメールでの質問には、100%お答えします。

まあ、とりあえず読んでみてください。あなたの知らない世界が待ってますよ(笑)



I N D E X

WHAT IS THE GOOD SPEECH

CHAPTER 1 WHAT IS SPEECH

1 なぜPERSUATIVEでなければならないのか?
2 PERSUATIVE SPEECHとは

LOGIC、ORIGINALITY、RHETORIC、SIGNIFICANCE、DELIVERY、TOPIC

CHAPTER 2 JUDGING CRITERIA

1 LOGIC

A LOGICとは
(1) 論理が首尾一貫している 
(2) しっかり裏付けされている
(3) 明確に説明されている
(4) 反対意見・DISADVANTAGE(不利益)にも言及しそれを踏まえている
(5) PRACTICALITYがある

B. ジャッジ基準としてのLOGIC

C. Q&Aの役割

2 ORIGINALITY

A   ORIGINALITYとは
(1) APPROACHのORIGINALITY
(2) 裏付けのORIGINALITY

B  ジャッジ基準としてのORIGINALITY

3 RHETORIC

A    RHETORICとは
(1) INTRODUCTIONにおけるRHETORIC
(2) CONCLUSIONにおけるRHETORIC
(3) スピーチ全般におけるRHETORIC

B   ジャッジ基準としてのRHETORIC

4 SIGNIFICANCE

A SIGNIFICANCEとは
(1) HARMのSIGNIFICANCE
(2) IDEAL SITUATIONのSIGNIFICANCE
(3) CAUSEのSIGNIFICANCE

B   ジャッジ基準としてのSIGNIFICANCE

5 DELIVERY

A   DELIVERYとは
(1) VERBAL DELIVERY
(2) NON―VERBAL DELIVERY

B   ジャッジ基準としてのDELIVERY

6 TOPIC

A   TOPICとは
(1) ORIGINALITYがあるか
(2) SIGNIFICANCEがあるか
(3) TIMERYなものであるか
(4) 7分間で言い切れることか

B   ジャッジ基準としてのTOPIC

CHAPTER 3 STRATEGY

1   TOPIC選択

A   毎日継続して読む    B   問題意識をもって読む

2   CONTENTS

A   リサーチ

B   分析
  (1)幅広い知識    (2)広い分野

3   RHETORIC

A   総合的な英語の知識を得るために
    (1)単語    (2)イディオム   (3)QUOTATION
    (4)文法     (5)その他の知識 

B   WRITINGのすすめ 

C   NATVE CHECK
  
4   DELIVERY

A   VERBAL DELIVERY

B   NON―VERBAL DELIVERY

  なぜ大会を見に行くのか

CHAPTER 4 MODEL SPEECHES

1   THE BLUE BIRD

2   FREE AGAIN

3   The Story Of a Man With Two Problems

4   Rendezvous with Destiny

CHAPTER 5   ANSWERS TO YOUR QUESTIONS

〜EPILOGUE〜


このマニュアルは5つのCHAPTER から成り立っています。各CHAPTER はそれぞれ独立していますが、基本的にははじめから読み進めていくのがわかりやすいでしょう。

CHAPTER 2を読む場合は全てのページに目を通すようにしてください。ある程度の部分だけ読むと“JUDGING CRITERIA”の何たるかを誤解してしまう恐れがあります。大変長いですが、我慢して読んでください。

本文中に引用したスピーチの出展は多岐に及び、一部セクションが所有していないものもあります。どうしても全文読みたい人は著者まで問い合わせてください。

このマニュアルはここ数年のスピーチ界の現状に基づいたものであり、必ずしも普遍的なものではありません。その点はきちんと理解しておいてください。





WHAT IS THE GOOD SPEECH?


 それは、2年半前のKESSAキャンプでのことでした。当時の私はようやくスピーチの奥の深さに気づき、やたらと既存のスピーチを読みあさり、Good Speech というものに対する答えを模索していた時期でした。しかし実際にスピーチのpresentationを見たことは数回しかなく、きれいな発音=Good Speech という偏見がありまだまだ未熟だったと言えます。ところがそのキャンプでそんな偏見をぶっとばしてくれる人に出会ったのです。

 2回生の方は知っていると思いますが、KESSAキャンプでは毎回レクチャラーを招いて2時間ほどスピーチについて講演が行われます。その時のレクチャラーが、スピーチに対する新しい視点を私に与えてくれた大島歩さんだったのです。とはいってもレクチャーそのものはオーソドックスなもので単に知識を与えてくれただけでした。実は私を啓発してくれたのはレクチャーではなく、レクチャー後にサービスとしてpresent してくれた前年度大隈杯優勝のスピーチだったのです。スピーチの間私はただただその聴衆を掴んで放さないDeliveryに圧倒され、終わったときには感動で体が震えていました。たぶんその感動はその大島さんのスピーチに対するものではなくSPEECHの持つ底知れない力に対してだったのだと今思えます。

 その経験がバネになり私はますますスピーチへの興味を深めました。引退して一年以上たった今でも新たな感動を求めて多くの大会を見に行きます。そして、いつか自分も同じような感動を与えられるスピーカーになりたいと今でも思い続けています。

 WHAT IS THE GOOD SPEECH?....私の答えは“人を感動させるスピーチ”でした。とはいっても私はこの答えをみんなに押しつけようとは思いませんし、それが答えだとは思いません。そんなものは個人によって違うのです。これをこのマニュアルの結論としたいところですが、そうはいかないかもしれません。何たってスピーチにはいくつもの大会があってPrize という形でその善し悪しが結果として現れるのですから。しかし、もし「私はPrize なんてほしくない、自分がよければそれでいい」という人がいればここで読むのをやめてもらって結構です。とめはしません。ただ少しでも「他の人に評価されたい、できればPrize も取りたい」と感じているなら少し我慢して読んでみて下さい。絶対、損はさせません。このマニュアルではどんなスピーチが第三者(特にジャッジ)に評価されるのか・その基準はどういうものなのか、そして、どうすればそのようなスピーチができるのかについて過去のwinning speechに基づいて考察していきたいと思います。

 なお、このマニュアルはマニュアルというよりも分析結果というべきもので、一部誤解等含まれている可能性があることをお断わりしておきます。そこで、ぜひ、迎合的・受身的にならず、批判的・攻撃的に読むことをおすすめします。そして、読み終わったあとは自分のその目とその耳で確かめてみて下さい。大会を見に行くのもよいし、DM practice もいい機会でしょう。そして、もしこのマニュアルに文句をつけられるほどになれば私のここでの目的は達せられたのだと思います。くれぐれも言っておきますが鵜呑みにしないで、批判的に読むように!




CHAPTER 1   WHAT IS SPEECH?

 スピーチって何でしょう。前回のマニュアル(SPEECH MANUAL'92 通称〜デモちゃんマニュアル〜)で触れましたがもう一度原点に戻って考えてみたいと思います。スピーチはto entertain,inform,persuade,actuateの四種類に大別でき、その中でもいわゆるPersuasive Speech(Speech to persuadeor actuate) がESS界における主流となっているということは前回述べた通りです。主流というのは言い換えればwinning speechということで、別にそういったスピーチを作らなければならないなんて規則はどこにもありません(一部のトピック指定の大会は除きます)。だから極端な話『俺は○○ちゃんが好きなんだあ!』とか『日本政府を打倒しよう』というスピーチでもマテ審査のない大会やオラコンなら許されたりするのです。ただ1つ言えることは、一部のaudienceに受けることはあってもジャッジはまず評価してくれないということです(どうしようもないジャッジがたまに評価することもある)。だからもしジャッジやaudienceに評価されたいのなら、評価してもらえるようなスピーチを作らなければなりません。その評価の基準がpersuasiveness(説得性)ということなのです。

1.なぜPERSUASIVEでなければならないのか?

こんな疑問を皆さんは抱いたことがありませんか。「スピーチって言いたいこと言えばいいんじゃないの?」と。言いたいことを言う、それはスピーチでおそらく一番大切なことでしょう。しかしそれと同じくらい大切なのがaudienceとのcommunication なのです。言い換えれば、自分の考えをaudienceとshare (わかちあう)することです。自分の考えがaudienceに伝わらなければそれは一方的な言葉の伝達でありcommunication とはいえないのではないでしょうか。その手段としてのPersuasive Speech なのです。

もっとも、自分の目的はaudienceを笑わせることだ、なんて思っている人もいるかもしれません。それはそれで1つの目的として設定することは悪くはないし、実際に笑わせることができれば満足も得られるでしょう。しかしそれでもやはりpersuasiveという壁にぶち当たりprize を獲るのは困難です。結局人を笑わせたかどうかよりもpersuasiveかどうかでprize が決まってしまうのです。なぜでしょう?私も一時疑問に思っていましたがおそらくこうだろうという結論に達したので1つの考えられる答えとして触れておきます。

簡単に言えば一番評価をしやすい基準がpersuasivenessだからです。他の基準、例えば、おもしろかったかどうかとか、audienceを感動させたかどうかなどにしてしまうとJudge 基準があいまいになり、ジャッジもその道のプロ(コメディアンなど)に頼まなければなりません。その点、Persuasive Speech では、母国で同スピーチの教育を受けたNative Speakerがたくさん日本に住んでおり、Judge 基準が明確になりやすかったからだと言えます。日本人がジャッジをする場合も説得性というものに関しては比較的客観的評価が与えやすいと思われます。

とはいっても実際はただ単にアメリカ・イギリスで行われているスピーチ大会をそのまま輸入して日本人向けにアレンジしただけかもしれません。いずれにしてもprize を決めるための便宜上の理由であり、スピーチがpersuasiveでなければならない絶対的な理由はありません。ただここで注意しなければならないのは、ジャッジにもピンからキリまでいて必ずしもPersuasive Speechが評価されるとは言い切れないということです。変なジャッジに当たったらあとは運を天にまかせて祈るとかジャッジに色目を使ったりするほかないでしょう。もっとも、ある一定レベル以上の大会ではジャッジも信頼できる人が呼ばれるので安心して下さい

2.PERSUASIVE SPEECHとは

直訳すれば、「説得力のあるスピーチ」となりますがどのようなスピーチを想像しますか?説得力という重々しい響きから“筋が通っている”とか、“矛盾していない”など論理面に目が行きがちになりますが、実際は、ロジックが通っていればいいなんて単純なものではありません。大勢の人を説得するのですから、ロジックはもちろん、客観性が要求されます。説得するためにはまず聴いてもらうということが必要ですから、明瞭な発音で、時にはユーモアも交えaudienceの関心を常に引き付けなければなりません。audienceに実際に行動を起こしてもらうには具体的かつ簡単な方法を提示する必要があるでしょう。このように、説得力という言葉は非常に深い意味を持ち個人によってその定義も異なると思われます。ここでは説得力という言葉を6つの局面から捉え、各々簡単に説明していきたいと思います。断っておきますが以下の分類はあくまでも便宜上のものでありこれが正しいというものではありません。

A.LOGIC
logic というのは、わかりやすく言えば筋が通っているかどうか、難しく言えば論理が首尾一貫していて、しっかり裏付けされているかどうかということになります。例えば、危ないので原発を廃止しようと言えば、一見筋が通っているようにも聞こえなくもないですが、実際原発の危険性というのは、あくまでも事故が起こった場合の仮説であり、原発=危ないという公式が成り立つかどうかは疑問です。もっとも客観的データに基づいて、〜年に一回の確率で事故が起こる、というサポートがあったとすればlogic はぐっと引き締まります。logic はスピーチの骨組となるものなので、よく吟味し崩れ落ちないようしっかり補強しながら組み立てましょう。

B.ORIGINALITY
originality というのは独自性のことです。2回生の人なら一度は「originality がないよ」とジャッジに言われたことがあるでしょう。しかしひとくちにoriginality といってもトピックのoriginality 、example のoriginality 、solutionのoriginality などさまざまです。なぜ説得するのにoriginality が必要なのかと疑問に思うかもしれませんが、それは、皆が考えている、あるいは考えつくようなこと(すなわちoriginality のないこと)をいってもaudience にとって意味がないし、退屈なものになってしまうからです。もっともoriginality を突き詰めていくと独りよがりになってしまうことが多々あるので注意が必要です。 

C.RHETORIC
illustrationといっても差し支えないでしょう。すなわち自分の考えを実際に英語でどのように表現するかということです。rhetoricがどの程度スピーチに説得性を与えるのかというのは微妙なところですが一つ言えるのは、rhetoricに凝れば凝るほどそのスピーチはaudience・ジャッジにとって印象深いものになるということです。このことから説得するためのプラスの要素と見てよいと思われますが、rhetoricを使いこなすspeaker は大学生にはほとんどいないのが現状です。極端なrhetoric能力を身につければ、他のスピーカーを圧倒できることでしょう。

D.SIGNIFICANCE
直訳すれば重要性、つまりそのスピーチがどれほど重みのあるものであるかということです。例えば、「世界平和のために」というトピックと「みんな笑えば楽しいよ」というトピックでは前者がsignificanceにすぐれていると言えます。audienceとしてみた場合significanceという言葉は一見説得力とあまり関係ないように思えますが、いろいろなスピーチ(主張)があってどの主張が先に受け入れられるべきかという優先順位を考えたときにsignificanceは大切な基準となります。

E.DELIVERY
この言葉は敢えて説明する必要はないでしょう。ただ心に留めておいてほしいのはDelivery=きれいな発音ではないということです。発音は上手いにこしたことはありませんが発音それ自体ではintonation・rhythm・fluency を含めてもdelivery全体の50%程度を構成するに過ぎません。発音と同じくらい大切なのがspeed でありpause でありgesture なのです。いかにaudience を飽きさせず、自然かつ印象的にできるかがdeliveryのポイントです。特に印象を与えるという点でdeliveryは非常に大きな意味を持ちます。先程も少し述べましたが、印象度と説得力というのは正比例するので印象度が高ければ高いほどそのスピーチは説得力を持つことになります(ただし不自然だと印象に残ってもマイナスになる)。また多くのaudienceにとってはdeliveryはスピーチを見て評価するにあたってもっとも重要なポイントであると言えるでしょう(ジャッジに関してはそうとは言えませんが)。

F.TOPIC
手元にあるマニュアル(何でもよい)の説明を見て下さい。トピック選択のポイントとして、“自分が言いたいことであるか”・“タイムリーであるか”・“オリジナルか”など様々あげられていますが、スピーチに説得力を与えるうえで一番大切なのが“audience・ジャッジの関心を魅きつけられるものであるか”ということです。関心がないことを話してもaudienceは退屈するだけで下手をすると寝てしまうかもしれませんし、ジャッジにしても寝ることはないとはいえ、少なくともプラスにはならないし印象を悪くしてしまいます(もっとも、過去スピーチの最中に居眠りをしていたジャッジを私は知っています)。また、トピックによってsignificance が大きく左右されるというのは前述の通りです。このようにSpeech Making の第一段階であるトピック選択はそのスピーチの説得力に多大な影響を与えるものであると言うことをしっかり理解しておいて下さい。ただ、ジャッジとaudienceによって同じトピックでも受け取り方が異なることがあります。この点についてはCHAPTER 2で考えていきます。

ちなみに、一番言いたいことをトピックとするのが一般的にスピーチで最も大切だとされていますが、audience・ジャッジを説得するという意味では必ずしもそれが正しいとは言い切れません。だからといって言いたくないことでもいいのかと言えば、それもそのスピーチに対する意気込みを低下させてしまうので好ましくありません。理想を言えばaudience・ジャッジ・、そしてスピーカー自身共に関心を持つことの出来るトピックがベストなのです。



これら6つの要素がすべて同じ割合で説得力に反映されるのかといえばそうではありません。その割合は各個人によって大きな差があり、ジャッジに関しても人によって大きな違いが見られます。極端な話、logic がないスピーチでも説得されてしまう人はいるのです。しかし、理想的には、すべての要素を満たしていれば万人の受け入れるスピーチであると言えるでしょう。すべてのスピーカーはそういったスピーチを目標に掲げるべきだし実際意識はしているのですが、所詮無理な話で、著名な大会で優勝するようなスピーチでさえ何らかの欠点があります。そういう前提のもとに次のCHAPTERへ移っていくことにしましょう。



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